「わー!ちょっ、ちょっとー!」

「チェギョン」

ドン!

思いっきり、寮の壁に体当たりしてしまった。

ツーッと落ちていく私をガンヒョンが止めた。

「アンバー!」細い木の杖を私に向けた途端、落ちていく私の体が、急激に止まりフワフワと浮いた。

「ガンヒョンー!ありがとうー!」逆さになりながら、地上に降り立とうとした時、目の前の空間が歪みだした。

「えっ?」

白く輝くモノがゆっくりと、歪んだ空間から出てきた。

私は、今まで見たこともないモノを、大きな口を開けっ放しで見ていた。

全て出て来たモノは、白く輝くのも段々消えて私の目の前に白い馬に乗った……全部が白い人・・ううん・・目の瞳だけが黒い。

その白い人は、私の目の前で見下ろしていた。

「確か人間界に来た筈なのに…お前は魔法使いの国の者だな。」白い人はオトコ。

話しながら、白い息が溢れ出して要ると言う事は、氷の国の者。

この世界には、人間界、魔法使いの国、氷の国という3つの種族がある。

人間界と魔法使いの国の気温はさほど変わらず、氷の国は名前の通りに、北の位置にあり皆氷のように白い顔白い瞳に、白い服で過ごしている。

白いオトコは、ジーーっと私の事を見ていたが。

「オイ、お前見えてる。」低い声が響いた。

「えっ?」見えてるって何だろう?

「チェギョン!アンタ早く隠しなさい!」ガンヒョンの慌てた声がキンキン聞こえた。

隠しなさいって、なに?視線は自分の姿を見てしまう。

「!ぎゃーーーー!」ギュッとスカートを引き上げた。

落ちたままの姿勢なので引っくり返っている私のスカートは思いっきり捲れて、このオトコと平気な顔で話しをしていた私。

それに、魔法の国では下着を身に付けないので私のアソコは丸見え。

「見たわねー。」余りの恥かしさに、ジワーっと涙が溢れ出す。

「お前なんかに興味はない。」白い馬の脇腹を靴で叩き、ゆっくりと歩き出す白い馬。

「えっ?」

又、白い馬と白い人は、歪んだ空間に入り込んでいき、私の目の前から消えた。

ガンヒョンは私に近寄り「氷の国のオトコ何しに来たのかしら。又いなくなった。」いなくなった方向を二人で見続けた。











私とガンヒョンは14才になり,人間界で生きていくことに決めた。

魔法の国では、14才なると自分の国で暮らし続けるのか?それとも他の国で暮らすのjか選択できた。

2人で人間界に行ってこの国で教わった魔法や薬草を使って、人々を救ってあげたいと思った。

人間界の人達も、魔法の国には協力的で、学校や住む所兼お仕事をする所を提供してくれる。

私とガンヒョンは、初めて人間界の学校の制服を着た。

魔法の学校では長くて黒いスカートやマントを羽織っていたが、普段は短いスカートだったので、この制服には違和感がなかった。

人間界から提供された年季の入った家は、中々味わいが合って2人共気に入った。

「チェギョン!アンタ,ペンティ履いた?」一緒に暮らすガンヒョンの大きな声。

「ちゃんと履いたよーー!もうーー、子供じゃないんだから言われなくても、履けるよ!」

「履いてればいいのよ。人間界も面倒だねー。」

「こんなの履かないといけないなんて。あー、なんか違和感ーー。」モゾモゾとスカートの裾を動かす

「ほらっ、学校に行く時間だよ。」ガンヒョンは私に鞄を持たせる。

「あーーっ箒に跨っていけば、直ぐなのにーー。」人間界では、日中に放棄に跨ってはいけない事になっている。

「仕方ないの」ガンヒョンは私の手を取り、家を出て学校を目指した。

私とガンヒョンは、本来の姿だと人間界では浮いてしまうので魔法を掛けて黒髪、黒い瞳にしている。

だから、この学校でも自然と溶け込めた。

朝の挨拶をして自分の教室を目指していると。

廊下で、キスをしているカップルがいた。

「わっ!」私の大きな声が響く。

こんな人通りの多い所で、キスしているなんて信じられない!

