皆もまだ

よしの姿を確認出来ずにいたのだと言う。




泣き崩れていた友達は、一人で歩くこともままならない様子だった。



それなのに、皆が私を気遣って



私の右腕を支えてくれた。


何も言わなくても


今度は美和が

私の左側に歩み寄り、

かたくかたく


左手を握ってくれた。




何故、こんな事になったのだろう。





このまま病院の中に入って、


もしかしたら、怪我をしただけの よしが

はにかみながら迎えてくれるかも知れないと言う

淡い淡い期待を


私はまだ捨てきれずにいた。






なのに、


その一方で


死んでしまったよしの姿を


この目で見るのが恐くて恐くて仕方が無い気持ちも


芽生えていた。





恐いよ・・・。






美波 「よしが・・・よしが私を悲しませる訳無い。」



独り言のように、呟いた言葉は


誰からの返事もないままに


消えてしまった。










美和 「よし、怪我してるよね。うち、直視できるかな・・・。」






色んな想像が頭いっぱいに広がって


私は言葉にならない声を発しながら、


止めどなく流れ落ちる涙を

無視して、

ただただ

一生懸命に


よしの待つ場所まで・・・。





足が


機械にでもなったかのように



無意識に

歩みを進める事しかできなかった。




病院内に入ってからは


心臓が苦しくなるような激しい動悸で


眩暈と吐き気を我慢するのに精一杯で、



先程までの、恐ろしい想像も

私の頭の中から消えていた。








美波 「ちょっ・・と、座っても・・いい・・・?」


美和 「いいよ。でも早くよしんとこ行ってあげようよ。」


美波 「う・・ん。先に行ってて・・いいから・・。」


美和 「待ってる。」



入口を入ってすぐのベンチに腰掛けて


氷のように冷たく、そして激しく震える手で

自分の携帯を握りしめた。




今、よしと同じ場所にいる。


現実を目の当たりにしてしまう前に


もう一度・・・


もう一度だけ


いつも通りの事を


しておきたかった。





よしに


電話をかける。




アドレス帳から よし を選択して、


画面を見た。


先程よりも激しく流れ落ちる涙。


画面が見えなくなった。


通話ボタンを押す手が

震えて。



美波 「よし・・・。出て・・。」


そう呟いて、決死の思いでボタンを押した。



電話は、よしの携帯を呼び出す事なく、切れてしまった。




美波 「なんで・・・。なんでなんでなんで・・・。」



メール作成画面を呼び出す。





件名     よしへ


本文     早く会いたい。
        どこにいるの?

        よし愛してる。








送信ボタンを押した。





きっと今頃、よしがメールに気付いて


返事を書いてるに違いない。






送信完了の文字が出たままの

自分の携帯電話を両手で握りしめて

胸の前で、祈るようにして返信を待った。




美和 「美波・・・。行こうよ。よしが待ってるよ・・・。」


美波 「メールしたの。」


美和 「美波、お願い。行こう。
    よしはもうメールなんか・・・できないの!」





美波 「やだ!・・・先行ってていいから!」


美和 「行くよ!」



半分、怒ったような顔の美和が

私の腕を


力のこもった手で掴んだ。



美和 「早く!」





私は、大きな声を出して泣いた。


泣きながら、必死に立ち上がり、




弱弱しく歩き出した。













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