「チェギョンの事は、諦めろ。」


3人の言葉が、静かな廊下に響く。


チェギョンへのキモチが判った途端、3人の言葉が胸に突き刺さる。

「・・・諦めろって。どういうことだ?」自分の胸元を押さえながら聞く。

3人は顔を見合わせ

「もう、チェギョンには係わらない方が良いわ。ッて言うか、本当はもう会わないで欲しい。」諭すような顔で言うガンヒョン。

「チェギョンは、何度もへこたれずに頑張ったんだ。もうお前から解放してやれ。」インの真面目な顔

「鈍感な俺でも、チェギョンが泣くのをもう見たくない」ギョンはオレをジーッと見る。

「何だ。皆で。」

「お前にはヒョリンがいるんだ。皇帝陛下に一生懸命頼んで婚姻できるように頑張るんだ。」

「婚姻?ヒョリンには断られたんだぞ。」

「自分の彼女に断られても。何度もアタックするのが、韓国男子だぞ。頑張れ!」インはどうしてこんなに。

「オレはチェギョンの事が好きだって。」

「もうーー!遅いんだって!彼女がどんだけ何度も、アンタの事諦められないで何度も泣いて、苦しんできたんだよ。アンタの一言一言に喜び泣いたり。思わせ振りな態度ではぐらかされたり。高1の時にアンタの事好きになってから、私はずーっとチェギョンの傍に居たから判る。

もう今度こそ、諦めたみたいだから。

今更アンタが好きだって言葉、あの子には言わないで!」ガンヒョンの体が震える。傍に居たギョンが心配そうに近寄る。

「オレの気持ちは、チェギョンには邪魔なのか?」小さい声しかでない。

「そうだ。チェギョンはお前へのキモチを捨てて、前に進んでいる。お前の事は過去なんだ。」

「皆には言ってなかったが、チェギョンはオレのおじい様とチェギョンのおじい様が決めた許婚なんだ。いずれはアイツとは婚姻・・。」

「チェギョンは断ったはずよ。」

「何で知ってる!?」

「チェギョンは、私だけに言ってたの。でも正式な断りを1年半保留にされたでしょ。」

「オレはアイツの事が許婚って分かってビックリした。帰国して直ぐに、トレイで叩かれたオンナは、オレの許婚だった。

だから友達から、何も判らないオンナじゃなくて、知りたい。

アイツの事が知りたくなり、どんな声で話すのかどんな仕草色々知りたくなった。

知らない許婚のオンナじゃなく。

ちゃんと、シン・チェギョンと言うオンナと言う許婚として好きになりたかった。」

「シン。帰国してから、自分が気が付かないだけだったじゃないか。」インがポツリと言う

「・・・・・・。」胸元をギュッと掴む。

「トレイで叩かれて一目惚れって、シンってMなのか?」ギョンが笑う。

「オレの幼い行動が、チェギョンを苦しめていた事は知らなかった。チェギョンがオレのへの気持ちを過去の事だと言うのなら。又、好きになって貰えるように、今度はオレが何度でも言う。

だから、ガンヒョン。オレを許さなくてもいいから。チェギョンに、好きだって言いたい。」オレはガンヒョンの前に立ち、ガンヒョンの目を見て話をする。

「彼女のいるオトコなんか、チェギョンに告白する資格もない!」ビシッと指を指された。

グッ!

