最近チェギョンに会っていない。

先週の金曜日から会っていないから、もう6日目だ。

公務で、学校に来れない日は仕方なかったが。

「なあ・・・。」

「何だ?」学食に来て辺りを見渡しても、アイツがいない。

何処にいても直ぐに判るのに。

最近見かけないけど。」

「誰だよ。」インはカルククスとキンパをトレイに乗せて歩き出した。

「アイツだって。」オレの眉間に皺が寄る。

「アイツ?」オイ。イン、お前とぼけてるのか?

「チェギョンだよ!」大きな声で言ってしまった。

インの顔が一瞬止まった。

「アハハッ、どうしたんだよ。そんな大きな声出すなよ。周りの皆驚いてるぞ。」インの目線が回りだす。

オレもその目線と同じ動きをする。

確かに、みんなの動きが止まっている。

オレは小さく咳払いをして、インを急かして席を取りに行ったギョンのとこに向った。

インと一緒に座り、自分も弁当を置いた。

オレ達が来たから、次はギョンが御飯を買いに行った。

インはカルククスに、箸を入れてうどんをすくった。

「オイ!さっきの続き」苛立つ。

「あっ、あぁ。チェギョンか?そう言えば今学期の課題が終らないから、忙しいって言ってたな。」ボソッと言う。

「課題が終らない?何処でやってるんだ?」

「美術科の作業室だけど。絶対に来るなって言われてる。」インはカルククスを一気にすすった。

「何でお前が知ってるんだよ。」何か苛立つ。

「何でってチェギョンとLINEしてるし。見るか?」インは自分のスマホをオレに渡した。

立ち入り禁止!邪魔したら絶交ーーー!LINEの文字と、一生懸命キャンパスに絵を描いている後姿の画像。

チェギョン。

「・・・。」

「シン、どうした?スマホに穴開くぞ。」自分のスマホを取ろうとした手を、オレは叩いて止めた。

「シン?オイ叩くなよ。」

「・・・・。」なんで叩いて止めたんだろう。考えていながらも目線は久し振りに見るチェギョンの後姿。

オレ好みの髪質と、香りを持つ彼女。

何時もイタズラしたり、自然に自分の指に絡めていた彼女の髪の毛。

その度に「止めて!」って言われていたが、知らない振りで又クルクル自分の指に絡めていた。

怒っていたが、やがて諦めてオレの好きにさせていた。

その間ガンヒョンやイン、ギョンと話しして笑っていた彼女。

オレ達は、文化祭が終っても自然に学校内で合うようになり、5人で休み時間を過すようになっていた。

5人で笑ったりバカ話したり、こんなに大きな口を開いて笑うなんてした事がなかったのに。

チェギョンが笑わせる。

アイツがいるだけで、皆に話を振ったりワザとボケて笑いを取ったりと。

アイツの存在が、オレの高校生活に欠かせなくなっていた。

それなのに、オレだけが知らないなんて「オイ、ギョンも知ってるのか?」

「アア知ってると思うけど、アイツもLINEやってるから。」

イラつく。

「オレだって、スマホ持ってるぞ!」インに喰らいつく。

「何言ってるんだ。お前が最初にチェギョンに言っていただろう。むやみやたらにオレの番号アドレス教えないって。大事なヤツにしか教えないって、忘れたのかよ。」

そう言えば・・・・。

「だから、チェギョンはお前にアドレスとか聞かないだろう?」インの目が真剣になった。

グッ!

「まっ、お前の言葉は正しいからな。何たって皇太子殿下だ。LINEなんてして、情報が漏れてしまったら大変だからな。」真剣な目は崩れて、何時ものインの目になった。

「とにかくもう良いだろう?」オレの手から自分のスマホを奪い取った。

オレは慌てて立ち上がった。

「シン何処に行くつもりだ?」

「どこだって良いだろう。」歩き出そうとしたら、グッと制服を捕まれた。

「立ち入り禁止って教えただろう。今は課題に集中させよう。座って飯でも食え。」

振り払ろうとしたら、インの手はオレの制服をもっときつく掴んだ。

「友達だったら、チェギョンの事考えろ。お前は先週、皆の前で言ってたじゃないか。

チェギョンは、と・も・だ・ちって。」インはニッと笑ってカルククスを食べ始めた。

「何々どうしたんだ、なんか空気がおかしいぞー。」ギョンがビビンバ丼とカルククスを持ってやってきた。

「なんでもない」ドスッと又座った。

ギョンとインが笑いながら御飯を食べていたが、オレは苛立っていた。

友達だから会いたいじゃないか。

元気かって?

大きな目でオレを見上げて笑う顔を見たいじゃないか?

