今日の授業は校庭で写生。

もう絵は書き終わっているので、後は色を塗るだけだ。

「チェギョン全然進まないねー。」後ろからガンヒョンが言う

「うーーん、やっぱ色塗るの嫌いなんだよね。」

筆に色を置かないで、もう30分は経った。

私達の目の前には、校内一の銀杏の木が聳え立っていた。

こんな綺麗な色なんか出せやしない。

見上げる先には、銀杏の葉っぱがある。

見てる分だと綺麗なんだけどな。

色作れないな。

悩み続けていると「シン・チェギョンちょっと良いかな?」知らない男が立っていた。

「貴方は?」

「僕は映像科のチャン・ドンイって言います。あの此処だと恥ずかしいので、体育館の後ろに行きませんか?」

「いえ、気にしないで。ここでお話してください。」

「えっ?此処ですか?周りを見渡せば、ガンヒョンしかいなかった。

ガンヒョンは私達に気を使ってくれて、スマホを出してイヤホンを耳に差し込んだ。


「じゃあ。えーっと高2の時から、キミの事が好きなんです!僕の事を知らないと思いますが、付き合ってくれなんて言いません!お友達からお願いします。」真っ赤になった顔でわたしを見る。

あ~~あ・・。

又言わないといけない。

「えーっと。ごめんなさい。気持ちは嬉しいけど。私、恋なんてしないんだ。

だから私を好きと言うならお友達にもなれません。

こんな酷いヤツだから、もう私の事嫌ってください!」頭を90度下げて謝った。

「お友達もダメなんですか?」縋る男子。

「はい。ごめんなさい!」頭を下げたまま、男子が行くのを只待っていた。

私の視界にいた男子の足が移動し始めた。

ゆっくりと、未練タラタラと歩き出した。


音が段々聞こえなくなってガンヒョンに聞いた。

「ガンヒョン、男子行った?」

「行ったな。」声と共に銀杏の落ち葉が広がっているとこに、デカイローファーのつま先が見えた。

ガンヒョンではなく、男の声?

さっきの男子と違う声で、ビックリして顔を上げた。

そこには。

「皇太子殿下ーーーーー!」私は慌ててカレから離れた。

10メートル離れて「何でこんな所に?」

「オレ達も授業で、風景写真を撮ってる。」カレの手はデジカメを持っていた。

ガンヒョンも気が付き、イヤホンを取って驚いている。

「ぁ、そうですか。じゃっ。お気をつけて。」頭を下げた。

「嫌、オレもここで写真撮る。」皇太子はデジカメを銀杏の天辺に向けている。

ガンヒョンと私は顔を見合わせた。

なんだろう。この間、2度も酷い事をしたのに、普通に話しかけてくる。

なんで?

