木から落ちた彼女を抱上げて、気を失っているのを確認した。

そして今オレの目の前には、ギューッギューッと押し込まれている胸がある。

目がそこだけに集中してしまい、オレの息が荒くなってきた。

そして彼女から漂ってくる、甘い香りはどこかで嗅いだことがある。

その香りの元を知ろうと顔を近づけた。

鼻を移動させて嗅いでいると、どうやら全体から香っている。

そして服の奥からはもっと濃厚な香りが漂っていた。

ヤバイ!

昨日と同じのが始まってしまう。

今の状況を考えろって!自分の下半身を怒った。

とにかく、彼女は息をしているから、楽にさせないと。

留学先でそれなりに医学のことは学んで、教授にも褒められてきたのに、生身の体だって見てきたのに、この女の体を見て触っただけで、おかしくなる。

全くこの年で夜遊びにも行かず、勉強ばっかりしてきて、何事にも冷静に対応してきたオレに、皆は氷の王子と名を付けて呼んでいた。

彼女の胸元に手を当て、ゆっくり紐を緩める為に引っ張った。

1本1本解いてあげるたびに、抑え込まれていた彼女の胸元が現れ、柔らかそうな白い膨らみが見え始めて来た。

ゴクっ。

この静かな森に響いてしまったと思うくらいの、生唾を飲む音。

唯の胸だ。

ばあやのデカイ胸と同じ。

母や、留学先でやたらと媚びて来た女達と同じ胸だ。

しっかりしろ!氷の皇子!

気を取り直して外していく紐は、全て外れ彼女の胸元は楽になりゆっくりと、胸たちは動いた。

ちゃんと生きてる。

ホッとしたのもつかの間、この服を脱がせないと。

背中もギューッギューッと絞っている服はまさにキツイ。

背中の紐を外そうとしたら。

「うぅ。」彼女の目がゆっくりと開いたが、状況が判らずボーっとしていた。

急に目覚めてしまった彼女に知られたくなく、ゆっくりと体から離れようとしたら。

「えー?どうして?」慌てて起き上がり、外の空気に触れて、ギュっと頑なった胸元を慌てて隠したが、隙間から中が見え、オレを誘っているように見え、そっちの方がそそる。

キッと睨まれながら「どうして、こんな風になってるんですか?」紐を穴に慌てて通しているので、綺麗に出きず、絡んできた。

「もぉっ!」早く胸を隠したいのに、慌てるほど絡んでいく。

「貸せ。」見てられなくなったオレは、彼女の指先に触った。

「触らないでください!」体全身で嫌がるが「手をどけろ。」凄みのある声をワザとだしたら大人しくなった。

「紐を通してやるだけだ。」オレの言葉に仕方なく従う彼女の顔はちょっと怒っていて可愛い。

彼女の胸元に堂々と触れる権利を得たオレは、ゆっくりと紐を直しながら、一本一本穴に通していく。

この広い森の中に、二人だけ。

枯葉の上に座り込んだ二人は向い合いながら黙っていたが。

「・・どうして私の名前知ってるんですか?」彼女の声が聞こえた。

「皇太子に頼まれたんだ。1000人を招待したのに、1人だけ断られた。どんな女なのか調べてきてほしいと。」

理由はあっている。

でも、オレは咄嗟に嘘をついてしまった。皇族は嘘をついてはいけないと育てられてきたのに。

その規則を破ってでも、彼女の傍に少しでも長く一緒に居たかったから。

「本当ですか?」疑いの目は間だ晴れない。

最後の穴に紐を通し「良し!出来たぞ。」出来具合いをジロジロと見た。

彼女は、胸元を隠しながら「見過ぎです」隠した。

「チッ。」舌を鳴らして横を向いた。

「後もう一つ、何で貴方の腕の中にいて、そして紐取れてたんですか?」ジーーっと睨んでいる。

「お前が、木から落ちたからだ。胸元がきつそうでちゃんと服を楽にして、呼吸しやすいようにしないといけなかったからだ、」彼女の睨みに負けないように、真面目な顔で答えた。

