私のトレラン歴も4シーズンめに入りましたが、今回初めて、人が亡くなった現場に遭遇しました。
(おそらく蘇生しないとお見受けしたので断定はできませんが・・・)
特に高尾山は「高尾山の頭頂まで行く」かたが当然多かったのです。
いつも、400メートル付近まではリフトで上がり、
そこから数百メートルをウォーミングアップを兼ねて歩きます。
そして山頂手前のある地点から走りをスタート。
そうすると、目標の「陣馬山山頂」まではちょうど2時間程で到着するんです。
昨日はリフト利用の方が多く、待ち時間が20分と言われたため時間がもったいないので
「それなら行ったことがない道を登ろう」ということになって、
リフトの料金を払い戻し、6号という道を登りました。
水(沢)が上の方にあったり、
魅力的な山道で新鮮な気持ちになり、改めていつもの地点から気持ちよくスタート。
今シーズン4回目なので脚もかなりよく動き、絶好調で走っていました。
途中10㎞のなかの半分以上を過ぎた、目安として
「景信山(かげのぶやま)」の山頂が一定の目安でして、
その山頂の茶屋は最も人がおり、酒盛り・餅つき、食事の種類も豊富でとにかく賑やか。
景色の良い人気の場所です。
いつもなら必ずその場所を経過して
「さて、これから下りが多いしスピードあげるか」と、下り道の連続に入る目安にしてます。
が、昨日はいつもならリフトで上がる場所も走ったので、まき道(近道できる順路)を通っていました。
そして、ある傾斜を越えるとその地点に。
人が倒れており、男性3~4人がしゃがみ込み、1人はその男性に心臓マッサージを施していました。はっきり言って細い道。幅は2メートル未満です。
これまで、ハイカーさんが横たわっているのは見たことがあります。
しかも、ご高齢の方でした。
明らかにランナーさん。
私が驚いて声をあげると、心臓マッサージしていたその男性は
「もし陣馬の方向に行くのであれば、(その手前の)茶屋が今日は営業しているからそこの人に知らせてほしい」
と言いました。
「わかりました。」
私は「あ、場所をどこと言えば・・・」と訊きましたが、
場所そのものは何十回も通っています。幸い、ハイカーさんで道の詳細にお詳しい方がそばにおり、
「多分、陣馬と景信のちょうど真ん中辺りだと思います。」と教えて下さいました。
私は全速力に近い速度で走りました。
人の命がかかっている。
ただ、道をどう説明していいかわからず、でもいつも必ず通る道ですので、
「この周辺の写真を撮ろう」と、
近くの道を何か所か、このように撮影。
通過してほんの100メートルくらいの場所ですが、
あまり広い道ではないんです。
そして、間もなく「まき道」に着き、そのあとすぐ、先を行っていた夫にバッタリ。
そして
私「ねぇ、見た」
夫「うん。」
夫は私の前に通っていたのですが、その時は現場の人たちが話ているのを聞いて、
そうやら既に救急を手配済みだなと判断したのだそうです。
私はたまたまですが、覗き込んで反応してしまったので頼まれたのかもしれません。
でも、とにかく私は誰とも連絡がとれるわけでないため、走りました。
すると夫から途中で電話。
「とりあえず、戻りながら電波の届く所で救急に電話するから。そして現場に戻ってみるから。」
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私はひたすら走りました。
そして、やっと「明王峠」(ミョウオウトウゲ)の茶屋さんに到着。休憩所が造ってあり、多くの人が休憩・食事をしている。
天ぷらや飲み物を売っていて、常連さんがゆっくりと食事や飲み会をしている。(でもある程度人が多い日でないと営業していないことが多い)
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よく考えてみれば、ハイカーさんも移動するもの。
常に店舗や一定の場所にずっといる方って、意外といないものなのです。
説明すると、近くにいた、常連らしきお父さんが
「今日は陣馬にも高尾山にも救助隊は控えてるはずだから。連絡がついているんであれば、その場所ならおそらく東京都のほうが動いてるだろう。」とおっしゃいました。
そうです。東京都と神奈川にまたがる3つの山のため、
場所によって管轄が違うのです。
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後で夫が言っていましたが、
