ホテルのロビーのソファに座り込み、胸が高鳴る。

シン君と待ち合わせなんて、久々で倒れそう。

今か今かと待っていると、いきなりムン・ジェウォンがやって来た。

「あれ?なんでここに?」

「室長からメールが着て、少し遅れるからチェギョンの事お願いしても良いか?ってきたんだ。」私の隣に一人分開けて座った

少し遅れる・・・高鳴っていた胸が急に落ち着き始める

あーっ、遅れるって事は何かあってこれなくなる、だよねー。

ガックシ項垂れる

「オイ!チェギョン!なんだ、どうした?」

あまりにも興奮していたせいで、反動が酷い

闇落ちしそう。

「気にしないで。ムン・ジェウォンは残業なんでしょう?戻ってもいいよ。」

項垂れたまま言う

「いやっ、今日の分の書類は完成したから、チェギョンに付き合うよ」

頭を上げて「ムン・ジェウォンは何時も優しいね。」頭を上げて、眉が下がる

「こんなに優しいのに、振られたんだぞー。その子はきっと俺の魅力に気が付か無かったんだろうな。」

「もしかしてー。」汗

「まーっ、その子はとんでもないスーパーカッコイイ人の事が好きだったから、俺は諦めた。俺はその子より、スーパーカッコイイ人の方がもっと好きだって言うのが分かった。」