オレ好みの髪の毛、触りたいじゃないか。

友達だから会いたいのに。

チェギョンに、会いたい。






チェギョンに会えなくなって9日目。

日曜日の朝早くから、フラワーショップに前に車を停め、チェギョンが来るのを待った。

時計を見ると、7時半。

早すぎた。

流石に7時半は早過ぎる。(汗)

宮の車の後部座席に乗って、オレは体を深く座った。

待っている間、スマホのギャラリーを開いた。

最近この場所を開く回数が増えた。

花束を持ったチェギョンの姿が何枚もある。

色んな顔で写っている。

この頃は花メインで写していたからなー。チェギョンの顔が半分しか写ってないのもあった。

プッ、この顔は酷い。

ブーーーッと膨れている顔もあった。

オレの保留許婚なのに、この頃は知らなかった。

留学から帰ってきたばかりのオレに、トレイで叩いた凄い女。

それなのに許婚って、ドラマかよ。

笑うしかなかった。

高校生として自由になれる最後の年。

コイツと居れば、ヒョリンから離れてた淋しさを忘れる事が出来るかもしれないと「まずは、お友達から。宜しくチェギョン。」と言い出した

その言葉から・何ヶ月も過ぎ、もうクリスマスが近い。

シャッターの閉まったフラワーショップも、シャッターにクリスマスリースを飾っていた。

ボーっとリースを見ていると、この間のチェギョンを思い出した。




オレがヒョリンへの花束を作っている時に、フッと気が付いた。

「お前今日感じが違う。」

「そッそんな事ないよ!」

「そっかーイイヤ!判った、髪の毛カールして、口紅つけてるのか?」オレの眉間に皺が寄る。

何だコイツ。学校の時とは違う雰囲気でオンナに見える。

「口紅は付けてないよ!ちょっと濃いリップだよ。」真っ赤になり始めた。

「止めろよ。お前は自然なままが良いんだから。まるでオンナみたいだ。」つい口が滑ってしまった言葉。

「えっ?」オレを見上げる彼女の顔が変わったのを、感じた。

「・・・私はオンナだよ。」急に小さな声になった。

「・・・・・。」気まずくなった雰囲気。

「チェギョンちゃん、ボクの分は作り終えたけど。そっちは終った?」店長の声が離れたとこから聞こえた。

「後もうちょっとです。」その言葉と共に、手が物凄い早さで花束を作っていく。

「終ったら、皇太子殿下の車に乗せに行こう。」店長がこっちに近づいて来た。

「おっ、終ったみたいだね。じゃあ持って行こう。」

「はい。」オレの傍から離れて行く彼女。

「チェギョンちゃんどうした?元気ないよ。」

「オッパ大丈夫だよ。」何時もの笑顔じゃない苦笑い。

「今日髪型カワイイね。青春してるねー」店長は笑顔で接している

「オッパったら。」苦笑いは段々何時もの笑顔に戻っていく。

オレを見上げて笑う笑顔は、他のヤツにも向けられる。

イラつく。

一気にイラついたまま、花束を作ったのに。

アイツは。

「シン君!おめでとう。今日でご卒業です!これ、ヒョリンに送れば良いの?海外だからお高くつくけど、皇太子殿下なら大丈夫だよね。」って言う。

イライラが止まらない、だから

「このラッピングの色が気に入らない。又来週も来るから。」

小さな抵抗をした。

アイツといると皇太子と言う鎧を被らなくても良くて、つい言葉が滑る





待っている間に、好きな小説家の本を読もうとしていたのに、本のページを開いたまま。フラワーショップを見ていた。

友達なのに、彼女のスマホの電話番号もLINEも繋がっていない。

だから、ここに来るかどうかも知らない。

友達なのに。

1時間後、フラワーショップの店長が、やって来てシャッターを開け始めた。

オレは慌てて降りて、店長に駆け寄る。

「店長。こんにちは!今日はチェギョン来ますよね。」縋る気持ちで聞いた。

「皇太子殿下、早いですね。」店長の笑顔がじれったい。

「チェギョンは来るんですか!?」服を掴む勢いで言ってしまった。

「チェギョンちゃんですか?先週電話貰って辞めるって言ってました。」オレの気迫に、店長はビビッてしまった。

「辞める?」

「留学の準備で忙しいからって言ってました。辞めて欲しくないですけど、彼女の夢を応援しなきゃね。」

店長の声が段々遠くに聞こえていく。

「知らなかったんですか?」

辞めるなんて知らなかった。

彼女の友達なのに、知らない。




チェギョンお前に会いたい。会いたくて仕方がない。

と・も・だ・ちと言う言葉は、チェギョンに会えない魔法の言葉のように思えた。








皆様、こんばんは。

何時も訪問有難うございます。

先週は「3月のライオン」というマンガ本を読んでいました。

大好きなマンガで、久々に借りて来て一気読みしてしまいました。(笑)

最高でした。


では、おやすみなさい。