:裏切りの記憶

西園寺克己は、工場で得た手がかりをもとに、HX-09が記憶の一部を引き継いでいるという鷹森博士の元助手・橘早苗という女性の居場所を突き止めた。橘は鷹森博士とともにプロジェクトを進めていたが、プロジェクトが凍結された後、行方をくらませていた人物だった。

橘の住むアパートを訪ねると、彼女は警戒心を露わにしながらも、西園寺の説明を聞いて口を開いた。

「あなたがHX-09と接触したのね……それなら、もう逃げられない。あの組織がすぐにここにも来るわ。」

西園寺は冷静に返す。「だからこそ、真実を教えてほしい。HX-09が託そうとしたもの、鷹森博士が隠したものは何なんだ?」

橘はしばらく沈黙した後、震える声で語り始めた。

プロジェクトの裏側

橘の話によれば、鷹森博士は当初、病に冒された自身の命を救うためにHX-09プロジェクトを立ち上げた。しかし、それだけではなかった。博士はこの技術を「永遠の命」を求める者たちに売り渡すことで資金を得ようとしていたのだ。

「博士は最初から純粋な目的でこの技術を研究していたわけじゃなかった。でも、途中で気づいたのよ。自分の技術が悪用される可能性に……。」

博士はその後、プロジェクトを凍結し、全データを破棄しようとした。しかし、それを許さなかったのが、現在工場を拠点に暗躍している影の組織だった。

「彼らは博士を裏切り、HX-09の試作機を奪おうとしたの。でも、博士はそれを阻止するために、自分の記憶をHX-09に移植し、全データを分散して隠したのよ。」

西園寺はその話を聞き、HX-09が自分のもとを訪れた理由を理解した。HX-09は鷹森博士自身の一部を宿した存在であり、その記憶の中には、組織の目的を阻止する鍵が隠されているのだ。

追手の襲撃

橘の話が終わる前に、部屋の外から足音が聞こえた。扉を蹴破るように現れたのは、黒ずくめの男たちだった。彼らは西園寺を見つけると無言で銃口を向けた。

「橘さん、早く逃げろ!」

西園寺は橘を背後に隠しながら、部屋にあった家具を盾にし、男たちと対峙した。だが、彼らの数は多く、銃火器を持つ相手に手ぶらで立ち向かうのは無謀だった。

その時、橘が焦りながら叫んだ。

「地下駐車場に隠し通路があるわ! そこから逃げるのよ!」

西園寺は橘を促し、隠し通路に向かって駆け出した。途中、男たちの放った弾丸が壁や床を削る音が響くが、なんとか地下駐車場に辿り着くことができた。隠し通路の扉を閉め、しばらく暗いトンネルを進むと、ようやく安全な場所に出た。

裏切りの疑惑

安全を確保した後、橘は言いにくそうに口を開いた。

「西園寺さん……一つ言っておかなければならないことがあるの。」

「なんだ?」

「HX-09には、もう一つ重要な記憶が埋め込まれている。それは、誰が博士を裏切り、組織に協力したのかという事実……。」

その言葉に、西園寺は表情を険しくした。「つまり、プロジェクト内に内通者がいたということか?」

橘は頷き、苦い顔で続けた。「その内通者は……私かもしれない。」

橘の突然の告白に、西園寺は一瞬言葉を失った。彼女が続ける。

「私は、最初は博士の助手として協力していた。でも、組織からの圧力に耐えきれず、彼らに情報を流してしまったの……。それを知った博士は、私を許さなかった。でも、最後にこう言ったの。」

『もしHX-09が目覚めたら、必ず彼を助けてくれ。それが私の最後の願いだ。』

橘の涙ながらの告白を聞いた西園寺は、彼女の真意を見極めようとした。だがその時、彼の携帯に新たなメッセージが届いた。それは、見覚えのない番号からだった。

「HX-09の記憶の鍵はすべて解かれた。次の目的地に来い。真実がそこにある。」

西園寺はメッセージの送り主が敵か味方かを判断する間もなく、橘に問いかけた。

「このメッセージ……送り主に心当たりは?」

橘は震える声で答えた。「もしかして……それは、博士の残した最後のプログラムかもしれない。HX-09が託された、最終的な指示……。」

次なる目的地

HX-09の記憶、橘の裏切り、影の組織の動き――すべてが絡み合い、事件はますます複雑さを増していく。西園寺は次なる目的地に向かうことを決意した。

「どんな真実が待っているにせよ、これ以上は逃げられない。この事件を終わらせる。」

橘を連れて、新たな謎へと足を踏み出した西園寺の背中には、真実を解き明かそうとする固い決意が刻まれていた。