夫が電話が通じた地点では、やはりまだ事を知らない神奈川の相模湖のほうに繋がったのだそう。
どうやら高尾山方面に向かったランナーさんが東京都の管轄の場所で電話したので、
夫が現場に戻ったときには担架が来ていたそうです。
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これが、山の目印。山のどこかというのはこれで解るのだそうです。
必死で茶屋の方に説明して、地図でこのあたり、と言って頂きました。
私が「景信山頂から1キロくらいの地点のようです」と言ったら、
だいたいこの辺りのはず、と示してくれました。
《45。高尾山~陣馬へほぼ直進で走るコース》
あぁ。私は感覚でこれまでやってきて、地図を読んでいる夫とは違いました。
それで、今回とても勉強になりました。
これまでも、横になっている人を見た時があった。
今後はもしそういう場面に遭遇したら、
まずは人が常駐している場所に「進む」のか、「戻る」のかを判断して、
更にこの標識を撮影することなんだ。
でないと、ヘリを呼べない。
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夫から電話がきました。
夫「今ね、担架がきて運ばれて行ったから。自分は時間かかるけどそっちに行くから。」
ということで、私は往復して更にゆっくりと来るであろう夫を待つことに。
30分以上待ちましたが、正直お腹が減るとかいった感覚はありませんでした。
が、生理の2日目でしたし、
朝もそれほど固形物を食べてきたわけではないので、新宿駅の構内で買ったベーグルを黙々と食しました。
複雑な気分で。
そして倒れた方のお顔を思い出してしまいました。見てしまったので。
30分もすると、身体が汗で冷えてきたので上着を着ました。
夫がやってくると、詳細を話してくれたので、茶屋の方に御礼を言い、2人で陣馬まで行くことに。
そのあとはそれぞれのペースでしたが、
私は気持ちがちょっと後ろ向きになりました。
陣場方向に山頂に到着。
数分後、夫が来て共に飲み物を飲んでいると
今日はいないと思った、馴染みの陣馬山の茶屋のご主人がやってきました。
前回はお会いできなかったこともあり、話しかけてくれたので思わず見てきたことを話しました。
ご主人も、登山歴が長く、もっとすごいのはハセツネ(一番有名なトレランのレース)の関係者です。
色々なものを、残酷な景色を見てきたでしょう。
話したら気分は落ち着き、今年に入ってから覚えた、陣馬から一番早く下山できる急なルートで帰ることにしました。
ハッキリ言って険しい道です。早く降りれるぶん、急な山道なのです。
そこを、2人ともかなり高速で走って降りています。
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帰宅の電車では、山の事故のニュースがスマホに届きました。
おそらくは助からなかったであろうあの人は、
どうして途中で走るのを止めなかったんだろう。
誰かと一緒に走っていたから??
レースに出るほどの人だから給水もそこそこに走っていた??
疑問はつきません。
ただ、あんなに舗装されていて走りやすい山であっても、
バディを組んでいてもこういうことがあるんだ、と。
私も夫と完全に一緒に走るのは復路(帰る道)だけなのですが、
途中でいつも気にしなければならない・・・。
山をは走るって こういうことなんだ。
暗い話になってしまったのですが、
今後も山の事故というのは残念ながら「水の事故」と同様起こっていくものだと思うのです。
運が悪いとか、
色々あるかもしれないけれど・・・
実際、高校生の山岳部も団体で来ていたし、
今後も山の文化は続きます。
私は転んで脚を怪我するけれど、
苦しかったら途中で辞めます。
帰らなければならないまから。
一昨年か昨年の夏(8月)も、30度を越す日があって、ハンガーノック状態になって割と初めの方で「今日は無理だ」と夫に知らせ、1時間休憩し、無事に家に戻れました。
そういう勇気も絶対に必要だということ。
あの方のご冥福をお祈りしまして、
この記事を締めさせていただきます。
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2017年 5月 7日未明
佐藤亜岐子