家から一番近い役所に駆け込み、婚姻届けを書き始める。

その時、秘書のコンとキムがやってきた。

「チェギョン、紹介します。私の秘書のコンと部下のキムです。この二人に貴方の事を頼むことがあると思いますので、顔を覚えて下さい。」

「ハイ、わかりました。コンさん、キムさん、シン・チェギョンと言います。これからよろしくお願い致します。」深々と頭を下げた。

挨拶が終わると、コンが近くに寄り耳打ちをする。

「頼まれた物は、車に準備出来ております。」

「分かりました。」

二人は婚姻届の立会人になり、書き終わって外に出て行った。

私達は、お互いの項目を埋めて、提出する。

待っている間、二人で長椅子に座っている。

こんな夜中なのに、役所の24時間婚姻届のとこには、私達の他に、3組のカップルがいた。

皆それぞれ、イチャイチャしながら、席に座って待っている。

年が近そうなカップルばかりで、私達の様な10も離れているカップルはいなかった。

それに私はスーツ姿、彼女はエプロンをして制服姿。

この奇妙な私達をジロジロと見てくる。

無駄な睨みを使いたくなく、知らない振りをする。

「シン様、後悔しませんか?お試しの1週間まだ過ぎてませんよ。今ならまだ間に合います。」

オレの顔をジーっと見つめる彼女。

「後悔なんかしません。元々許婚とは結婚するつもりでしたし。

こんなに可愛くて、キムチ鍋をおいしく作れる子を逃がすなんて、私はバカじゃないです。それよりチェギョンこそ。」私は、彼女の手をギュッと掴む。

「去年からずーっと好きでした。後悔なんかしません」

「わかりました。」彼女の真っ直ぐな言葉は、一瞬にオレの胸に響く。

ピトッとオレの肩に顔を乗せる彼女が、愛しくて思わず唇を重ねた。

突然のことで、目を見開いた彼女。

目が落ちそうな位、ビックリしている。

周りのカップル達もヒソヒソと言い合っているが、聞こえる。

又、重ねる。

ゆっくりと、高校生の彼女に合わせるように、優しく唇を重ねるという事が、大切だって事を。

「わーーっ、なんて綺麗なキス。羨ましい」知らない女の声

「あんなキスして貰った事がない。」隣の男に怒っている女。

他の人に見られているのが分かったチェギョンは、頬に手を当て茹蛸状態になっている。

そんな彼女を見て、益々可愛すぎると見とれていると

「イ・シンさん、シンチェギョンさん」大きな声で呼ばれた。

もう一人の公務員が、オレ達を見て、ビックリしている。

「お嬢ちゃん、こんな夜に学生さんは、危ないお兄ちゃんに付いていっちゃダメだよ。」私はジロッと公務員をにらんだ。

「ひっ!」公務員がビビって柱に隠れた。

当たり前だ。オレの睨みで色んな人がビビる。

彼女を立たせて、カウンターに立つ。

「私達の分は終わりましたか?」言葉は丁寧だが、威圧たっぷりと。

「えっ?アンタ達が、イ・シン、シン・チェギョンかい?」

「そうですよ。」

オレ達を珍しそうに見上げる。

「何か言いたいことでも?」わざと低い声で言う。

「いやっ、アンタ達もう書類は受領したから、もういいよ。」ビビッた目の前のオジサンは一歩後ろに下がりながら言った。


外に待たせている車に向かって、手を繋ぎゆっくりと歩き出した。









「もう、遅いからお風呂に入ってきてください。」バスタオルを渡す。

小さなスーツケースから、パジャマとテディベアを出した。

白い、嫌っ白っぽい?クタクタなテディベアを抱きしめ、「アルフレッドって言うんです。この子がいないと眠れなくて、やっぱ子供っぽいですよね。」苦笑い。

「いえっ、私も昔はぬいぐるみがないと寝れませんでしたから、気持ちは分かります。」

「えっ?」私の顔をビックリした顔で見上げる。

「失礼な事、考えてますね。」ジロッと見下ろす。

「はい。シン様がぬいぐるみを抱いて眠るなんて、想像つかなくて。」クスクス笑い始めた。

「私にも可愛い子供の頃がありましたよ。」ちょっとだけむくれた私を置いて、さっさとバスルームに消えていった。

シャワーから上がり、スウェットパンツを履き、バスタオルで髪の毛を乾かしながらリビングに行った。

すると彼女は、床に座りテーブルに向かい一生懸命ノートに書き物をしていた。

ソファに座り「何を書いてるのですか?」

「はい、今日の宿題があるの忘れていて、今ちょーー早で、書いてます。」話しながらも手は止まらない。

「仕方ないですね。待ってますから、早くしてください。」

オレは、床に座り一生懸命宿題をやっている彼女の事を見る。

不思議だ。

この家には、今まで女を連れてきた事がなかった。

それに、年の離れた女とも付き合ったことがなかった。

昨日まで、何時もと変わらない生活をしていたのに。

目の前にはオレの妻になった女がいる。

髪の毛を下ろし、オレに背中を向ける小さな肩。

早く抱き締めたい。

宿題が終わるまで、ジーっと大人しく待っていた。

「ヤッター。おわったー!」万歳をしてバタバタしている。

「終わりましたか?」あまりの可愛さに、ニヤニヤしてしまう。

「はい、もう終わったので、寝ます。」片付けながら言う彼女。

「そうですよ。もうかなり遅いから早くしましょっ。」彼女の背中をギュッと抱き締めた。

「えっ?」

