次の日。

朝、目を覚ましたら目蓋が腫れてた。

「こんな目で、今日の歓迎会に出ないといけないのかー。」

色んなことを飲んで忘れようとしたのに、この瞼ではテンションが下がる。

こうなったらいっぱいの水で顔を洗い、冷たいタオルで応急処理をして、学校に行く準備をした。







「えっ?イ・ユル先生、出張ですか?」

私の指導担当がいなくては、どうしたら良いのか。

先生の机の上には、イ・ユル先生のネームプレートが置いてあった。

教頭先生が「あっ!イ・ユル先生に頼まれたから、大丈夫ですよ。

イ・シン先生に面倒見てもらいましょう。」

「えー⁉︎」あー、なんてこったい!

昨日の事もあったから、出来るだけ会わないようにしたかったのに。

机に手を置き、ガックリと頭を下げた。

「シン・チェギョン先生、邪魔です。」良い声が側で聴こえて、ビックリして振り向いた。

振り向いた先には、冷たい視線で見下ろすイシン先生がいた。

「!」ヒー!体は反射的に横にずれた。

ジロリと見下ろされ、私は苦笑いをした。

「イ・ユル先生から聞いた。まっ美術担当じゃないけど、それなりにやるからな。

ほらっ、あっちに行くぞ。」

自分の席からファイルを持ち、イ・ユル先生の机からもファイルを持って、テーブルを目指した。






淡々と今日の段取りを決め、イ・ユル先生が帰ってくる日までのスケジュールを立て、私の教育レベルを調べた。

私が作成したファイルを見ながら

「いつから、美術の先生を目指してたんだ?」

突然言われて慌てたが、ここは素直に「大学の教授に勧められて。先生もいいかと。」

純粋になりたかった訳じゃないので、声が低い。

「そう。」一言だけって、呆れてる?

