開かせていただき光栄です 皆川博子
18世紀ロンドンが舞台。
四肢が切断された少年の死体。
妊娠6ヶ月の女性の死体。
顔が潰された死体。
解剖医ダニエルとその弟子たちが中心のストーリーなので、凄惨な死体ばかりでてきます。
この時代の解剖の壮絶さと描写がかなりグロイ。
邪魔な脂肪などの部位はペットの犬が食べるとか…。
監獄の描写も酷い。劣悪で生き地獄のような環境。
しかも田舎から出てきた才能ある少年が冤罪で収容されて無慈悲で容赦ない仕打ちを受ける。
しかし、当時のロンドンの街の怪しさが醸し出される情景に引き込まれる。
喧騒なコーヒーショップや上流階級が出入りする本屋などに魅入る。
まるで外国の翻訳小説を読んでるかのよう。
解剖という行為に偏見に満ち満ちたこの時代にそれでも尚、
医学の進歩の為に「もっと屍体を!」と
死臭に塗れながら情熱を燃やす解剖医と才能ある弟子たちの姿も清清しい。
探偵役の盲目の判事、その助手も、そのまた助手も個性的で魅力あるキャラばかり。
ミステリとしても張り巡らされた伏線にまったく気づかなかった。
あとから気づかされることばかりで驚愕の嵐。
皆川博子さんの小説は「死の泉」しか読んだ事がなかったのですが、
あれほど仰々しさはなく、軽い気持ちで読めました。
しかし、とても80歳オーバーの方が書かれたものとは思えない。
BL好きの腐女子受けもしそうな要素も満載。
本格好きの捻くれた読者にも受けそう。
現代の読み手にもぴったり合わせられるその感性にビックリです。