いつも元夫の発言に悪意はない


『うちのお姉ちゃん、てんちゃんとちがって細いんだよね』


付き合ってから1ヶ月もしないうちのデートで、突然言われたひとこと


『え、急に何?太ってるって言いたいの?』


『そういうわけじゃないよ』


『じゃあなに?』


『いやー、俺の家族ってみんな細身だなって思ってさ。てんちゃんの顔ってやっぱりなんか丸だわ』


『なんなの?なんでそんなひどいこと言うわけ?』


『なにがひどいの?』


『もういいよ。もう知らない。帰る。』


『んー?わかった。帰ろ。』


(え?帰るの…?普通とめない?)


スタスタと駅へ向かうるいくんを追いかけて


『なんでるいくんが怒ってるの?』


『え?怒ってないけど?』


『ふつう帰るって言ったらとめるでしょ!』


『え?どういうこと?てんちゃんが帰るって言ったよね?帰らないの?どっち?』


『なんなの…もう。』


こんな会話は日常茶飯事になっていった


喧嘩のきっかけになった発言も

そう思ったから言っただけ


お姉ちゃんのように細くなってほしいわけじゃない


太ってると言いたかったわけでもない



ただ、自分の姉と比べてどっちが細いかの話をしただけ


ただ、私の顔を見て形が丸いなと思っただけ


るいくんにとってはただそれだけなのだ



そして

帰ると言ったのは私だから、帰ることを受け入れただけなのだ



ただ一言帰らないでと言ってほしかっただけなのに



《たとえ喧嘩になっても帰らないでほしいと思うくらいあなたのことが好きで、大切に思っていて、このまま帰ってしまって関係が悪くなるのが嫌だから》


っていう気持ちを込めて《帰らないで》と多くの人は言うと思う


もしくは

《お互いに気持ちが分かり合ってると思っていて、それなのに分かり合えなくて、でも一緒にいたいけど、気持ちが伝わらないのがもどかしくて、だから相手を試すように》


じゃあ帰れば?と言う人もいるだろう


どんな言葉にも相手を思いやる気持ちがあると思う


でもるいくんにはなかった


私が帰ると言ったから帰るのだ


ただ思ったことを発して、ただ言われたことを受け入れる


ただただ自分にも他人にも素直すぎる人


その素直さだと感じていたことが少しずつ違和感に変わっていきました