04 敵の宣戦布告 | あるハラスメントの告発

あるハラスメントの告発

ある市役所内で実際に起こった「係長の乱」に着想を得て執筆したもので、いわゆるバブル世代の市役所の管理職(バブル時代に市役所にしか就職できなかった人たち)と、一人の中堅市役所職員との壮絶な職場内バトルを綴ったものです。

 人事異動内示によるざわつきが収まりかけた企画調整課の事務室内に、4月から企画政策部門のトップとして着任する予定の越智部長が勢いよく乗り込んできた。

 がさつでリズミカルな足音が事務室内に鳴り響き、越智の大柄な身体が真っ直ぐに自分の方に向かってきた。

 「林口くん!異動がなかったようだな。君は今まで市役所全体の事業計画や市長の政策方針を担当していたと思うが、4月からは違う業務に就いてもらう。君には塩漬けになっているプロジェクト事業を担当してもらおうと考えていて、まあ具体的に何をやるということはないが、よろしく頼むよ。」と言い、私の反応も待たず事務室を出て行った。

 市役所の塩漬けプロジェクトとは、過去の市長や有力な市議会議員が、選挙の時の票集めのために公約として提案した事業で、大型ショッピングモールの誘致や高速道路の設置、駅前の再開発など、中規模の市役所では到底実現できないような事業を「プロジェクト」という冠を付けて企画政策部門が担当するという体裁をとっている。

 市民からのニーズも怪しく、事業予算の確保も見込めない実施不可能な事業を担当させられる。つまり越智は、私には4月以降何もやらせない、私を「塩漬けにする」ということを宣言しにきたのだった。

 不安な気持ちのまま年度末の業務をこなしていると、あっという間に3月が終わってしまった。



つづきます


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ようやく第4話を書き終え、次回から新年度篇に入ります。


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