「ふ~~~ん。怪しいでも。自分も木から落ちていったことは、憶えているから。

今回は何もなかったことにします。では、服を楽にしてくださりありがとうございました。」スカートの裾を広げて、優雅にお辞儀をした。

「まだ終わってないって。最後の一人を舞踏会に連れて来て欲しいと皇子に頼まれた。」

「舞踏会?断ったはずですが?」

「なぜ断る?王子に会いたくて、999人は来ると言っているのに。」

「だって毎日仕事が忙しくて、疲れて寝ちゃうんです。だから夜に出掛けるなんて無理。」

「えっ?そんな理由で断るのか。」

「あの家に置いて貰う為には、働かないといけないんです。」キッと怒った顔

「そっかー。」

「だから、舞踏会なんて出れないって王子様に伝えてください。」彼女は今度こそ行こうと歩き出した。

オレはどうにかして彼女に来て貰いたく「舞踏会に出席しろ。」

「何でですか?何であなたに命令されないと。」

「舞踏会に行くと、色んなデザインの服が見れるぞ。女性は服が大好きだろう?流行りのモノからオーソドックスなドレス。

そして、食べ物飲み物も色んなものが出る。」彼女に来て貰いたくて、普段こんな事言った事なんかないのに。

「本当は私だって、見に行きたい、でも、私ドレスなんか持ってないから、そんな所に行けないんです。」辛そうな顔。

「それはすまない。そっかーっじゃあ。城に行ってお前のドレス作るか?」すまなそうな顔をしていたのに、良い案を思いついた。

「ドレスを作るって?」

「今日の夜、皆が寝静まった頃家を脱け出し、お前の為のドレスを作ろう。もちろんオレも手伝う。もちろん2人だけじゃ作れないから、衣装部から5人選抜しておく。」意地悪くニヤッと笑った。

「そんな夢みたいな事、出来るわけない。」

「オレに任せておけ!王子に頼み込んで準備させておく。」又ニヤッと笑った。

「本当に?本当に、ドレス作っても良いの?」真剣な顔でオレに近く。

「オレは、嘘をつかない。ちゃんと夜に迎えに来るから。」ジーっと彼女の目を見る。

「家から出て、街で洋服屋さんをやるのがずーっと夢だったの。

ドレスが作れるなんて、夢みたいーー!それも国一の衣装部だから、高級生地なんて使わせてもらえるの?」彼女の頬はピンクに染まり目はキラキラと輝き始めた。

「じゃあ、服作れるのか?」

「任せて。家の服は皆私が縫ってるの。今まで考えたデザイン画とか選ばなくっちゃ。

人も5人なんていらない、私と貴方と後二人くらいで十分!」パタパタし始める。

「舞踊会には出るのか?」

「はい!ドレスが作れるのなら!もう帰って仕事片付けないと――」彼女はさっきまでの流儀をせずに、慌てて家に向かって走りだした。

「おい!木から落ちたから走るなーー!」

「平気―――!」その声は段々小さくなり、見えなくなった。

全く木から落ちてもあんなに走れるなんて、まるで猫みたいだな。

オレは口笛を吹いて、愛馬アルフレットを呼びつけた。

オレの大切なアルフレットはオレの口笛を聞き分け、あっという間に駆けつけた。

アルフレットの顔を撫でてあげながら「さっきまで、気になる女の子と一緒だったんだ。他の子達と違い、キラキラと眩しかった。」慣れた手付きで愛馬に跨り、城へ駆け出した。






夜になり、コン秘書を呼んだ。

「私が頼んでいた事は準備できましたか?」何時もの上質な服から庶民用の服に着替え始めた。

「はい、王子様の言いつけどおりにしております。」長年オレに従えてくれている彼は、信用出来る。

「じゃあ、行ってきます。父上が何か言ってきたら、上手くかわしてください。」オレは服を着替え、又あの扉からシン・チェギョンの元に向かった。





夜なので松明を持ち、速度を遅くして進む。

早くあの子に会いたいのに、暗闇はその想いを妨げる。

慎重にアルフレットの足元に気を付けながら進んでいくと、あの屋敷が見えた。

馬の蹄の音で気が付かれない様に、離れたところにアルフレットを紐で繋いだ。

静かに向かう道に、1階に小さな灯りが灯っているのが見えた。

そう言えば、どうやって知らせるか言ってなかった。

屋敷に辿り着き、灯りの点いている窓ガラスからゆっくりと中を除くと、暖炉の中を掃除している彼女がいた。

こんな時間まで、仕事しているのか!?