「じゃっ、もう時間だ。」2年のミーティングの集まりに向かった

ミーティングも終わり、私はイシン先生の後を付いて、パタパタと歩いていると。

急に振り向くイ・シン先生。

「!なっ!何ですか?」急に振り向き私の顔をジッと見るので、ファイルで顔を隠した。

「何やってんだ?」ファイルに手を掛け、今にも覗き込もうとしていた。

「わー!ダメです!」またもや慌てる私。

「なんだその目?昨日は何とも無かった筈だが?」ジーっと私の顔を見るイ・シン先生の目が怖い。

横に目線を落とし

「昨日、レンタルした映画を観て泣いてしまいました。だから、気にしないでください。」

目線を下に落としたまま呟いた。

「本当か?」真剣な声は私の心を読もうとしていた。

「ハイ!」思わず背筋を伸ばして言ってしまった。

先生は何も言わず、前を振り向いて歩き始めた。











私が本当になりたいのは、教師じゃない。



4年前、毎日先生と待ち合わせしてアパートに行っていた私達。

部屋に入った途端、ベッドに雪崩れ込み、貪るように荒いキスを重ね、服が破けてしまうんじゃないかと思うほどの服の脱がせ方に。

「シン君先生ー。服破けちゃうよ。」

前髪の隙間から見える切ない目に私の心臓がギュッとなる。

「慌てなくても。」そんな言葉で先生を止めた

高校の時、皆と雑談して噂でこうなんだってよーと、雑誌でスゴイー!とワイワイと騒いでいた

「イ・シン先生とキスできたら、私気絶しちゃうー!」みんなの前で言った言葉は、そんなに過去の事ではない。

キスどころか、カラダを重ね、カラダを突き抜けて行くキモチ良さを知り、自分がもう何も知らない子供じゃない事を知る。











シーンと静まり返ったこの部屋は、二人の吐き出す息と、キスの音しか聞こえない。

「痛かっただろ?」心配そうに、前髪を撫でおでこにキスをする。

プルプルと頭を横に振って「大丈夫」

ギュッと抱き付き先生を安心させる。

「そう言えばね。さっき思い出しちゃったことが。

私先生に片思い中の時皆の前で「イ・シン先生とキスしたら、気絶しちゃう!」って言ってたんだ。

「初めてキスした時には気絶しなかったな。

でも、違う事で気絶してるから。当たってるな。」ニヤニヤ笑う。

「恥ずかしいー!」先生に背を向けた。

「オイ!」背を向けられ、不満そうな声。

それでも、私は恥ずかしくて、先生の方を見れなかった。

すると、後ろからギュッと私の体を抱きしめる。

「ゴメンっ。」ギューッと抱きしめてくれた。



「そう言えばこの間、バスケ部の部室に行ったら、みんなでコンビニの新発売の桃まんを食べてた。

皆、興奮しながら食べていて。」

「シン君先生ー!」何て恥ずかしい話。

「まあ、まあ、思春期のオトコはこんなもんさっ。

で、1人が「あー、俺チェギョンさんが卒業してしまって悲しいです。

告白なんて、ダメに決まってるから、ただ見ているだけで良かったのにー。

もう、いなくて学校に来る楽しみがないー。」1人が言うと皆、言うんだよなー。

皆んなで、これはチェギョンロスだって騒いでた。

まさか、オレの彼女とは言えずに黙って見てたら。

「チェギョンさんの胸ってこれ位かなー?」桃まんを二つ並べて、嬉しそうにしている男子達。

まっ、ギョンはガンヒョンがいるから、呆れた顔で見てたけど。


















「門限の時間だ。」

「やだ。帰りたくない!」シン君先生に抱きつきワガママを言う。

「帰らないと家の人達が怒るぞ。」抱きついたまま、シン君先生は体を起こした。

「付き合い反対されたら、オレが困る。」間近に顔を合わせて、キスをしてもらう。

「ほんと?」私からもする。

「お前は、オレを本気にさせたんだ。

大学終わったら直ぐに結婚する気だから、親御さんのご機嫌を損ねるようなことは、絶対にしない事!」

私の手を取り、指輪を触る。

「シン君先生!」何時もクールな先生からこんな言葉が聞けるなんて、夢?

ジワーっと涙が出てきた。

「なっ何?泣いてるんだ!」慌てる先生。

「付き合えただけでも奇跡なのに.。」涙を落とさないように、目に力を入れていたが。

「チェギョン、お前と付き合うと決心してから結婚の事は考えてる。」

先生の真剣な言葉に、とうとう私の涙は、流れ落ちてしまった。

「泣くなって。」泣き始めた私の涙を指で拭き取る。

「だってー!」子供のように泣き続ける私を先生は呆れながらも、抱き留めてくれた。

「チェギョン、泣かせてやりたいが時間だ。」

「外すのは得意だが、付けるのはスッゲー難しいなー」と苦笑いしていた。







家の門の横にバイクを停めて、私は降りた。

先生は私のヘルメットを取り、髪の毛を軽く直してくれた。

「シン君先生。」涙は止まったが、目がボーッする。

「うん?」

「私の夢、一つ増えちゃった。一つは絵にかかわる仕事をしたい。」

わたしの顔を撫で始めた指が止まる。

「二つ目は、シン君先生の奥さんになりたい。」

わたしの顔を手で包み

「スッゲー、目がキラキラしてる。オレはこの目にヤられたなーって、つくづく思う。

一つ目はチェギョンが頑張ればなれる。

二つ目は、オレの夢でもあるから、必ず叶えさせる。」

先生の顔が近づいてきて、優しく唇を重ねてくれた。

「2人の夢だね。」もっとキスをして貰いたくて、駄々をこねたが。

「じゃあ、宿題しろよ。歯、磨けよ。夜遊びに行くなよ。」私の顔から手が離れ、先生はバイクに跨った。

「小学生じゃないもん。」プーッと頬が膨れる。

メットを被りながら「だよなー。もう大人だもんな。」ニヤッと笑った。

「もうー!シン君先生が大人にしたんだから!」

「ちゃんと責任は取る。」にッと笑ってエンジンを掛けた。

夜なので、エンジンを掛けてすぐに行ってしまった。

ちょっとだけ寂しいけど、明日も会うから大丈夫!

待ち合わせしている時間がもったいない、明日はシン君先生に内緒にアパートで待ってみよう。

ご飯も作って、お帰りなさいって、出迎えたら、シン君先生驚くかなー?

