私は以前、赤面症で悩んでいた頃がありました。

また、唾を飲む音が他者に聞こえてしまうと嫌だ、という奇妙な神経症を患いました。

 

とにかく人の前で発表するなど、とてもではありませんができませんでした。

動悸が激しくなり、頭は真っ白、顔は火が出るように赤くなりました。

 

以前にも述べたようにこれは「こうあるべき」思考がもたらす極端な例です。

 

私は、これを20年以上もの期間、引きずっていたのです。

社会人になってもプレゼンや自己紹介云々、名指しされて意見を求められた時も顔が真っ赤になりました。

 

これを思考ではない別の観点から考えてみましょう。

 

その頃、私の拙い分析で「運動量が人一倍少なく心臓が弱いため交感神経が敏感になってしまうのだ」と解釈していました。

ならば、人並みの運動をこなせば根治する!と勝手に決め込んでいました。

 

結果として、赤面症は改善しましたが、様々な文献を見ていると、根治した理由は単なるそれだけの理由ではないことが明らかになりました。

 

人はもともと闘争本能というものが備わっており、それが働くと交感神経が活発になり動悸や血流を促進させます。

人前に出る時は、私は私以外の人間を敵と見なしていたのでしょう。

 

始めは、動悸を抑える薬(インデラル)、つまり心臓の働きを直接に抑制する薬で一時しのいでいました。

確かに効果は抜群でした。

イライラする時もこの薬を飲めば、動悸が収まるので、結果として闘争心といったものが薄れるのでしょう。

しかし、これは所詮対症療法でしかありません。

根本的に治すには、私は運動するしかない!と思い、とにかく有酸素運動→ランニングを続けました。

 

これを脳科学の視点で見るとおもしろいことに、人がストレスを感じるのは脳の視床下部から発せられる命令により、コルチゾールという物質が体内に放出されるそうです。

脳には扁桃体というものがあり、これはいわゆるストレスをキャッチする役割を担うものです。

人は何らかの脅威を感じると、扁桃体→視床下部→下垂体→副腎軸へ脳が司令を出します。

そして副腎軸からコルチゾールが分泌されることになります。

 

コルチゾールがいわゆるストレスホルモンであり、動悸などを誘発するのです。

 

問題はここからで、この一連の脳から副腎軸への流れによりコルチゾールが分泌されるわけですが、

運動することにより、この流れが鈍くなるのです。

鈍くなる、というのは結果として「コルチゾールが分泌されにくくなる」と同義です。

これによりストレスを誘発するコルチゾールが減少し、さらにはストレスに敏感な神経回路(ニューロン)があまり使われなくなるのです。

そして、脳はストレスにある意味鈍感な、本来生きていくために重要な新たな神経回路を作っていくのです。

 

確かに生物学的に見れば、心臓が鍛えられた、とも言えるかもしれませんが、並行し、私はこのような経路を辿り根治に至ったのだと確信しています。

 

うつ病等の話から少し脱線しましたが、いわゆる精神疾患と呼ばれるものは得てして原因がつながっています。

DSMなどの基準、様々な病名等ありますが、私は根っこは全て同じだと思っています。

 

確かに一朝一夕ではいきません。

なによりも、根治させる!という「継続する強い意志」、これが必要だと思います。