あれから四年が経ち、あっという間に過ぎて行った日々。

忙しい日々は、幼い恋なんて思い出す暇もなかった。





学校に忍び込み、シン君先生に別れを告げた後、走って携帯ショップに駆け込み携帯の番号も変えた。

両親に色んな言い訳をして、実家から飛び出し安いアパートに逃げた。

シン君先生とちゃんと話をして別れたわけじゃない。

卑怯な別れ方をしたと反省している。

でも、18才の私にはそれが精一杯だった。

でも、もう終わった恋だ。

後戻りなんかしてられない。

今は、人生の岐路に立ち、前に向かっていかなければならない時だった。

美術大学に来たからには、絵に携わる仕事につければなーと思っていたが、この大学ではけっこう偉い教授に

「教員の資格受けてみないか?」

「私がですか?」ビックリし過ぎて、手に持っていた筆を落としてしまった。

「私は君にピッタリだと思うがね。」髭が面白い形の教授が笑いながら言う。

「確かに、これと言って秀でる所が無いですがー。私がですが?」

「教員の資格は持っておいても、損しないよ。私の教え子がいる学校にすると良い。」穏やかに話す教授に勧められた。

尊敬する先生に言われて私は「はい。」と応じていた。










「で、教員の資格本当に取るの?」今人気のカフェにガンヒョンと一緒にやってきた。

「・・・うん。取っておいても損が無いって言うからねー。」

何十枚にも重なったパンケーキの上から生クリームが雪崩を起こしているを、制覇しようと必死な二人の席に、ガンヒョンの彼氏がやって来た。

「ガンヒョンー!昨日ぶりー!」座っているガンヒョンを上から抱きしめながらの登場に、苦笑いを浮かべた。

「ギョン!こんな所で!」冷静なガンヒョンが唯一、感情を乱す相手。

「大学が違うから、ガンヒョンの顔見れなくて、倒れそうだった。」

ガンヒョン切れを起こしているギョン君は、力一杯ガンヒョンを抱きしめた。

「もう良いから、座りなさい!」何時もは色白なのに、頬がピンクに染まっていて可愛く見える。

ガンヒョンに怒られたのに、ギョン君は嬉しそうに隣に座った。

店員さんにコーラを頼みながら、私達の滑稽な行動に笑う。

「そんなどデカイパンケーキを、凄い顔して食べてるけど。」

「ようやく食べれるんだから、今は必死なのよ。黙って見てなさい!」ガンヒョンが睨む。

「ギョン君!女の戦い見てて。」私とガンヒョンは髪の毛を結び、パンケーキとの最終決戦に挑んだ。






「フーッ、食べた。」髪の毛の束を外しながら、フーーッと息を吐く。

「完食したねー。」10分もの戦いは、私達の勝利に終わった。

「普段少食なのに、なんでこれなら食べれるんだ?」すごいもの。見てしまった顔のギョン君。

「女の秘密よ。」私とガンヒョンは笑う合う。

三人で話を少しして、私は立ち上がった。

「じゃあ、もう行くね。」

「チェギョン、早くないか?」

「ギョン君!!カップルの邪魔はしないよ。」チッチッと指を振る。「教育実習の準備するの、遊んでられないの。」

「何処の高校?」

「ソウル高校・・・。」

「おっ!!そこそこの学校じゃん。」

「でしょう・・?だからやるからにはちゃんと資格取りたいからね。じゃあ、もう行くね。」私は座っている二人に手を振ってこのカフェを出た。




ガンヒョンとギョン君カップル。

私の我儘を聞いてくれた二人。

彼女は学校でのシン君先生の事を教えてはくれなかった。

彼は、私の事をシン君先生に教えなかった。

2人には、本当に感謝している。

通路からカフェの中を覗くと、幸せそうに笑い合う二人がいた。

2人共幸せそうだが、お金持ちのギョン君の親から反対されている。

ガンヒョンが年上で、片親だと言う理由で反対されている。

こんなに好き合ってるのに・・・。

だから、二人が本当に結婚したくなったら、私が手助けしてあげると約束している。