鋭い指摘に、言葉が詰まった。

「ヒョリンには、結婚を断られたから。振られたも同じだろう?」

「何言ってるんだか。結婚断られてもチェギョンには彼女だって、何回も言ってたくせに!」ガンヒョンの目が段々細くなっていく。

「・・・・。」ぎゅっと握った手は強さを増す。

「自分の彼女が傍に居ないから、チェギョンを代わりにしただけ。好きだってキモチは友達としてかも。

皇太子殿下、早く自分の本当のキモチに気が付いてください!」ガンヒョンは、オレに頭を下げて、行ってしまった。

オレ達は、1時間目がとっくに過ぎているのに、廊下で話していた。

「シン。チェギョンの事は、俺はガンヒョンに賛成だからな。」インがオレを睨む。

「ガンヒョンのいう事は、間違いない!」頷くギョン

「「チェギョンは、あきらめろ!!」」インとギョンの声が揃う。







2時間目、教室に戻ったオレ達は、各自自分の席に座る。

一番後ろの窓際だったオレは、窓ガラスの向こう側にある空を見上げた。

3人でオレの気持ちを止める。

まさかこんなに反対されるとは。

チェギョンがオレの事を好きだったのは、高1の時だけと思っていたから、ある意味ビックリした。

これまでオレの記憶に残っている彼女の行動を思い出そうと。

所ところしか思い出せないが。

ヒョリンが彼女と言う度に、チェギョンの顔が泣きそうになっていたのを思い出した。

ガックリと頭をうな垂れた。

酷い。

何度彼女の事を泣かせたんだろう。

チェギョン。お前は何度もオレのせいで泣いてたんだな。

頭を上げ、又空を見上げる。

その先には、20日も会っていないチェギョンの顔が浮かぶ。

フーーーッ

深い溜息しか出てこなかった。





「シン、メシ食いに行くぞ!」インが誘いに来た。

「早く行こうぜ!お腹ぺこぺこーー!ギョンも来る。

「何言ってるんだ?今は2時間目終ったんだろう?」

「はい??」二人の声が重なる

「何言ってるんだ?4時間目終ったぞ。」真面目なインの顔。

フッと気が付くと、教室の中は人が少なかった。

そのまま行くヤツや、弁当を持って行くヤツ。

本当だ。

「オレ・・・。」ボーーーッとしていた頭を振る。

「もしかして重症?」インがニヤッと笑う。

「あっ、チェギョンの事考えてたか?」ギョンが笑いながら、オレの背中を叩く。

イスから立ち上がり「あぁ。」ボソッと言いながら、机に入っていた弁当箱を持って教室を出た。

ギョンがインの腕をゴツッと叩く。

インは苦笑いをしながら「シン、俺達を置いてくなよ!」慌てて追いかけた。








食堂に着き、窓際の席に座る。

周りの女子の声が気になるが、オレは買いに行ったギョンとインを待つ。

ボーっと食堂の窓から空を見上げる。

チェギョンに会えなくなったから、空を見るようになった。

青い空の時もあれば、グレイ色の時も雫が空から落ちてくるときも有る。

それに、今は白い雪が落ちてきた。

雪の粒は大きかったり、結晶がそのままの形だったりといっぱい舞い降りる。

チェギョンに最後に会ったのは、まだ枯葉が全部落ちていない時だったのに、今では雪が普通に降っている。

食堂が温かい為、窓ガラスが曇っていた。

オレの指は真っ直ぐに窓ガラスに辿り着き、その場所に無意識に動く

・・・・シン・・・

「シン君、自分の名前書いてどうするの?」突然の声。

ビックリしたオレは、声の方向を見上げる。

そこには、笑顔で手を振るシン・チェギョンがいた。

「・・・・・。」ビックリ過ぎて声が出ない。

「シン君久し振りーーー!元気だった?」オレの目前の彼女は、前と違って彼女の周りがキラキラと光り輝く。

間違いか!?目をゴシゴシと擦って、又見上げると。

やっぱり、キラキラと光っている。

「シン君行動がヤバイんですけど。どうしたの?」心配そうな顔。

「・・・だいじょう・・・ぶだ」声が掠れる。

「大丈夫ならいいけど。あっ!イン君!ギョン君!」昼飯をトレイに乗せてやって来た二人。

「おっ!チェギョン!課題終ったようだな。」インはトレイを置きながら笑う。

「学校でチェギョンに会えないと、ガンヒョンにも会えないから、辛かったーー!」ギョンもトレイを置く。

「皆ゴメンね。課題もちゃんと終って提出出来たからーー。後は結果待ち。」Vサインをする。

改めてチェギョンへの気持ちを知ったオレは、前みたく彼女に話しかけれないでいた。

チェギョンがこっちを見て「シン君、どうしたの?何時ものオレ様口調とか、我侭口調とか、王子口調とか。」

「それってバカにしてないか?」恋するチェギョンを目の前にして、胸を詰まらせていたのに。

次から次へと酷い事を言う彼女に、イライラし始めた。

「アハハッばれました?」ニヤッと笑う彼女。

「オイ!」つい何時もの口調で言ってしまう。

「あっ!何時ものシン君だ!やっぱ、シンくんはそうでないとね。」淋しそうに笑う。

「チェギョン?」その顔何か有るのか?

