久しぶりに、翔さんの腕の中で、ぐっすり眠れた気がする。

 

キスはしたけど・・・もちろんそれ以上は無かった昨夜。

 

「ベッドが狭いから」そう言ってソファーで寝ようとした翔さんを、後ろから抱きしめて、「一緒に寝て」ってお願いした僕。

 

シングルベッドで、男二人が寝るには、くっついて寝なければどちらかが落ちてしまう。

 

だから・・・気が付いたら、僕は翔さんの腕の中で・・・まるで、前日もこうやって寝ていたんじゃないかってくらい抱きしめ合って寝ていた。

 

 

そうだよ・・・半年前まで、僕はいつもこうやって朝を迎えていたんだ。

 

 

愛し合って・・・

 

一緒にくっついて眠って・・・

 

 

これが、恋人同士の距離じゃないと言われたら、僕たちの関係はただのマネージャーと俳優なのだろうけど。

 

だけど、確かに「好き」とか「愛してる」っていう言葉は、翔さんの口からは聞いたことが無かったかも・・・なんて思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

「よく眠れたか?」

 

「・・・うん。」

 

「それは良かった。」

 

「・・・うん。」

 

 

朝起きれば、直ぐにマネージャーの顔に戻ってしまう翔さん。

 

そんなところは、半年たっても変わらないんだな・・・なんて思った。

 

 

 

 

昨日着ていた服じゃまずいからと、翔さんの家にあった、元僕の衣装?撮影で気に入った服を買い取ったものが、そのまま翔さんの部屋に置かれていたものがあり、それを着て、僕は増田の迎えの車に乗り込んだ。

 

僕が翔さんのマンションに居ても、何も不思議がらない増田。

 

「櫻井さんが居ると、こんなに朝の支度がスムーズなんですね。」なんて増田の余計な一言を残して、僕たちは今日の現場へ向かった。

 

 

 

 

結局のところ・・・僕が最優秀賞を取ることを妨害したい奴がいたって事と、僕がこの賞を取ったことをよく思わない奴がいるって事は分かった。

 

翔さんを嵌めて、僕の足を引っ張ろうとした奴がいたって事。

 

あの、優秀賞を受賞したメンバーの中にいたのだろうか?

 

 

その妨害の事実を社長と翔さんは把握していて・・・きっとその詳細が分かるまでは、それが真実かどうか突き止めるまでは、僕に言うつもりは無かったのだろう。

 

だけど昨日の翔さんは・・・発表が終わったからか、僕に話してもいいって思ってくれたって事なのだろうか?

 

だけどさ・・・僕の事なのに、何も言ってくれないなんて酷くない?

 

 

そう思うのに、「潤には余計な心配や気遣いをされたくなかったからだ。」と言われてしまった。

 

それが、僕の演技に現れてしまうと。

 

 

そこまで僕の事を理解してくれている翔さんだったら・・・ちゃんと別な理由があって、マネージャーを交代しているって、話してほしかったよな・・・。

 

 

 

 

 

 




 

今日は1日、スタジオでドラマ撮影。

 

このドラマは、4年前に映画化された話の続きで、僕が高校教師の役だ。

 

女子高生が高校教師に恋をした・・・そんな話だったけど、その高校生が社会人になってからの話になる。

 

この映画の撮影の時・・・僕が役どころで悩んでいたんだよな。

 

その時翔さんが・・・・

 

 


 

・・・・また、僕の頭の中は、翔さんで一杯になってしまった。

 

 












 

 

「お疲れさまでした~。」

「ありがとうございました~」

「お疲れ様でした~。明日もお願いします。」

「お疲れでした~。」

「ありがとうございました~。」

 

 

今日の撮影も無事に終わった。

 

控室に戻り衣装を着替えると、今日はまだ増田が来ていないようで・・・僕一人になった。

 

今日は、この撮影が終わればスケジュールは無い。

 

 

翔さんは、今日も菊池の現場に行ってるんだろうか?

 

また・・・会えないかな?

 

もっと・・・話がしたい。

 

 

 

 

翔さんは、僕に会いたいって思ってくれてるのかな?