あの18才の本気の恋を忘れる為に、二人が協力してくれたように。

立ち止まって二人の事を見ていた私は、気を引き締めて前を向いて歩き出した。








「キミが教授のお気に入りの子だね」

ニコニコ笑うイ・ユル先生は2年担当の美術の先生。

ベビーフェイスのせいで、30才過ぎているとは思えない。

「お気に入り・・なんてそんな・・。」

「教授は、才能のある可愛い子が大好きなんだ。全くお年を召しても、男なんだね。」

「男ですか、私には優しいおじいちゃんですけど。」

「あの教授の事をお爺ちゃんだって、君凄いねー。だから教授のお気に入りなんだ。」アハハハハっと笑う。

「じゃあ、職員室に行って挨拶しに行こうか?」ニコッと笑う。

「はい!」私は髪型と服装を整え、イ・ユル先生と職員室に向かった。

教頭先生とイ・ユル先生に紹介された私は、各先生の所に挨拶をしに行く。

先輩先生達から、頑張れ、宜しくねと優しい言葉を掛けられたが、ある席の前で私の足は止まってしまった。

「イ・シン先生だよ。2年の国語の先生。カッコイイでしょ・・・。」

イ・ユル先生の言葉が遠く感じる。

ただイスに座っている先生だけを見つめてしまった。

「ほらっ、シン・チェギョン先生、挨拶ーーっ。」肩に手を置かれてハッとした。

「イ・シン先生・・・シン・チェギョン先生可愛いでしょ?僕の恩師のお勧めなんだ。」

「・・・・・・。」テストの答え合わせをしていた先生の手が止まった。

余白に、イ・シン先生大好きーー!

又次の問題にも・・先生・・私のLINE ID・・。

女子からの愛の篭った字をイ・シン先生は無視をしていく。



その姿を見て、自分の時を思い出す。

テスト用紙の余白に、先生大好きです。と書いて想いを伝えても、そこの行には大きな×が付いていた。

何度書いても、大きな×が付いていたっけ。

イ・シン先生は、何度も私のキモチに先生として答えていた。



だから何も書かずにスルーしているのに、ビックリしてしまった。

「シン・チェギョン?」イ・シン先生の顔がゆっくりと上がる。

何時かは会う時があると思っていたが、まさかこんな所で会うなんて。

大きな深呼吸をして、イ・シン先生を待つ。

逃げない。もう18才じゃない!22才の私は、ちゃんとイ・シン先生と向き合う。

上を見上げた先生の目と私の目が合う。

「あっ、あのうーー。」

「初めましてシン・チェギョン先生。」一瞬交わった目線は、あっという間に終わり、イ・シン先生はテストに取り組み始めた。

えっ?

「じゃあ次の先生に。あれ?シン・チェギョン先生行くよ。」初めまして言われた私はビックリして、イ・シン先生を見続けた。

「シン・チェギョン先生、いくらカッコイイからってそんなに見つめちゃダメだよ。イ・シン先生は、ほらっ!」

イ・ユル先生の指先はコーヒーカップを持ちあげた先生の手を指差した。

左手の薬指には、ゴールドに輝く指輪があった。

「!!っ」

「イ・シン先生にはいるから。さっ、行こう!」ニコニコと笑うイ・ユル先生の声が遠のく。

何でショックを受けているんだろう。

あの時に、ミン・ヒョリン先生は子供がデキたって言ってたじゃない。

結婚したんだ。

それに、私はこの人から逃げてしまったんだ。何を今更。

シン・チェギョン!22才!ちゃんとしよ!ビシッと立ち、先生を見下ろす。

「初めましてイ・シン先生!2週間だけですが。宜しくご指導下さい。」大きな声で頭を下げた。

職員室に響く私の声は、先生達の目をビックリさせていた。







皆様、こんばんは。

昨日は母の日という事で、ケーキ、クッキー、いっぱい貰いました。

美味しいね。

ダイエットは明日から・・。泣

皆様は、お花でしょうか?

では、何時も訪問有難うございました。

おやすみなさい。