私とオッパは、先に結婚式場にブーケを届け、イン君に頼まれたクラブに向った。
ワゴン車から色んな材料を運び、セッティングを始める。
そこにイン君が来て「今日もスッゲーの頼みます!店長さん、終ったらちょっとビジネスの話があるので、お時間下さい。」
「ハイ、判りました。」
「じゃあ、チェギョン!頑張ってな、時間までフロアにいるから。」イン君は手を振りながら出て行った。
「オッパ、早くやっちゃおう!」2人で手分けして、この部屋を綺麗に飾っていく。
私は、今日ちょっとした大作を考えていた。
この綺麗な壁の前に、綺麗な花置きたいよねー。
ちょっと構図を考えて、一気に動き出した。
大きな花瓶に色んな花を挿し、枝も挿す。
私の手は止まらずに、色んな角度に仕上げていく。
ようやく決まった花瓶に、満足して「オッパ!出来たよ!どうかなー?」と後ろも見ずに聞いた。
「凄いな。その才能。」
うん?オッパの声と違う。
私はイン君かと思って、後ろを向いたら高そうなソファに、皇太子殿下が一人座っていた。
「へッ?なんで。」私の体は少しずつ、奥へ移動した。
「早く来過ぎて、ここで時間潰している。それにお前の作業見ているのは、退屈じゃない。」
「はあ。あっ、イン君達はフロアにいるよ。あっちに行った方が。」私は何とか、皇太子殿下を此処から追い出そうと。
「此処で良い。」シレッと言う
ダメだった。
「チャギョンちゃん、こっちも大分終った。」オッパも集中していて、皇太子殿下がいるのを判らなかったみたいだ。
「えっ!」ソファに座っている皇太子殿下を見て、メガネがずれた。
「気にせずに、作業続けてください。」静かに答える皇太子殿下。
「はぁ、じゃあ、チェギョンちゃん。2人の作品の構図合わせてみようか。」
2人で、全体図を並んで見る。
「やっぱチャギョンちゃんのって凄いなー。この部屋に合わせての華やかさがある。」
「オッパのはそれを引き立てるように、周りを囲んでくれている。私とオッパはセットだね。」
「有難い事を言ってくれるね~~。じゃあ、もう片付けてカン・インさんを呼んで来よう。」オッパはメガネのずれを直しながら言う。
「あっ、片付けは私がやっておくから、オッパはイン君に言ってきて。」早く此処から立ち去りたいので、オッパを行かせた。
「そっかー。じゃあ、チェギョンちゃん頼むよ。」オッパは皇太子殿下のいる部屋の重圧に耐え切れなくて、さっさと飛び出した。
私は、皇太子殿下の存在を消して片付けをしていた。
すると、スマホのカメラのシャッターの音がした。
「?」その音の方向を見ると。
先程皇太子殿下がお買い上げした、花束が置いてあった。
「うーん。何か変だなあっ!シン・チェギョンこれ持ってくれないか?」
「イイですよ。」皇太子殿下の命令なら、国民は従わないと、私は自分作成の花束を持ち上げた。
「じゃあっ、動くなよ。」真剣な表情で、花束を撮っていく。
何枚もシャッターを押す音が、この部屋に響く。
「よし!じゃあ、花束下ろしていい。」皇太子殿下は、スマホを見続けながら、ソファに座った。
「花束撮って、どうするんですか?」つい聞いてしまった。
「パリにいる、ヒョリンに送る。彼女今日、誕生日なんだ。時差もあるからちょうど良い時間だろう。」
「!!!」心臓が一瞬止まった。
「シン・チェギョン。シン・チェギョン。オイ!!どうしたんだ・?」覗き込む皇太子殿下。
「えっ?」急に皇太子殿下の顔が近くにいてビックリした。
「お前急に動かなくなってしまって、オレの方がビックリした。」私が動いたのを確認した皇太子は、ドサッとソファに座る。
「す、すみません。」頭を深々と下げる。
2人の間に沈黙が流れた。
私は頭を上げると、皇太子殿下がスマホをイジっていた。
「彼女さん、今日誕生日なんだ。離れていても大事な人なんだ。」もう諦めた筈なのに、この言葉を自分で言いながらも、傷ついているバカな私。
結婚を断られて帰ってきたって言うから、もう気持ちはないと思っていたのに。