「待ってました。さっき言ってましたよね。痛くても何回でも頑張るって。」彼女の耳元にワザと言う。

「えっでももう寝ないと。」

「夫婦は毎日。必ずやらないといけません。」もっともらしくいう。

「シン様 明日学校行けますか?」

「保障できません。」真顔で言う。

「!!」目が飛び出しそうだ。

「あははっ。冗談ですよ。優しく、やさしくしますよ。」彼女の頬にキスをする。

言葉は返って来なかったが彼女の手がきつくオレの回した腕に食い込んだ。









「さーーっ、ここがチェギョンの学校なんですね。」助手席のドアを開けながら言う。

顔が真っ赤な彼女。

「チェギョン?どうしたのですか?学校に行かないと。今日は大事な課題提出日だからって、絶対に出ないといけないって。」

「シン様どこか、私おかしくないですか?何か変わってませんか?」キョロキョロと自分の顔を見ている。

「いえ、可愛いままですよ。」彼女の肩を優しく触る。

「だって。夜あんな事いっぱいしちゃって。」真っ赤になり顔を隠した。

「可愛かったですよ。」夜の彼女を思い出し、ニッと笑う。

「シン様!ったら、恥ずかしいですよーー!」顔全体を覆い隠した。

「まあまあっ、本当の事だから恥ずかしがらずに、ほらっ、もう行かないと。」彼女の手を取り、下ろしてあげた。

お団子頭に戻って、カバンを背負い、制服を着ていると、夜の彼女が嘘に見える。

オレの上で、切ない顔でか細い声で鳴き続ける彼女を、何度も焦らして

チェギョンは初めてなのに、優しくできなかった。

「離れたくないけど、行ってきなさい。」彼女の手を離した。

離した途端、彼女の顔が辛そうになる。

「シン様、離れちゃうと夢だと思ってしまいます。」

「まったく夢じゃないですよ。学校が終わったら、迎えに来て一緒に指輪を買いに行きますよ。それとチェギョンのお家に挨拶をしに行きます。もう、チェギョンは私の妻なんですから、夢見ている暇はないですよ。しっかりしてください。」彼女の頬を親指で優しく触れる。

「シン様の妻なんですね。・・はい。」ニッコリ笑う彼女を、引き止めたくなるのを我慢して送り出す。

軽き出した彼女の歩き方が変だ。

朝もそうだった。歩きずらそう、あっ!私は慌てて、彼女の傍に寄った。

「もしかして私のせいですね。」

「えっ?」

オレは彼女を抱かかえ、玄関を目指した。

周りの登校中の生徒がギャーーーっと騒ぎ出す。

只さえ、周りに高校生達が囲んでいたのに、またまた大きな騒ぎになったもんだ。

「シン様、恥ずかしいです。降ろしてくださいーー!」バタバタと暴れる

「何言ってるんですか。奥さんが私のせいで歩きづらいのに、黙って見てられません!」言葉は真面目に言っているが、顔はニヤついてしまう。






チェギョンの教室まで連れて行ってあげた。

皆が騒いでいるのを無視しながら「机は何処です?」

「一番前の窓際です。」真っ赤になりすぎて、目をギュッと瞑っている彼女。

「チェギョン!」メガネの女が近寄ってくる。

「どうかしたの?アンタ怪我でもしたの?それにこの人は?」オレの事をジロジロと見てくる女。

「今日から、シン・チェギョンの夫になりましたイ・シンです。」

「チェギョンのおっとーー!?」ビックリし過ぎて、メガネが落ちそうだ。

「ガンヒョン、そうなの。」真っ赤になりながらピトっとオレに凭れ掛かる。

「まったく何度も可愛い仕草しないでください。このまま連れて帰りたくなります。」ギュッと腕に力を入れた。

「アンタ達、ここは教室なんだから!止めなさい!」この私に、歯向かって来るとは、中々度胸があるな。

チェギョンを下ろし、カバンから小さなクッションを出し、イスに置いて彼女を座らせた。

「今日は、本当は休ませたいとこですが、体育があったら休みなさい。じゃあ、私も、もう会社に行きますから。」彼女の可愛い唇に親指に当てた。

周りの声がギャーーーっとうるさい。

ああ、キスのし過ぎで、真っ赤に腫れてる。

こんなに可愛い唇が、いけないんだ。

ゆっくりと唇の輪郭をなぞりながら「他の男なんか見てはいけませんよ。」ジッと見て彼女に頷かせる。

オレは名残惜しいチェギョンと別れ、教室を出たら「貴方!こんなとこまで。ここは部外者は立ち入り禁止ですよ。」食って掛かってくる女教師。

「あっ、チェギョンの先生ですか?私イ・シンと言います。今日から彼女の夫となりましたので、何かあったら保護者の私に連絡を。」営業スマイルで名刺を取り出し、あぜーーんとしている女教師に渡した。

「うちの妻が体の調子が悪いので、あっもう籍はいれたので、不純異性交遊ではありませんよ。では、宜しくお願い致します。」頭を下げその場を離れた。

教室の奥から、チェギョンへの質問が大きく聞こえる。



シン・チェギョン。

10才も離れた許婚は、子供ではなく、一人の女性として私の傍に来た。

おじい様、感謝します。





皆様、こんばんは。

都会では雪が降ったそうですね。

雪道は滑りやすいので、気を付けてくださいね。

コンビニとかスーパーの床はツルツルで滑るので、ちゃんと靴の雪を落として入ってくださいね。

私もコンビニで転んで腰を強打し、3週間かかりました。

足を上げないで引きずるように歩くと、滑る確率が低くなります。

雪国のおばさんからのアドバイスです。

では、おやすみなさい