敗れたとはいえディープは頑張りました。彼の持てる力すべてを出し切ったと思います。
ロンシャンの2400mコースは緩やかな下りのカーブ一箇所のみ。
普段彼が走っている、小回りで何度も息をつける日本のコースとは大違いです。
そして、深くて重い芝。当日は良馬場表示でしたが、それでも日本の馬場とは違います。
馬場の違い。北米のダートコースは、日本の芝コースと同等、もしくはそれ以上のタイムが出ます。
そして、現在日本で全盛の北米背景の血統。ヘイローからサンデーサイレンス&ブライアンズタイムに
受け継がれたヘイルトゥリーズンの血。
そして北米の至宝、ミスタープロスペクターが伝えるネイティブダンサーの血。
すべて北米ダートコースで活躍した馬達です。この産駒が日本の芝レースに抜群の適性を見せている訳です。
ブリーダーズカップターフを勝つ馬より、クラシック(ダート)を勝つ馬のほうが日本の芝コースには合うんです。
ヨーロッパにおける最高の種牡馬といえばサドラーズウェルズ。
日本から遠征し、フォア賞を見事に勝って欧米芝コースの適性を見せたエルコンドルパサーを、その年の
凱旋門賞において死闘のすえ打ち負かしたモンジュー。サドラーズウェルズの産駒です。
彼の産駒は日本に散々輸入されてますが、これが見事なまでに走らない。
凱旋門賞の勝馬で日本で種牡馬として成功した代表例として、トニービンがいます。
あとはミルリーフ~ミルジョージのネバーベンド系の産駒が活躍したくらいでしょうか。
反面、失敗例は非常に多い。最近ではラムタラですね。
欧米血統の失敗例に対し、よく「血が重い」と表現されます。
言い換えれば、日本の芝に適応するにはスピードが足りないという事です。
各地のコース特性による求められる能力の違いの一例として血統を上げましたが、要は日本の馬が欧米の
レースで好走するには、普段と違う別の能力が求められるという事なんです。でないと適応できないんです。
日本の短距離馬で歴代最強はタイキシャトルだと考えてます。(オグリだという意見もあろうかと思いますが)
日本ではド派手な勝ちっぷりを見せた彼でも、仏ジャックルマロワ賞では鼻~首差の勝利でした。
よくぞ勝ちきったものだと思いますが、さぞかし厳しく、苦しいレースだった事でしょう。
ディープが走った凱旋門賞。タイムは日本の芝と比べると非常に遅いものでした。
道中は超のつくスローペース。これだけを見て安易に「楽な道中」と言い切るマスコミもいました。
しかし、凱旋門賞は元々タイムの出ないロンシャンです。
日本のような後方一気の派手な差しが出来るコースではありません。(ダンシングブレーブは例外・・・)
想定外の好スタートを切ったディープは、前々でマークされる展開になります。
彼の前を走ったシロッコ。あの強い馬がばててシンガリ負けでした。それほど厳しい流れだったんでしょう。
それでもディープは外から差してきた勝馬を一度は差し替えそうかとの抵抗を見せてくれました。
ジョッキーを非難するマスコミも見受けられました。しかも切り貼りという手口で。。。
私が勝つと予想してたハリケーンランを、内に封じ込めて不発に終わらしたのはジョッキーの腕です。
ただ、仕掛けが若干早かったとは私も感じました。
勝馬を差し返したその瞬間がゴールだったら???
そしてこの敗戦を受けてディープの運命は変わります。
帰国し、秋のG1出走後に引退という青写真のはずでしたが、引退撤回で来年再挑戦との報道を見、私は憤りを覚えました。
あの厳しいレースで3着に粘ったディープが、彼が全力を尽くさなかったとでも言いたいのでしょうか。
だから、「能力を出し切れば勝てる」などと軽々しく言い切れるのでしょうか。
結果は結果として受け止め、この借りはジャパンカップで晴らしてくれれば、それでいいじゃないですか。
当初の引退までの出走計画は変えてほしくない、私は心からそう願います。
止め時を見きわめる事が出来ず、人間の身勝手なエゴに運命を左右され、結果晩節を濁し、阪神のターフに散った
一頭の名馬。私の大好きだったライスシャワーを失った時の悲しみ。サンエイサンキュー、ホクトベガの思い出。
有り余るスピードを自制させず、無謀とも言える疾走をし、結果足元が破壊して散っていったサイレンススズカ。
今後のディープの事を思うと、なぜか悲しい思い出ばかりが脳裏に浮かびます。
マチカネタンホイザという馬の、坂路調教時の写真を見て驚いた事があります。
調教の苦しさのあまり顔が歪み、皺が寄り、それはすさまじい表情をしてました。
ライスシャワーがマックイーンを破った春の天皇賞。
極限の調教を耐え抜いた彼を見て、サンスポの佐藤記者いわく「馬の顔をしてない」と。
馬達の壮絶な戦いの結果に対し、人はもっと寛容な気持ちで答えてあげるべきだと思ってます。