あるハラスメントの告発

あるハラスメントの告発

ある市役所内で実際に起こった「係長の乱」に着想を得て執筆したもので、いわゆるバブル世代の市役所の管理職(バブル時代に市役所にしか就職できなかった人たち)と、一人の中堅市役所職員との壮絶な職場内バトルを綴ったものです。

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 越智や田外との新たな闘いを決意した日から2週間ほど経ったある日の朝、課内の朝礼が終わるやいなや私のデスクの電話が鳴った。

 受話器を取ると、電話の相手は遠藤副市長だった。

 「林口係長、この後すぐに面談をしたいんだが、副市長室まできてくれるか。」と唐突に言われ、市役所の特別職である副市長との面談に臨むことになった。

 特別職のフロアの入口にある秘書課の職員に一言声をかけ、ドアが空いている副市長室に「林口です。失礼します」と言いながら足を踏み入れた。

 「林口君、そこに座ってくれ。」と声をかけられ、応接テーブルの端の椅子に腰を掛けた。

 会話の主導権は副市長にある。「君が提出した内部通報の結果について、君の立場からは、いろいろと言いたいことがあるとは思うが、今回、非公式ではあるが、越智部長に対しては、管理職として相応しくない言動があったということを理由に、彼の上司である私の方から、口頭による厳重注意をさせてもらった。そしてこれもまた非公式ではあるが、君の父上にも越智部長から謝罪もさせた。このことをもって、今回のトラブルは終わらせたいと考えているが、いかがかな?」

 副市長のこの発言が何に配慮をしたものかの察しはついたが、このまま、はい、分かりました、と物わかりが良いふりをするわけにはいかなかった。

 「今回のトラブルにつきましては、加害者である越智部長から被害者の私に対して謝罪もいただいておりませんし、審査委員会の結果につきましても、人事課の調査の不備による事実誤認があるものと考えています。そして、未確認の部分もありますが、加害者の越智部長やそのお仲間の田外部長から私への報復として、私が逆に通報されていた、という情報も得ています。」と私が言うと、あまりにも予想外の私の反応に、副市長は言葉を見つけられないでいる様子だった。

 さらに「私の父から聞いた話により、越智部長は私が提出した通報書の内容を知ってたことが確認できましたので、後ほど、私の通報内容を漏らした者を、情報漏洩の罪で通報する予定です。」と、この段階で敵か味方か判然としない副市長に対して、市役所の悪人グループとの闘いの継続を宣言した。

 ようやく言葉が見つかった副市長は「林口君、この面談はそういう話を聞くためではなく、君にトラブル処理の結果に納得してもらうために来てもらったものなんだよ。そういうトラブルが続くと、私の方でも対応しきれなくなる。お父上の立場もあることだし、もっと穏便に考えることはできないか。」と思いとどまらせるように言った。

 「遠藤副市長には、父のことを含めていろいろとご配慮いただきありがとうございます。しかしながら、私がトラブルを続けているのではなく、すでに起こったトラブルについて、私が被害を訴えているということをご理解いただきたいです。この一連のトラブルは、市役所の中で起こった職員同士の事件ですので、市議会議長の父には全く関係ないものと考えています。ですので、加害者からの父への謝罪も全く無意味ですし、それで事が済んだとは一切考えておりません。私が端的に求めているのは、加害者たちに対する公式な処分です。」とあらためて所信を表明し、唖然とする副市長に「業務がありますので、これで失礼します。」と言い副市長室から退室した。

 特別職である副市長に対して、少し言い過ぎたことを反省しながらも、絶対にやり遂げる決意を新たにした。



つづきます