「ホークくん知っているかい。人はフェロモンで運命の相手を見つけるそうだよ。」
太陽が真上にあがってきた昼下がり。それは唐突に切り出された話だった。
ーーー初夏ーーー
「・・・いきなり何の話だ。」
突然店の中へ入ってきたと思ったらいきなり意味の分からない話をしだすパトリック。
作業の手は止めずに眉をひそめ聞き返す。
「人に限らず、生き物はフェロモンで自分の伴侶を見つけるんだ。」
「はぁ・・・。」
パトリックはこっちの空気などお構いなしに、やたら上機嫌に話を続ける。
「フェロモンというのはいわゆる匂いでね、たまにすごくいい匂いする人とかいないかい?」
「人の匂いなんてわざわざ嗅がないが・・・」
「通り過ぎる時とかふわっと香るときあるだろう?」
「ああ・・・。」
「いい匂いと感じる人が自分の理想の相手に近いらしい。」
一体なぜこんな話をしてくるのだろう。あえて目を合わせないが、ずっとこちらを見ているのも気になる。
「ホークくん、運命の相手の匂いってどんな風に感じると思う?」
「・・・。」
知るわけないだろう。
「・・・正解はね、匂いだけで欲情してしまうんだ。」
「・・・・・・・はぁ。」
欲情って・・・そんなことあるわけがないだろう・・・。
半ば呆れながら作業をしていると、突然腕を掴まれた。
「・・・なんだ。」
「君はどうして僕がいきなりこんな話をし出したか気にならないのかい?」
(気にはなっているがわざわざ聞くこともないと思っているだけだ。)
などと考えていたら、今度は首筋に顔を埋められる。
「おい何のつもりだ。」
「ホークくんからは鉄と木材の匂いがするね。それと汗の匂い。」
「当たり前だろう・・・。暑いから離れろ。」
セミが活発に鳴いている時間。じっとしているだけでも汗ばんでくるのにこんなに近づいていたら暑くて敵わない。ここは冷房なんかつけていないから余計に。
「おい、離れろって・・・。」
引きはがそうとするがびくともしない。普段研究室にこもっているだけなのに予想外に力がある。
「ホークくん。」
「なんだ・・・。」
「僕はどうやら君のフェロモンにやられてしまったようだよ。」
「はっ?」
その言葉と同時に首筋にヂリッとするような微かな痛みが走る。
「っ・・・。何をした。」
「別に何も?ただ君は僕の物だという印をつけただけさ。」
そう言って微笑みながら体を離す。
近くにあった鏡をのぞいてみると、首筋には小さな赤い痕がついていた。
「・・・・・・。パトリック・・・いったい何がしたい・・・。」
「そこまでしても分からないのかい?w」
言うや否や、今度はいきなり顔を上げさせられる。
そして唇に短く落とされたキス。
「・・・・・・いずれ全て僕の物にするからね。」
パトリックはそういうと店を出て行った。
「・・・なんだよあいつ・・・・。」
全ての状況が飲み込めないまま残された俺は小さく悪態をついた。
外で鳴いていたセミはいつの間にか鳴きやんでいた。
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パトホ布教。文才無いなりに頑張った。