「あっ!そうだ忘れるとこだった。映像科の皆様へご招待です。美術科と一緒にクリスマスやりませんか?」チェギョンはポケットから、クリスマスカードを取り出した。

「文化祭で一致団結した映像科と美術科で、恋人のいないもの同士、楽しいクリスマスへのお誘いです。映像科の人達に渡して欲しいんだよね。」チェギョンはインにカードを渡した。

「美術科にも今日渡したから、クリスマスイブに寂しいお独り様は、ジャンジャン来て下さいーー!じゃっ!また2日後に来るから、イン君、人数確認宜しくーーー!」言うだけ言って、チェギョンはあっという間に、ガンヒョンのいる席に行った。

「一緒に食べたいなー。」ガンヒョンのいる方向をギョンが見る。

オレもガンヒョンの方に目を向けると、ガンヒョンと目が合った。

すると、綺麗な顔で、アッカンベーをされた。

オイオイ。人前でそんな顔して大丈夫か?苦笑いをしながら、インからクリスマスカードを受け取った。

カードの中を見ると。可愛いハングル文字が並ぶ。

アイツらしい。

イブの7時から10時までの予定。確かその日は公務が夜遅くまであったような。

コン内官に言って、何とかしてもらうか。

3人でカードを見ていたが「どうだ?20日振りのチェギョンは?」ニヤッと笑うイン。

「・・・・。」

「20日振りなのになんとも思わないとは。スキッて言うのはウソだったんじゃないのか?」ニヤニヤが止まらない。

「20日振りのチェギョンは、キラキラ眩しすぎた。」ポツリと言って、弁当の蓋を開けた。

素直に言うオレに、向かいの二人はビックリした顔をしながら「でも、チェギョンの事は諦めろな」笑った。






12月24日クリスマス・イブ

21:30。

指定されたカラオケに着いた。

公務を最後まで出席しないで、此処に間に合うように来た。

って言うか、後30分しかない。

助手席にある花束を持った。

今日の為に、オレは宮にある花を選び、チェギョンへ花束を作ってきた。

彼女を思い浮かべながら作った花束。

慌ててカラオケの場所に入って、指定された番号の部屋を探していると。

窓ガラスのとこに、見覚えのある男がいた。

映像科のリュ・ファン、そっかー、アイツも来てたんだ。

オレは知らない振りで通り過ぎようと、イヤッ向にはオンナがいる。通り過ぎようとした体を、もう1度戻した。

シン・チェギョン!