周りに誰もいないのを確認して,小さく窓ガラスを叩いた。

ハッとする彼女は、窓ガラスにオレの姿を見つけ近寄って来た。

「本当に来てくれた、」嬉しそうに微笑む彼女の頬には,灰が所処付いている。

オレと年は変わらない筈なのに、こんな時間まで働かされている。

「迎えに来た。何時もこんなに遅くまで仕事しているのか?」

「今日は,ちょっと遅く家に戻ったから怒られちゃって。」苦笑いする。

「オレのせいだな。」今日オレと会っていたからか。

オレの心臓がギュッと痛くなった。

「そんな事ない、私の仕事が遅くなっただけなの。つい、ドレスの事ばかり考えて居て、手が止まっていたの。」慌てて訂正する。

2人の間に沈黙の時間が流れた。

「仕事終わったか?」ようやくオレの口が開いた。

「うん、終わった。」

「朝方までには戻らないといけないから、行くぞ。」

「うん、わかった。」彼女は玄関から行こうとしたのを止めた。

「廻っている時間が勿体ない。此処から降りろ。」オレは彼女に向けて両手を差し出した。

「えっ?ここから?」

「そうだ、早くしろ。」戸惑う彼女にオレの眉間の皺が寄る。

「もう、強引だなー。」彼女は窓際に手を突き、ヒョイっとオレの手に向かって飛び込んできた。

しっかりと腰を受け止めて、彼女を抱き留めた。

細い。何でこんなに細いんだ。

昼に漂っていた香りに灰の匂いも混ざっていた。

ギュッと思わず抱きしめてしまった。

同い年ぐらいなのに、辛い仕事をさせられ、毎日泣いてるはずだ。

オレはただ抱きしめてあげることしかできなかった。

「もしもしー、キツイんですけどー。」ドンドンと、背中を叩かれた。

「アッ!すまない。」パッと彼女から離れた。

気まづい雰囲気が流れ、オレは彼女の目と合わせれなかった。

「早く行かないと、ドレス遅くなるんですけどーー?」

「!!」そうだった、早く行って舞踊会用のドレスを縫わないと。

オレは、ガシッと彼女の手を掴み、ズンズンと進んだ。

「ちょっちょっとーー、痛いよーー。」彼女の声も聞こえず、繋がれた小さな細い手を離したくないと願っていた。

ズンズンと歩いてると、松明の灯りの元にアルフレットが見えた。

「わーーーっ、綺麗な馬。」傍に寄りアルフレットの顔を撫でてやる。

「名前は何て言うの?」

「アルフレット、オレの親友だ。」オレもアルフレットの顔を撫でてやる。

「フフッ、アルフレットも喜んでいるよ。それに本当に毛並みも綺麗。貴方ここら辺だと見かけない。」

「オレの誕生日祝いで、父上が異国から連れて来た。フリージアンと言う種類だそうだ。」

「黒い。なんか違う。」

「青い色だそうだ。まっ黒が強いけどな。」

「とてもお利口さん、今日は私を乗せてくれるのね、宜しくーー。」顔にキスをしていた。

羨ましい。ジロッとアルフレッドを睨んだ。

「ほらっ、さっさと乗る。」彼女が乗るを手助けしてあげようとしたのに、軽々と一人で乗ってしまった。

「オイ。紳士の役目やらせろよ。」彼女の事も睨む。

「もーーっ、早くしてーー!ドレス作りたいんですから――!」松明に照らされた顔は興奮しているみたいだ。

ちょっとだけ、彼女との二人乗りを、良い雰囲気に持って行ければいいなーと思っていたのに、その想いは砕かれ、真面目にお城まで行かないといけなかった。それも超早っで。

「じゃあ、しっかり掴まってろよ。」松明を高く掲げ、オレはアルフレッドのお腹を鐙で叩いた。

走れと命じられたアルフレッドは、松明の灯りと共に、上手く城までの道のりを進んでいく。

「すっごいわーー!アルフレッドーー!貴方人を二人も乗せて軽やかに走れるのねーー!」嬉しそうに目を輝きながら、チェギョンは言う。

可愛い。経った2日しか経っていないのに、彼女の事が可愛くて仕方ない。

軽いキモチじゃない!

