リビングに積まれた英語表記の段ボール箱

 

それと、大型のスーツケースがいくつか。

 

 

俺の部屋には、いつもは無いこれらが、リビングの1/5を占拠している。

 

 

 

「翔さん、ごめんなさい。」

 

「潤が気にすることないよ。」

 

 

 

大荷物を運びこんだのは、潤の両親と妹なのだから。

 

 

 

今日、アメリカから帰国して、空港からこの家に直行したらしい。

 

 

 

「どうして家に行かなかったんだよ。」

 

「あら、潤ちゃんの顔を早く見たかったからよ。」

 

「会いたかったぞ、潤。」

 

「おにいちゃま、これ、お土産です。」

 

「あ・・ありがとう・・・。」

 

 

 

そりゃあ、一人日本に残してきた息子は心配だろうし、会いたかっただろう。

 

潤も・・・同じ気持ちだったのかな?

 

 

 

でも、智君のお姉さんらしいと言えばそうかもしれない。

 

行動力は、彼に勝らずとも劣らず。と言ったところだろう。

 

 

でも・・・皆でこの家に泊まろうとしてる?

 

・・・もしかして。

 

 

 

スーパーで買い物はしてきたけれど、この人数じゃ、食材は足りないよな。

 

もう1回買いに行くか?

 

それとも、出前でも取ればいいか?

 

そんなことを考えていると、再び来客を知らせるインターフォンが鳴った。

 

 

 

・・・え?智君?!

 

 

 

 

智君も、でっかい風呂敷包みを持ってやってきた。

 

智君も、会うのは半年ぶり?

 

今日、沖縄から帰ってきたんだ。

 

 

 

「翔ちゃん、悪いね、皆で押しかけちゃって。」

 

「ここの住所教えたの、智君?」

 

「ああ、そうだ。潤は今どこに居るのかって聞かれたからさ、『彼氏の家に居る。』って、ちゃんと教えておいたぞ。」

 

「・・・え?」

 

 

 

・・・今なんて言った?

 

・・・潤は、『彼氏の家にいる。』そうバラしちゃったって事?

 

 

 

でも、両親は驚くことなく・・・

 

「櫻井さんですね、いつも潤がお世話になっています。」

 

そう挨拶したけど・・・という事は、潤の家族は、潤が俺と付き合ってる・・・恋人関係だと知っていて挨拶をしたって事か?

 

 

 

クリスマス当日に帰ってくると思っていた潤の両親が、それよりも数日早い帰国だったこと。

 

それも、突然この家に来たこと。

 

潤の両親は、俺と潤が付き合っていると知っているという事。

 

智君まで、突然帰ってきたこと。

 

 

 

あああ・・・・もう、何が何だか分からなくなってきた。

 

 

そんな俺に、潤は・・・

 

「翔さんも食べてね。」

 

そう言って、俺の口に・・・ん?これはホタテ?

 

寿司を俺の口に入れてきた。

 

 

 

智君が持ってきたらしい。

 

 

 

 

俺が一人混乱しているだけで、この家族は・・・

 

 

「これ美味しい。」

 

「アメリカのお寿司よりも美味しいね。」

 

「そうだな、やっぱり日本の寿司が一番だよな。」

 

「僕は穴子が好き~。」

 

「潤はやっぱり穴子か。」

 

「この甘だれが絶品よね。」

 

 

 

何事も無かったかのように、皆で食事をしている。

 

 

 

 

 

 

こんなに柔軟に対応できるのが・・・ある意味羨ましい。

 

でも、知っていて敢えて何も言わないという事は・・・俺と潤の事を認めてくれていると・・・いう事なのか?