「チェギョン!」廊下に響くオレの声は、カラオケの部屋達から、少しだけ洩れている音に負けずに、彼女に届いた。

フッとオレを見上げる彼女の顔は、都合悪そうな顔だった。

オレは彼女に近づき「リュ・ファンに何か言われているのか?」てっきり何か因縁を言われているかと思っていたら。

「イ・シン!大丈夫だからあっちへ行ってくれよ。」リュ・ファンが叫ぶ。

「お前チェギョンに。」グイッとオレよりも身長が低いリュ・ファンを威厳たっぷりに見下ろす。

「ちょっ、ちょっとシン君。リュ・ファン君は悪い事してないって。ただ私に・・・。」

オレに見下ろされて、ビビッていたコイツは、真っ赤になりながら「そうだよ!僕はシン・チェギョンさんに告白しようとしてたんだよ!イ・シン!あっちへ行ってよ。」

「あっ・・・。」

リュ・ファン。普段女の子のように大人しいのに、今この瞬間はちゃんと男をしていた。

オレは無言でその場所を離れた。

オレの姿が見えなくなったのを確認したリュ・ファンは「シン・チェギョンさん。高1の時からずーっと君の事が好きでした。

シン・チェギョンさん、僕の事全然知らないと思うんですが、僕の気持ち考えてくれませんか?」時々震える口調。

オレは二人の声が聞こえる位置まで戻り、密かに聞いていた。

こういう場面に遭遇したのは初めてなので、こっちまでどきどきする。

って言うか彼女がどう言うのかはいorいいえ。オレの心臓は2倍ドキドキしていた。

「リュ・ファン君、そうですね。私、貴方の事優しい人だって事しか知りません。

文化祭の時、良く手伝って貰った記憶があります。貴方が良い人だって見た目で判ります。

でも、ゴメンなさい。

私の此処。恋愛機能が壊れて、2度と恋が出来ないんです。」自分の胸元をゲンコツで叩く。

「えっ?」

「だから、貴方の気持ちに答えれません。」頭をギューッと下げ、太腿に押し付けている。

「シン・チェギョンさん、恋愛機能が壊れたって僕はお友達でも。」

「私、留学するんです。だからこの韓国から居なくなります。だからごめんなさい。」頭を急に上げる。

「でも、こんな私の事、好きになってくれて有難う。貴方が私の事を好きでいてくれた時間に感謝します。」又深々と頭を下げた。

リュ・ファンがカラオケの出口に走って行く足音が聞こえる。

自分の想いを告げるには、凄い勇気がいる。

その勇気をオレは今までバッサリと切ってきた。

皇太子殿下と言う立場に群がる女子達。

何度も告白され、手紙、待ち伏せ、贈り物。

色んな方法でオレに関心を持って貰おうとする女達。

そんな女に嫌気をさしていたころ。

高1の時、インの幼馴染のヒョリンがオレ達の仲間に入った。

他の女達とは違い。

只オレの傍で寄り添っていてくれた。

それにオレが思う事、行動する事を把握してくれ、気心の知れた女。

オレにとって特別な女。

そう勝手に思っていた。

チェギョンに出会うまで、勝手にそう思っていた。

高1の時、チェギョンからのチョコ。

酷いよなー。

凄い勇気を出してチョコ持って来てくれたのに、オレはぶちまけたと同じ。

知らない振りで行ってしまった。

そんな事されると、心折れるよなー。

酷い事をしたオンナの子に、今更好きと告げても。

3人の言葉がフッと思い出す。

「諦めろ。」床に目線を落し、溜息を吐く。

チェギョンに言う前に諦めた方が良いのか?

何度も彼女を苦しめたオレが、彼女に告白しても良いのか?

ヤバイな。

チェギョンの事を考えるだけで苦しい。

オレの心臓はギューーッと絞られたように、苦しくなる。

彼女の事を好きと自覚してから、何度も苦しくなる心臓。

時々苦し過ぎて眠れない夜がある。

チェギョンは、何時もこんな想いでいたんだろうか?