このままず――っとオレの元に居て欲しい。

アルフレッドに乗った2人のキモチは、今は全く違う。

彼女は王子なんか興味はなく、良い生地で自分の好みでドレスを作れるという好奇心。

オレは、下心がありありで彼女と少しでもお近づきになりたい、ただの年頃のオトコ。

この2人のキモチが、少しでも交わってくれるのを、祈る。

オレの秘密の抜け道を通り、ようやく城が見えて来た。

「わーーーっ、すごいーー。白くて綺麗なお城ですーー!オレに聞こえる様にデカい声で言う。

又、この声も可愛い。

偽の通行証を門番に見せると、この大きな扉がゆっくりと開いていく。

「薬屋のシンだな。何時もご苦労だな。」

「ああ・・今日は夜遅くに開けてくれてありがとう、頼まれていた薬が来たので、朝を待てずに来た。」ワザとらしく笑う。

「そっかー、お疲れさん。そっちの子は?スッゲー可愛い子じゃないか!?」暗くてよく見えなかったので、松明を大きく上げた。

「オレの妹なんだ。お城を見て見たいって言うから、仕事終わってから連れて来た。いいだろう?」裾から小銭の袋を渡す。

袋は門番へ渡り、オレ達は堂々と中に入って行けた。

アルフレッドを馬小屋に連れて行ってやり、食事と水を飲ませる。

彼女は一生懸命、アルフレッドに感謝を述べていた。

「オイオイ、もう行くぞ!」余りの長さに待っているのも飽きたので、呼びつけた。

「あっ!行きますーー!」慌ててオレの後を付いて来る彼女とオレの歩幅が合わずに、ドンドン離れて行く。

「待って―待ってよーー!」彼女の声にオレの足が止まる。

ジロッと見つめ「早くしないと、ドレスできないぞ。」言った後、意地悪く笑う。

「わっ!意地悪な顔ーー。」ムッとしながらも駆け足でオレの元にたどり着き、見上げた。

なんて可愛い目なんだ。

「ねえ?ボーっとしてるけど大丈夫?」腕をツンツンとされた。

ハッと気が付いて「だっ、大丈夫だ!行くぞ。」ヤバイ見惚れてた、この事がバレないように慌てて歩き、又彼女に呼び止められた。

「もうーー、迷子になるでしょう!」仕方ない、この方法をするか彼女の手をガシッと掴みズンズン歩き始めた。

「えっ?」戸惑う彼女を無視して歩く。

後ろでギャーッ、ギャーッと叫んでいるが、知らない振りで歩き続けて、ようやくある部屋についた。

オレが彼女をドアの目の前に置き、ゆっくりとドアを開けた。

「わぁ。」余りの驚きに言葉が出ないようだ。

「凄い。こんなに素晴らしい生地がいっぱい。」涙ぐむ彼女。

「何泣いてるんだ?時間無いぞ。」グイグイと引っ張って中に入って行くと。

女性が二人立って迎えていた。

「今夜は無理を言ってしまって、すまない。」チェにはコン秘書を通して、皇太子と言うのを隠すようにと連絡してある。

「大丈夫です。私も少々裁縫には自信があります。後、衣装部一番の御針子ガンヒョンを残しておきました。」

チェの隣には頭を下げる綺麗な女。

全くチェといい、このガンヒョンと言う女、二人とも顔が綺麗過ぎるな。

でもオレは、やっぱ可愛いチェギョンが1番良い!何度も頷く。

「今日は短時間のうちにシン・チェギョンさんのドレスを仕上げないといけません。さーー、やりますよ。」

チェとガンヒョンは、チェギョンのドレスを脱がせ始めた。

「何するんですかーー!?」慌てて隠すチェギョン。オレの目線はビックリしながらも、目が離せなかった。

「ドレスの寸法測るんです。さー、腕を上げて下さい。」

この言葉を最期に、3人のオンナ達はドレス作りに夢中になっていた。