私の声でキスしていたオトコが唇を離し、私の顔をジロッと見下した。

「・・又、お前か。」呆れた声。

「私こそ言いたいよー。何で何時も何時もアンタのキス見なきゃいけないのよ!」プンプン怒る。

イ・シン。

私を見下ろすデカイオトコ。

夏の間病気を患い、休学していたという。

凄いお金持ちだそうで、何時も色んなオンナが群がっている。

そして毎回違うオンナとキスしているのを見てしまい、口げんかになってしまう。

「もっとキスしましょっ。」キスしていた相手に誘われていたが「もう授業が始まるので。」オンナの子から離れた。

「えーーっ。もっとー。」

「キミはオレが探している相手じゃない。」ジロッと見た後スタスタと歩き出した。

「ちょっとーー!キスしておきながら冷たい態度はどうかなー?」私は置き去りにされたオンナの子が可愛そうで、そいつに噛みついた。

カレの足が止まり、頭をちょっとだけ向け笑う。

「お前には全く関係ない事だ。」

「同じ女として、黙っていられない!」

「・・心配ご無用…ほらっ後見て見ろって。」言われて後ろを見ると、置き去りにされたオンナの子は、泣いているかと思ったら歩いて行ってしまった。

「あれ~~?」

「女子にとって、キスなんて軽いもんだ。」

「キスは大事だもん!」真っ赤になって訴える。

「あははそっかーっ、まだまだお子ちゃまだもんな。」乾いた笑いは、神経を逆なでさせる。

「アンタだって、お子ちゃまでしょーー!」制服の半ズボンを指差す。

「たまたまこの学校がこういう規則なだけだ。」チッと舌打ちを吐き出しながら行ってしまった。

イ・シンが行ってしまって私の肩を叩く人がいた。

「全く―っ、何やってるの?あのオトコといつもギャーッギャーッとうるさいわよ。

私達は静かに暮らさないといけないのよ。」

「ガンヒョンー!だって―っ、アイツ又、違うオンナとキスしてたんだよ。それも堂々と人前でー。」

「いいじゃないキスくらい。好きなだけさせなさい。まっ、私達魔女にとってのキスはとても恐ろしいモノだけどね。」

「だよね!だから、簡単にキスしているアイツが許せない!」

「キス恐いよね。魔法の国では男女がキスしてしまうと、オトコに魂を抜かれてしまうって話だから、此処の人間界でも同じかもしれないから、気を付けないとね。」

私は、パッと口元を隠して頷いた。

「特に、チェギョンの唇はヤバイくらいに可愛いから気を付けなっ」隠している手の甲に、ガンヒョンは指を差す。

「そんな事ないよー、ガンヒョンは綺麗だから、もっと気を付けてーー」フガフガと言った。

「そうそう、さっきのイ・シン。キス魔みたいだから、危険人物にしておいて。」ガンヒョンのメガネが光る。

「アイツ?ナイナイ、さっきも口げんかしたばかりだし、キスなんてされないってー。」アハハハハっと笑う。

「100%なんてありえないんだから,用心はしておいて。」

「判ったわかった、気を付けるね。」私はガンヒョンの腕に自分の腕を絡めて「さーーっ、教室にいっこーー!」バタバタと駆けだした。








夜の12時、私とガンヒョンの魔法は解け、自分達の本来の姿に戻る。

「ヤッホー―っ!箒に乗れるーっ。」人間界の服を脱ぎ捨て、魔女の格好になる。

鏡を見て「やっぱり私この格好が一番しっくりする―。」何度もスカートをひらひらとする。

「ほらっ、遊んでないで!夜にしか咲いてない薬草探しに行くよ。」ガンヒョンに耳を捕まえられながら歩き出した。

「判ったから――、耳離して――!」

出掛けるまでにバタバタとしたが、ガンヒョンと二人箒に跨り「眠れぬ森」と言う名前が付いている森に向かった。

上空に辿り着き、下を見下ろせば。

「わーーー、綺麗ーーー。」ここの森には、夜に花が咲くのが多くそして暗闇の中でも光る花達もあった。

「こんな人も寄って来ない森が夜になると、大変身するって、人間の人達は知らないんだねー。」眠れぬ森の上をグルグルと回る。

「まっ、イイじゃない。人が寄って来ないから森が荒らされずに、上質な薬草が取れるんだから。」ガンヒョンはグイッと箒を下降させていく。

私もガンヒョンに続いて箒を下に向けた。

ガンヒョンの箒はグングン地上に近づき、あともう少しってところで、目の前の空間が歪み始めた。

「えっ?」急な出来事だが、ガンヒョンは上手くかわした。

「チェギョン!又あの」ガンヒョンの声は私には間に合わなかった。

歪んだ空間から、又あの白い馬が現れ、今回は人が二人乗っていた。

「わーーーーーー!どいてどいてーーー。」MAXスピードでぶつかりそうな時、この間の白いオトコは急に手を翳し「ブラックオニキス!」叫んだ。

すると私の体は、何かにぶつかったようにバウンドして止まった。

「キャーっ」体は真っ逆さまに下に落ち。