「あぁ、大事なオンナだ。高1から付き合っているから、お互いの事は何でも手に取るようにわかる。」LINEの音が鳴る。
「お前の花束、褒めてるぞ。」私に何気なく言う皇太子。
「あっ有難うございます。」トボトボと片付け始めた。
何回もワゴンにいらなくなったのを運んでいると、イン君とオッパ、その他大勢の人達が来た。
「わーーー!今日も綺麗。」着飾ったオネーサン達が花達を眺める。
5・6人の女子に、イン君とその他の男達。
皆格好が大人で、同い年の人達がいるとは思えない。
オッパと私は、イン君に頭を下げこの部屋に行こうとしたら、皇太子殿下の隣に座った女性が、あの花束の上に座った。
「えっ?」私は皇太子殿下が、彼女さんの為に作って貰った花束に、座るオンナの人の事を怒ると思っていたのに。
皇太子殿下はそれを見ていても、知らない振りをした。
私は、酒を飲み始めた皇太子殿下の横に立った。
「皇太子殿下、アンタ!彼女さんの為に買った花束なのに、座られているよ!お花が可哀想だよ。」私は皇太子殿下に詰め寄る。
「シン・チェギョン、花の画像は送ったから、もうこれは用がない。」隣のオンナは、お尻に敷いていた花束を取り出し「もうこれ、邪魔ーー!」後ろに飛ばし、皇太子の腕に凭れた。
その行為に、嫌がる素振りもせずに、皇太子は飲んでいる。
私は、飛ばされた花束を持ち、なんとか綺麗にしたけど半分潰れていた。
一生懸命作ったのに。そして、褒めてもらったのに。
「ゴメンね。」花束に呟く。
私は、花束を皇太子殿下の前に置き「これちゃんと持って帰って!」
「邪魔だからいらない。」
「せっかく作ったのに、一生懸命作ったのに。」
「客が注文して、それに応じるのが店員だろう?その後、客がそれをどうしようとお前には関係ない。」
ビシッ!この部屋に響いた音
「イタッ」皇太子殿下が右頬に手を当てた。
「皇太子殿下様だから、ワザと左手で叩いたんだから!彼女さんも同じ事すると思う。自分の為にやって貰った花束を粗末にする訳がない。
この花達に、色んな人達が携わっているんだよ。、皆一生懸命お客様の為に頑張って育てたのに。
そんな事も判らないで、酒飲んでいる皇太子殿下なんか、辞めてしまえ!」皇太子殿下をきっと睨み。
ビックリ顔のオッパを連れ出し、ワゴン車に乗ってこのクラブから離れようと必死だった。
「チェギョンちゃん!どうするんだい?この国の皇太子殿下にあんな事しちゃって!」オッパは運転しながら私に聞いてくる。
「うん、どうしようかねー。さすがに2回目。もうこの国に居られないね。」窓ガラスに映る景色を見ていた。
「チェギョンちゃん!」
「オッパには、迷惑かけないように、頼むんでおくよ。」淡々と言う。
「でも、チェギョンちゃんの気持ち嬉しかった。」
「・・。」
「せっかく心を込めてやった花束の気持ち、言ってくれてスッキリした!でも、叩いたのはダメだったね。」
「うん、それは・自己嫌悪、何でか皇太子殿下には手を出してしまう。」
「チェギョンちゃんが、罪になりそうだったら、僕がフォローするから!」
「アハハッ、オッパ有難うね。」
私は2回目の皇太子殿下への侮辱行為で捕まると思っていたのに。
宮からの連絡はなかった。
それに皇太子殿下も学校に来なかった。
勇気を出して、イン君に会いに行ったら。
「アイツ休み。あの後の事?君に叩かれて、呆然としていたけど。直ぐに、花束持って帰って行った。」
「えっ?」
「なんにも言わないでな。」
「あっちゃーー。きっと泣いてるね。」
「アイツが?まさか?いつも言ってた。皇族は人前では泣いてはいけないって。高1からの付き合いだったけど、未だに泣いてるのを見た事がないな。」
そっかー、何にも言わないで帰ったのか。
人前で、2回も私に酷い事されたんだもの、流石に皇太子殿下も怒ってるって。
日曜日に、婚約の事で宮に行く予定のわたし。
婚約どころか、捕まる可能性が又高まった。
今晩は、すみませんもう眠いです。おやすみなさい。