赤い糸の呻き 西澤 保彦
「お弁当ぐるぐる」「墓標の庭」「カモはネギと鍋のなか」「対の住処」「赤い糸の呻き」
の5作が収録された短篇集。
どの作品も西澤保彦さんならではの登場人物達の暴走気味の妄想推理が楽しい。
一作ぐらいSF的な要素が入った短編があるのかな？と思いきや、どれもシンプルな正統派ミステリ。
若干ネタバレあるかもです
読者への挑戦がある「お弁当ぐるぐる」は謎解きもさることながら、
個性豊かな登場人物達に魅入られます。
この作品はノンシリーズの短篇集だけに収録するには勿体無い。
このキャラ達が活躍するシリーズが是非読みたい。
「墓標の庭」は都筑道夫さんの物部太郎シリーズのパスティーシュ。
都筑道夫さんの小説はショート・ショートしか読んだことがなくて、
思い入れがなさすぎる私でも楽しく読めました。
軽く性的マイノリティな人物が出てくるあたりがいつもの西澤色と理解しました。
「カモはネギと鍋のなか」は冒頭から高校生の甘酸っぱい青春ミステリ色が漂っていましたが、
途中からだんだん雲行きが怪しくなります。悪意と欲に塗れたエグイ様相。
登場人物の純粋で素直な高校生ユッキーくんが不憫でなりません。
「対の住処」はタイトルが秀逸。
「終の棲家」という単語は最近新居を探す私の耳によく入ってくるキーワード。
が、この作品のタイトルは「対の住処」。
何と対なのか？読んでいくと恐ろしい殺人の動機が浮かび上がります。
こんな動機は常人にはあり得ない！と思いながらも、
人の恐ろしいほどの執着心というのは他人には理解ができないのも常。
怖い怖い。
表題作の「赤い糸の呻き」は西澤ミステリの真骨頂！
飲み食いしながらの妄想とロジックによる推理合戦。
たまたま乗り合わせたエレベーターで停電→刺殺事件が…。
かなり面白いシチュエーション。
伏線を見落とさないように目を皿にして読んだのに…
驚愕の犯人！そしてまたまた驚きの動機！
最後のモノローグも含めてこれはヤラれました。