好きなオトコから、彼女の話を聞かされ、思わせ振りな態度をされたり。

全く何度も思うけど酷い。

何て酷いオトコなんだ。

「・・・シン君・・・?」

チェギョンの声が聞こえ、オレの顔は声の方向を向く。

「こんなとこに居て、もしかして聞こえてた?」

「・・・・・。」何とも言えないオレは、只黙る。

「聞こえてたよね。エヘヘッキモチは嬉しいけど・・私の心臓壊れちゃってるから。

恋なんて、無理なんだ!」ちょっと泣きそうな笑顔。

「チェギョン、その心臓はもう誰にも直せないのか?」ちょっとの間が空いたが、ようやく出た言葉。

「うん。もう恋は無理。良いんだ。私は夢に向かって突き進む。」

「・・・・・。」又、沈黙が続き二人は只立ち尽くす。

「あっ!花束!それどうするの?」チェギョンの声がオレの花束を指差す。

「!」すっかり忘れていた、チェギョンへの想いが篭った花束。

「これお前にやろうと。」花束を彼女の目の前に持ち上げた。

「わーーー!綺麗。見た事ない花もあるね。これ買ってきたの?」花束を嬉しそうにキラキラした目で見る。

「オレが作った。」

「やっぱ、シン君って上手いよねー。教えた甲斐があったよ。もう本当に卒業だね。ちゃんと彼女さんに心を込めた花束を渡してあげて。

シン君のブーケ創作先生に、卒業ブーケ本当に有難う!」花束を大事そうに持ち、微かな香り達を嗅ぐ。

「さっ、皆のとこへ行こう」彼女は明るく誘う。

前に歩き出す彼女の後姿を、只見つめているオレ。

強い。

彼女は強い。

オレから何度も打ちのめされたのに、今は笑って前に進んでいる。

やっぱ、シン・チェギョンは凄い。

オレは、彼女の後に続き歩き出した。

彼女の歩いた足跡に、尊敬の意味を込めたキスをするように、自分の靴跡を合わせた。



今は彼女に自分のキモチを言うのは、早い。

ゆっくり、卒業式まで時間はまだある。

オレの本気のキモチを彼女に判って貰う。

ヒョリンの事も、ちゃんと終りにしよう。

もう彼女だって言わない。

彼女の壊れた恋愛機能を、もう一度復活させてみせる。

彼女に好きになって貰い、正式にオレの婚約者になって貰う

自分の好きですと言うキモチを、温存する事に決めたオレは、チェギョンが入っていたカラオケルームに続いて入っていった。

入った途端、ガンヒョンに抱き付かれているチェギョン。

「えっ?」どうしたんだ?

インとギョンも、オレの姿を見つけ「シン!遅いぞ!」

「すまない、これでも早く着たんだぞ。」

「チェギョンがな。この間の課題が、韓国選抜の凄いコンクールに提出されたそうだ。」

「凄いな。一生懸命頑張っていたもんな。」彼女の顔を見ながら言う。

見ていると、ガンヒョンが泣き始めていた。

「オイオイ・、嬉しいのは判るが、ガンヒョン泣き始めたぞ。」チェギョンまで泣き始めた。

「そりゃー、ずーっと親友だったからな。離れたくないんだろうな。」インもジーッと二人を見ている。

「うん?」離れたくないって。

「コンクールに提出されると、もう後の授業は免除になるんだ。だから、卒業式まで来なくても良いんだ。

チェギョンは、ギョンのお母さんからパリの世話してもらって、もうあっちに行っちゃうから、卒業式まで嫌、もう帰って来ないかもな。」インは淡々と言う。

「・・・・。」オレの目がインを睨む。

「ずーっとギョンのお母さんからフランス語習ってたんだ。だから、あっちに直ぐに行っても不自由はしない。」

「それにフランス語なら・・。」オレは慌ててチェギョンの元に行く。

「チェギョン!お前フランス語習ってたのか?」泣き続けていた二人に問いかける。

真っ赤に泣き晴らした顔は、可愛くてかわいくて仕方がないって言っている場合じゃない!

「うん。習ってた。大分フランス語判るよ。」

「フランス語だったら、オレだって教えれたぞ!なぜ、オレに言わない!」段々声が大きくなる。

「えっ?シン君、皇太子殿下だから忙しいし。」涙が段々止まる。

「オレだって、お前の役に立ちたかった。」そしたらずーっとチェギョンと一緒にいる時間が増えた筈だ。

「ゴメンね。シン君はイン君、ギョン君と一緒の私の友達だもんね。シン君にも聞いてみれば良かったね。課題もやりながらだったから、忙しくて頭回らなかった。」申し訳無さそうな顔。

ギューーーーーッと心臓が絞られた感覚。

オレも二人と同じ位置なんだ。

そんな。

ジャケットの上から心臓に手を当て、この苦しさを逃がそうとする。

「あっ、シン君、ギョン君から聞いた?私そろそろパリに留学に行っちゃいます。

シン君とは、色々とお世話したり、なったりと、短い間だったけど、濃いお友達だったね。ありがとう。」チェギョンの手が伸びてきた。

指先を見ると大分治ってきたみたいだ。

「シン君、最後にお友達握手してちょうだい!」オレの目にはキラキラ光り輝くチェギョンが、今までの笑顔を軽ーく越えたスッゴイ笑顔でオレを見上げていた。

オレの体は、段々チェギョンから離れて行く。

「シン君?」

「い・・・・嫌だ!絶対にしない。」オレの声がこの部屋に響く。

もう帰る時間が来たみたいで、カラオケの曲が止まり、ざわざわとしていた皆の声が、オレの大声で一瞬止まる。

このまま彼女と握手をしてしまったら、もう会えなくなりそうで握手は出来なかった。

「シン君。」

ジーッとチェギョンの事を見ていたが、なんだか目から溢れ出しそうで慌ててカラオケルームを飛び出した。

後ろから、チェギョンの声が聞こえたが、オレはそのまま走り続けた。






皆様、こんばんは。

シン君、逃げましたね。(笑)

お話の中に、内容が合わない所があると思いますが、笑って許してください。

何時も訪問有難うございます。

おやすみなさい。