「!ゲイなの?」知らなかったよ。

「違うし!その人の存在に憧れる。立っているだけで,オーラが漂う。」

最初私は、そのオーラが分からずただの威圧だと思ってたなー。

「この人の側にいて、仕事のサポートが出来れば幸せだと思ってたのに、退社して自分の会社に戻るって。

それで、その会社は韓国のトップ企業だし。

俺の予想を上回っちゃってー、マジ凄すぎ。」惚れ惚れとした顔で語る。

「その人の事が大好きなんだね。」

「俺の人生の目標だ。少しでもあの人に近づけるように努力している。」

「ムン・ジェウォンなら、なれるよ」

「うん、心強い言葉有難うな。だから本当はその人の側で仕事をサポートしたい。」

「え?それって転職?」

「嫌、まだ考えたばかりだから、その為にはスキルアップしないとな。」

シン君、先輩、ムン・ジェウォン(将来)、そして私。

経理部ってヤバい状況。

「おっ、韓国企業のトップの男を走らせるなんて、チェギョン恐るべし。」外を指差す

指の方向を見ると、走っていたシン君が中まで走って来た。

「すまない、遅くなった。」はぁはぁと息を整えようとする。

ムン・ジェウォンと私は、シン君の姿に頬を染める

2人目を合わせ「大好きです」と声を揃えた。

「はぁ?」思い掛けない言葉にシン君は困惑で。

「2人とも声揃えて何話してたんだ?」

「教えませーん。」二人でニヤニヤする。

「まったくー、お前らってホント似た者同士だな。」

「え?似てませんよ!」

2人でワチャワチャ反論している姿は、大好きなご主人様に戯れるワンコのように見える。

「わっかった。とりあえず、オレの事が大好きなんだな?」

「はい!」即答。で、満足。

「大好きだっていう人の前では、ちゃんとしないとな。」走って乱れたスーツを直す。

「何時でも呼んでください。直ぐに駆けつけます。では、室長、チェギョンガード終了です。」立ち上がり行こうとしたら

「ムン・ジェウォン。又頼む事があるから、宜しくな。」

「了解です!」ニカッと嬉しそうに笑う顔は、日本の柴犬の顔に似ていた。

私達の元から、歩き出した彼の姿はこんな時間なのに、歩幅を大きく自信たっぷりと歩いていた。


「さて、カップルデートの始まりは何処に行く?」私に手を差し出す

胸の鼓動が止まらない。

本当にこの人ったら,人のキモチをギュッと持っていってしまう。

「お腹空きました。おねーさんのお店に行きたいです。」私もシン君に向かって手を差し出し、お互いの手を重ね合い、ギュッと指を絡めた。

「じゃあ、ねーさんにメール打つ。」携帯を取り出しメールを打ち込み

「あっ、チェギョン。ムン・ジェウォンも呼ぶぞ。」又メールを打つ

「良いですけど。」二人っきりのデートなのに・・。

「オレ達は食べたらすぐに出るから。その後ちょっと遅くなるが、たまには映画でもも観るか?」私の顔を覗き込む

「えっ?最高のカップルデートです。」私の目が輝きウキウキしてしまう

「ほらっ、もう行くぞ」カレが一歩踏み出した後に、私も一歩踏み出した。







「おねーさん。お久しぶりです。」椅子に座り挨拶をした。

「チェギョンちゃん、もう忘れられたかと泣いてたわよ。」ニヤニヤ笑う

「おねーさんを見ると、シン君に会いたくなってしまうので、ごめんなさい。」

久々なおねーさんは、相変わらずお綺麗でウットリしてしまう。

「この後映画行くんでしょう?もう出来てるから、持ってくるよ」扉を開けて中に入っていった

「今日はどんなのでしょうか。」

「ねーさんに任せておけば、勝手に美味しいの作るからなー。」クスクス笑う

こんな時間に、シン君を間近に見れるなんて幸せー。

二人で軽くお酒を飲んだので、COXまでは電車で行く事にした。

「おっ、来たな。」シン君の言葉で横を見ると、ムン・ジェウォンがいた

「すいません。お邪魔かと思いますが、御呼ばれされましたー。」

日本の柴犬ムン・ジェウォンは嬉しそうに笑う

「座れよ。」席を進められ、座ろうとしたら

おねーさんが「はい、持ってきたよー。」トレイには、色んな料理が載せられていた

私は素直に「やったー。美味しそうです。」という声が聞こえない位に、おねーさんが叫んだ

「ウゲッ!」綺麗な顔から出てくるような言葉ではない。

おねーさんは、ギッとシン君を睨みつけ、真っ赤になる

「真っ赤ですよ。大丈夫ですか?」優しい言葉

トレイを受け取り「おねーさん、大丈夫ですか?」私もあまりにもの真っ赤に心配してしまう

「・・・ダイジョブじゃない・・。」小声で聞こえない

「ねーさん、今日ムン・ジェウォンには世話になったから、こいつの分まで作ってくれよ。オレ達は食べ終わったら店出るから。

ムン・ジェウォンにいっぱい美味しいのを食べさせてくれ。」

トレイを受け取りながら言う

「分かったわよ。」真っ赤になった顔は可愛い

「室長のおねーさん、相変わらずお綺麗ですね。シェフやってるのが、勿体無いですね。」座りながら言う

「まー、料理界でのトップになりたかったからなー。無我夢中の時は、化粧なんかした事なかった。」クスクス笑う

「今も、料理の香りに支障があるって、目しかやってない筈だ。」

「自分の仕事に真剣なんですね。尊敬します。」

「本人に言ってやってくれ。喜ぶよ。じゃー、先に食べる。」

ステンレスの箸を持ち上げ、食べ始めた。

標準より大きいサイズのトレイに乗せられたおかずは、犇めき合う。

シン君が食べ始めたので、私好みの料理を味う。

おねーさんが「とりあえずこれ食べて。」と差し出したケランチム。

「ケランチムにはうるさいんですよ。」見るからにフワフワとしたケランチムに、ゆっくりとスプーンを差し入れ口に含んだ

「!」目が見開いた