私は、この間の叩いた事を謝らないと!と思い、10メートル離れたとこから、話しだした。


「皇太子殿下ーー!この間は叩いてしまって済みませんでした」頭を下げる。

「・・・。」

「叩いた事は謝ります!が!」

「がッて続きは?」無表情な顔

「花束の事は謝りません!」

「あの花束はオレのとこにあるよ。」

「えっ?持って言ったって聞いたけど、まだ持ってるんですか?」

「あぁ。」俯く

「お前ら何してんの?そんな離れたとこで、話し合うなよ。」カン・イン君がやってきた。

「イン君も授業?」

「そうだな。」デジカメを持ってニッコリと笑う。

「チェギョンは此処のを描いてるのか?」

「うん、線画は終ったんだけど、色が塗れないで一時停止中。」私のキャンパスを指差す。

「ふ~~ん。それにしてもチェギョンて人気有るんだ~。」

「えっ?」

「見てたよ。うちの映像科のヤツ、さっき告ってだろう。」

「聞いてたの?」

「嫌見てたら判るよ。アイツスッゲー、君の事好きだったからな。今日告るって意気込んでだ。」

「そっかー。」

「チャン・ドンイは見た目は普通だけどイイヤツだ。」

私はイン君を見て「私には恋する機能が壊れちゃったんだ。だから誰が来ようと無理なんだ。」

「恋する機能?そんな凄いハイテクがその体に入ってるの?」イン君は笑う。

「シン・チェギョンは冷たいロボットなんだ。だから頑張って告って来た人達を冷たく断る事が出来る。」淡々と言う。

「ふ~~ん。冷たいロボットじゃないけどな。」

「お前らーー、こんなとこにいたんだ?」うん?どこかで見た事のある人

「イン、又オンナ引っ掛けてるー」段々近づいて来る。

私とガンヒョンを見て「おーーー!美術科の人気美人とビンタのカワイコちゃん!」パタパタと近寄ってくる姿は、犬のように見える。

「あれ?シンはなんでそんなに離れてるんだ?」素直な質問。

私を見ながら「シンを叩くなんて、お前凄いなー!」ニヤニヤ。

「この間の時、いた人だ!えーー!同い年なの?」パクパク口が動く。

「アハハッ、アヒルみたいだな」屈託の無い笑顔で笑う。

「アヒルってそんな。」

「チェギョン!話しばっかしてたら、色塗れないよ。」ガンヒョンのメガネが光る。

「あっ!そうだったーー!」自分のキャンパスは皇太子の傍にあった・・。

「うっ!」近すぎる。「皇太子殿下様、キャンパス取りに傍によるけどイイですか?」

「いちいち断る事しなくてもイイ。」機嫌悪いのかな。

私は、ササッとキャンパスまで走り、道具を全部持って行こうとした。

でも、流石にこの多い荷物全部持ったら、一個の絵の具が落ちた。

「あっ!」荷物を持ったまま拾おうとしたら。

綺麗な指が絵の具を掴んだ。

その綺麗な指は荷物を持った指の間に挟めた。

私の傷だらけの指と、綺麗な指がちょっとだけ重なった。

ズキンッ!

恥ずかしい、皇太子殿下の指はあんなに綺麗なのに自分のは。

「有難うございました!」慌てて皇太子殿下から離れようとしたら。

「シン・チェギョン、お前彼氏とかいるのか?」

皇太子殿下の顔を見ないようにしていたけど、ゆっくりと見た。

「さっきの話し聞こえてたよね。私の恋する機能は壊れてしまったので、彼氏なんてありえないです!」

「・・・・。」何か考え込む皇太子。

「皇太子殿下、私と話するとやばい事が起こるから。じゃっ!」慌ててガンヒョンの傍に行った。


ビシ!


この静かな校庭に響く音。

私の目の前には、ガンヒョンに叩かれたこの間の男子が、頬を押さえていた。

「アンタ!私をそこら辺の軽い女達と一緒にしないで!」

「いってー。」

「全く金持ち達は、普通の考えが出来ないのかな?」ガンヒョンのメガネが光る。

「ガンヒョン!どうしたの?」慌てて私は近寄る。

「コイツがしつこく誘ってくるから、一発叩いてやった。」フン!と鼻息を吐く。

ガンヒョンに叩かれた男子は、ボーっとガンヒョンを見ている。

「ガンヒョン理由はどうあれ、人を叩いちゃいけないよ」

「アハハッ、チェギョン人の事言えるのか?」イン君がニヤニヤ

真っ赤になって、皇太子殿下を見る。

「くーーー!だから反省してるって!」イン君をジロッと見る。

ガンヒョンに叩かれた男子の様子がおかしい。

イン君と私は、彼を見る。

「・・・・惚れた・・・。」ボーーッとガンヒョンを見ている。

「はあ?」3人の声が重なる。

「ガンヒョンッていうんだ。キミのパンチに惚れたーーー!」グッとガンヒョンに近寄る男子。

嫌がるガンヒョンは「近寄るな!」筆を振り回していた。

私は、ガンヒョンと男子の間に入って、何とか止めようとしていた時、イン君が変な言葉を言っていた。

「アハハハッ、芸術学校、裏人気女子NO1・2に叩かれて惚れる男子。高3残り少ない高校生活が楽しくなった」笑い続けるイン君。

「イン君!何変な事言ってるの?」イン君を見るとその奥に。

私の目線には、右頬を押さえる皇太子の姿が写った。







今晩は、寝ます。