ドッスーン。

「イタタタっ。オンナの子をこんな目に合わせるなんて、信じられない!」地上に落ちた私は、文句を言いながら立とうとした。

「まったく、お前のを2回も見てしまうなんて。」呆れた声が上から聞こえてくる。

「チェギョン!又、見えてるって!」箒にまたがったガンヒョンが私の元に降りてきて、スカートをあげた。

「ギャー!」慌てて体を起こして、スカートをぎゅーっと引っ張った。

「何々、シンお前こんな子供の見たのかよー?それも魔法使いの子供か。」白いオトコの後ろから、もう一人のオトコが嫌味を言う。

そのオトコは、つぶらな瞳をしていたが、やはり全部白。

瞳まで白、氷の国は皆そうなってると聞いていたので、2回あったオトコの黒い瞳の色にやはり驚く。

「その瞳って誰かに似てる。」ボーッと見て思った事を言ってしまった。

「お前みたいな子供が、氷の国の王子に気安く声かけるなんて、捕まるぞ!」

「子供じゃないし!魔法の国だと、14才は大人なんだからね!」立ち上がって、仁王立ちになり怒る。

「おっ!ペター―っとした体じゃないんだな。」つぶらな瞳の男は、口笛を吹く。

「変な目で見るのは止めなさいよ。って言うか、アンタ王子様だったんだ、だから瞳だけ深い深い色をしている。」馬から見下ろしていた王子様は,馬から降り地上に立った。

「お前その言い方と色は違うが、その瞳似ている奴がいる。」ボソッと言う声は聞こえずらい。

「魔法の国のオンナとはまだした事がないな。」黒い瞳にジーーーッと見つめられ、私の体は動けなくなってしまった。

「ちょっ、ちょっとー―っ体が動かない――!」言葉ではジタバタしているが、体は1ミリも動かない。

私の体の傍まで来て、顔をゆっくりと覗き込んでいると、カレの口元から白い息が溢れ出す。

「冷たい。」ジタバタ暴れていた言葉が止まる。

「氷の国の者は皆体が冷たい。」寂しそうに言う王子様

「王子様、身体だけ冷たいの?心は大丈夫?私達の作る薬草で治せるなら。」急に寂しそうに言うカレに、私の母性本能が疼き出す。

突然、私と王子の間に、魔法の箒をグイッと差し込まれた。

「うちのチェギョンに、何をする気?」ガンヒョンのドスの効いた声が響く。

「何も。」すっと私から離れていく。

「私達は人間界で静かに暮らしていたいの。氷の国の者とは、仲良くなる予定はございません。」礼儀正しくお辞儀しながらガンヒョンは伝えた。

「ヒューッ、カッコイイー。俺さー、氷の国のギョンって言うだけど、堅いことは言わずに宜しくやろうぜ。」ガンヒョンの肩に手を置こうとしたら、避けられた。

「ふん!気安く触るな。」ペッペッと肩の埃を落とした。

「キミ、名前なんていうの?」それでも怯まないオトコ

ツーンと知らないふりをすガンヒョン。

ガンヒョンの周りをバタバタと歩き回る氷の国のオトコに、笑ってしまった。

「魔法の国では、14才が大人の仲間入りかーっ。そして、これからのことも自分で決められるのか、羨ましな。オレなんか王子以外の選択肢はないからな。」又もや寂しく笑う。

「王子様は、王子以外ダメなの?」

「あぁ。」溜息とも返事とも判らない言葉は白い息と混ざる。

「王子様は違うのになりたいの?」

「人間界に来て分かったことが、此処には色々な色に囲まれていて、皆、綺麗に輝き眩しい。

オレの暮らす氷の国には、色がなく冷く寒い。

こんな世界の中で暮らしていけたら、毎日が楽しいんだろうなー。」悲しそう、白い溜息がでている。

「だったら、王子様辞めちゃえば?」簡単に言う私をビックリして見る。

「簡単に言うな。国民の期待を受けオレはここに使命を果たしにきてるんだ。何にも知らない魔法の国の者が言うな!」

「王子様怒ったの?」私が追いつこうとしても、王子様は白い馬に乗り、「アルフレッド!」冷たい声を発しながらわき腹を叩いた。

白い馬は声を上げながら前足を軽く上げて、進み歪んだ空間を発生させた。

「王子様!ちょっちょっと―待って――!」止める言葉も聞こえず、白い馬と王子様は歪んだ空間に吸い込まれていった
  
「行っちゃった。」歪んだ空間も消え、さっきまで白い馬と人がいたなんて嘘のように、静まり返っていた。

「えっ?オイ!王子は何処に?」ガンヒョンにちょっかいを出していたもう一人の氷の国の人は、大慌てで辺りを見渡すが。

「おーーーい、王子ーーー!俺を置いて行ったな―――!」王子様と一緒に来た筈なのに、置いて行かれてしまった氷の国の人を、私とガンヒョンはこの人どうする?と目で言い合っていた。






皆様、こんばんは。

またもやお伽噺です。そして、又途中で終わります。【汗)

久々に読むと、よく考えれるなーと感心してしまいます。

2話しかありませんが、お付き合いください。

おやすみなさい。