「うまっ!こんなの食べた事ないけど、なんか懐かしい。」もう一口食べる

「あー、マジで美味い!」おねーさんが又一品料理を持って来た時に

「ケンランチム、最高に美味いです。」

ムン・ジェウォのお尻からパタパタと振る尻尾が見えそうだ。

「俺、結婚条件1に、ケランチムを美味しく作れる人というのがあるんです。」

「え?」おねーさんが又真っ赤になり、シン君の目が光った

「ねーさんから料理を教えて貰っているから、チェギョンのは美味しいぞ。

でも、ムン・ジェウォンにはチェギョンは無理だ。

ねーさんはどうだ?ケランチムは絶品だ。」さり気なく話を振る

「シン!」おねーさんが慌てる。

「室長、おねーさんレベルが俺なんか相手にする訳ないじゃないですかー。

それに俺、結婚条件2は年上の女性は無理って言うのが、あるんです。」


シン君はおねーさんを見て「そっかーっ。」その言葉に私は何か引っかかた






私達は、おねーさんの店を出て電車に乗った。

「おねーさん、なんか元気なくなりましたねー。」

「あの店の経営者だからなー色々あるんだろう、今はねーさんより久々なカップルデートを楽しむ。」私の体を引き寄せる

「シン君、皆に見られます。」言葉とは裏腹に嬉しい。

「オレの女だって見せつけたい。」吊り革に手を掛け、私の頭に自分の顔を乗せる

「シン君重いです。」もー!とおこるが

「オレだって、カップルデート久々でテンションが高い」嬉しそうな笑顔

毎日大変なシン君なのに、わたしの為に付き合ってくれる優しさに、感謝いっぱいだ。

「いつも寝てるチェギョンしか見れないから、記憶のチェギョンで我慢してた。が、やはり生のチェギョンは、良いなあ」優しい笑顔

シン君がこんなに笑ってくれるなんて、嬉しい。

「私も生シン君は最高です。」

電車のガラスに映る私達を見て、これが夢じゃない事を知り嬉しくなる

二人のキモチは一緒だと分かっているが、やはり会えないのは寂しいね。

だから、この1週間を楽しまないと。

シン君が本格的に社長の席に就いてしまったら、益々会えなくなりそうで

電車内にアナウンスが掛かって「次だな」

あっという間に駅に辿り着き、地上に出るために階段を上る

登りきると目の前には整地された景色が広がり、4車線の道路には車が連なって走っている。そして道路の向こう側にCOEX MALLが見える

二人で手を繋ぎ「何を見ます?」映画なんて久し振りで、モール内にあるMEGABOXのカップルシートはまだあるかな?と考えていると

「チェギョンは恋愛ものか?」

「シン君の好きなコメディが良いです。」

シン君は以外にもコメディ映画が好きで、よく笑う。

普段あまり笑わない人だから、最初の頃はビックリして見てしまった。

「ご飯食べた後だが、イカバター焼きは食べるんだろう?」

「映画館と言ったら、イカのバター焼きですよ。お腹いっぱいでも食べれます。」

威張ってみせる

「映画館と言ったら、チェギョンは絶対にそれだものなー。

最初来た時にそれを頼んだ時には、ビックリした。

オレの情報では、女達は皆ポップコーンやプレッェルを食べるのに、イカバター焼きを美味しそうに食べるチェギョンに、又惚れ直した。」

少し前を思い出して笑う

「シン君もそれ以来、映画館と言ったらイカ食べるようになりましたね。」

「まじに美味過ぎて、映画始まる前に食べ終わってしまう。」

「まーっ、最初の頃のお前は、初めての映画デートでイカ焼きを食べて、嫌いになって貰おうとしていたのが、丸わかりだったけどな。」

「え?何故それを!」私の思惑がバレていたとは!

「入社して以来ずーっと観察してきたんだ。チェギョンは考えている事が顔に出てるタイプだからな。」

小さい声で「ストーカー。」ポツリと言う

「そのストーカーを好きになったのは?」全然余裕なシン君

「私です。」ふふふっ。「大好きです。」きっと今私のお尻から尻尾が出てパタパタしているだろう。

様々な形をしたヘッドライトに照らせれながら、私達は長い横断歩道を渡る。

そして東の夜空にはオレンジ色の大きなお月様が登り始め、シン君に教えてあげる

「今日は満月かーっ。オトコはオオカミに変身してしまう。」ニヤリと笑う

「シン君もオオカミになるんですか?」頬を染め見上げる

「可愛い羊の羊毛をはぎ取り、泣く羊を味わい尽くすこわーいオオカミになる。」

「私はワンコ系なので、オオカミさんは襲ってこれませんね。」

「同じ犬族なら、全部舐め尽くす。」COEX MALLに辿り着き、私を見下ろす

「もーーっ。露骨すぎます。」腕を叩きながらも、鼓動は早さを増していく。

映画デートも楽しみだけど、大人の夜は長い

お互いの肌の温度は熱く、雫は肌を伝わりカレの唇に吸い込まれ卑猥な音を奏でる

映画の後の事を考えてしまうなんて、カレが教えてくれた大人への階段

ゆっくりと上がっていきたかったのに、カレの力強い腕に引かれて、何処までも高く昇っていくだろう

「シン君、オオカミさんは待て!でお願いしますね。

今はイカ焼きー、じゃなかった映画デートですよ。」

左手でチッチッと横に振る

「イカ焼きデートな。」

二人でクスクスと笑い合い、もう一度手を繋ぎ直し、二人一緒に進む道は、何時も幸せに満ちていた。





皆様、こんばんは。

最近、腕時計が止まってしまって、新しいのを探し中。

ようやく決めても、又違うのに目移りしてしまい、又検索するという無限ループにはまっております。


このお話の中でオトコは満月にはオトコはオオカミになると書いてますが、会社の人のに聞いたら、満月は体調が悪くなると言っていたので、あれ~っ違うー。

話を直さないで、そのままアップします。(笑)


では、何時も訪問して下さり、ありがとうございます。

おやすみなさい。