初めてあの合鍵を使うんだ。

えへへっ、なんかシン君先生の奥さんみたい。家の門の前で、一人でニヤついていた。
















手に持ったグラスの氷を、ボーッと見つめたまま昔のことを思い出していた。

夢は叶わなかった。

一つ目の夢は気力がなくなり、何となく大学生活を過ごしてしまった。

2つ目の夢はあの日に木っ端みじんに壊れてしまった。

結婚はシン君先生以外とは、したくない。

だから夢なんて叶わない。

グラスの氷をストローでクルクルと回し、ヤバイなー、涙でそう。

真剣な恋だった相手を前に、お酒を飲むなんて。

元々お酒は苦手な方なので、今日の私は悪酔いしそう

「シン・チェギョン先生・・大丈夫?」

私の隣の保健医のキム先生。名前忘れちゃった。

グイッとカクテルを飲む。

「大丈夫です・・よ。」あれ?ちょっとだけろれつが回らない。

「ふふふっ。シン・チェギョン先生ってカワイイですね。」綺麗な笑顔に見惚れる。

あーーっ、でも何となく、あのミン・ヒョリン先生に似てる。

「あっ!見てください。イ・シン先生の周りに後の教育実習生が陣取ってますよ。」

キム先生はヒソヒソと私の耳元に話かけてくる。

余りにも近くて、体がビクッとしてしまった。

「可愛い。シン・チェギョン先生は、イ・シン先生みたいなイケメンにとこに行かないんですか?」

グラスの中のチェリーを持ち上げ、真っ赤なルージュの口元に、ゆっくりと近づけた。

「あっ、私はオトコの人は、ちょっとーダメなんで。」

シン君先生以外の人なんて無理。

「珍しいーですね。そう言えばイ・シン先生、この間凄い綺麗な人と女の子を連れて、ロッテデパードに来てましたよ。」

真っ赤なチェリーは、真っ赤なルージュの中に吸い込まれていった。

「!!」先生の家族。胸がグサッと何かが刺さったように痛い。

「とても幸せそうでした。あらっ、やだ。見てくださいよー。イ・シン先生にはご家族がいらっしゃるのにねー。あの女子達しつこいです。」

目線を向けようとしたけど、止めた。

だって、先生の周りには何時も女子達が固まってたもの。

まっ、自分もそのうちの一人だったけど。

「イ・シン先生の事はいいです。」グイッとまた飲んでしまった。

「シン・チェギョン先生って、本当に珍しいですよねー。」

私のグラスが空になりそうになり、同じのを頼んでくれていた。

「顔が可愛くて、スタイルも良いです。教育実習生なんて勿体ない。」

綺麗なキム先生に褒められて、照れてしまう。

「そんな事ないです。」

新しいカクテルがきて、キム先生のグラスと私のグラスがカチンと音を鳴らす。

「シン・チェギョン先生って男には興味ないんですか?」ニッコリと笑う。

グイッと飲んだカクテルはさっきと同じものだと思ったのに、辛い!ゲホゲホッと咳き込む。

「大丈夫ですか?」私の背中を摩ってくれる。

「ダッ・・大丈夫です。」ゲホゲホ言いながらも、喉を潤した方が良いと思い、もう1度飲む。

ゲホゲホッ、止まらない。

「もう、シン・チェギョン先生大丈夫ですかー?私のを飲んでください。

オレンジジュースですから。」

差し出されたフルーツがいっぱい乗ったグラスを一気に飲み干してしまった。

ボワッと一気に熱くなった体。

「あっ、ごめんなさい。これマイタイだったわ。」ニッコリと笑う

マイタイ?あれー、体に力入んない。

「だいじょうーぶーです。」一気に口元が開かない。

「そう、良かったー。こんな歓迎会脱け出して、カラオケ出来るとこに行きませんか?」

妖艶な微笑に私はクラクラする。

「カラオケ―?」

「そうそう、休むとこもあって、カラオケ歌い放題です。」

「行きましょうーー!」こんな歓迎会居られない。

さっさとここから出たい!ガヤガヤと皆騒いでいる部屋の端っこで立った私なんか誰も気が付かない。

ちゃんと立ったつもりでも、グラッとカラダ前のめりになる。

「シン・チェギョン先生。私に掴まって下さい。」私の腰をギュッと掴む。

私の身長は167センチなのに、この人は私よりも大きくモデルみたい。

2人で歩き出し、ヨロヨロと歩いている私をキム先生はもっと自分に寄せて「心配しないでください大丈夫ですよ。ほらっ、もう外です。」

店の外に出た私達は秋の風の冷たさにますます身体を合わせた。キム先生は私の真っ赤になった頬を優しく触ってくれる。

「シン・チェギョン先生って、綺麗な体つきしてるんでよ。

可愛い顔で綺麗な体、ずーっと触ってみたかったんです。」

怪しい指は私の口元に辿り着き、ゆっくりとなぞる。

「一気に外に出たから寒いでしょう?早く私が体温めてあげます。」指の動きは止まった。

キム先生は、タクシーを呼び留めようと手を上げた時。

グイッと手は下げられた。

「彼女の担当に何も言わずに、どこに行くつもりなんですか?」

「?」オトコの人の声。

「イ・シン先生!手を離してください。」なんで?こんな所に?先生の顔を見上げる。

「だーかーらー、どこに行くんですか?」私より大きなキム先生が、又大きい先生に見下ろされていた。

「毎日疲れていると思いまして、カラオケにー。」苦笑い。

「何処のカラオケですか?もしかしてアッチ方面のカラオケですか?」

先生の指差した先には、ホテル街があった。

「えっ?」ホテル街?

「教育実習期間内に何を彼女に教え込もうとしてるんですか?」

ひくーい声はキム先生を威嚇する。

「色々と。」声が小さくなっていく。

「オレが彼女に指導しますので、どうぞ中に戻って下さい。」

キム先生の腕から手を離し、私の体を奪い取った。

キム先生は、先生にキッと睨みながら中に戻って行ってしまった。

支えのいなくなった私の体はヘナヘナと崩れ落ちそうに。

ガシッと掴まれた体。

「お前なー―!あの女はバイだから、お前やられるとこだったんだぞ!」先生の怒り方がハンパない。

「バイ・・・?」

「バイセクシャル・・男も女もOK、。」

「女同士ってできないんじゃ。」

「デキるみたいだ。」私の体を抱えながらボソッと言う。

オンナと女がどうやって?

わかんない。

私の思考範囲を超えてしまって、グルグルと意識が遠のいてしまった。









皆様、こんばんは。

今日は、チュ・ジフンさんの誕生日ー。

この間、久々に検索したら元カノの記事を読んでしまいましたが、今は心穏やかに読めるようになりました。

時が解決してくれたのかな?

去年の記事で「宮」のリメイクの話が出ているそうで。

嬉しいけど、あの当時のジフンとウネちゃんとじゃないとちょっとー。

大人バージョンの「宮」も見てみたいね。

では、何時も訪問ありがとうございますー。

おやすみなさい。


fc2から誕生日祝いのイラストです