オレは、要望に答えれる様に周りに控え、色んな道具色んな生地を運んで行った。

皇太子以外の仕事をするなんて、初めてだった。

何時もだったら、全ての物はオレの手元に自然に置いて行かれているのに、今はその逆の立場。

その人が要望したことを、その人の下に置きに行く。

今までの当り前なことが、こんなに大変だったなんて知らなかった。

バタバタと生地を運んでいると、一生懸命縫い物をしているチェギョンの顔に、見とれてしまった。

初めて会った日。

初冬の寒い日、川で洗濯をしている彼女の顔には,生気がなかった。

寒かったせいもあるが、ただその仕事をこなしているという青白い顔。

それがいま目の前にいる彼女の顔はキラキラと輝き、手はすごい速さで生地を行き来している。

その真剣なまなざしにオレの心臓は高鳴る。

チェギョン、オレがどんなキモチでお前の事見ているのか、分からないだろうな。

もし、オレのキモチを知ってしまったら、どうする?

「すみませんーー!ここの作業終わったので、片づけお願いします!」ガンヒョンと言う名の女が叫ぶ。

「あっ任せろ。」動きにだいぶ慣れたオレは、あっと言う間に片付けた。







外が明るくなり始めた頃、ドレスは出来上がった。

「出来た――!」

皆疲労感が出ているけど、顔は満足感たっぷりで、見ているオレまで笑ってしまいそうだ。

「出来ましたねー。これを今日の舞踊会に着て行くのですね?」

「えっ?そっかー、舞踊会って今日だったけ、面倒だな。」

「は?出る為に頑張ったんだろう?行かないなんて、有り得ない」彼女をジロッと睨む。

「そんな理由だった?それより、もう帰らないと。お屋敷のお仕事しないといけないの。」ドレスを持ったままオレを見上げる。

「判ってるって、ドレスを袋に入れろ。本当は箱に入れていきたいけど、アルフレッドには無理だからな。」

「家までの送りお願いします。」彼女は綺麗にお辞儀をした。

チェとガンヒョンに、沢山の御礼と又会える約束をして彼女はこの城を出た。










朝靄が立ち込める彼女の屋敷に着いた。

彼女とドレスを下ろし「今日は夜通しで仕事したんだから、ちゃんと休めよ。」

「無理。今からかまどに火を入れて朝ご飯の準備しないといけないの。

あっ!王子様に言っておいてね。今回の事は本当に有難うございました。それに貴方も有難うございました!
いっぱいいっぱい、手伝ってもらった。本当に有難うございました。」深々と頭を下げる。

「何急に!?」照れ隠しに鞍に下げておいた入れ物から物を出した。

「オレの母上の形見なんだ。もし足のサイズが合ったら、履いてきてくれないか?」

オレの手にはキラキラ光るガラスの靴が乗っていた。

「えっ?こんな高いもの履けないよ。」彼女は困ったように、オレに手を横に振った。

「履けたらの話なんだから、履く前から躊躇するな。」オレは彼女のオデコをビシッと叩き、しゃがんで彼女の足がガラスの靴に入るのを、待った。

小さな決心をしたチェギョンは,ユックリとガラスの靴に右足を差し入れた。

彼女の足は、オレよりもはるかに小さく、この小ささであの仕事量をこなしていたなんて・・テキパキと動き回る彼女の姿を思い浮かべ、しんみりなる。

「わっ、はいっちゃった!」その言葉にオレは嬉しくなり「ちょっと爪先が緩いけど、大丈夫な大きさだよ!」白い足に似合うガラスの靴は、ますます輝いて見えた。

「じゃあ、それはもうお前のモンだ。」

オレは、アルフレッドに跨り「じゃあな。今日の舞踊会には必ず来いよ。招待した家には城から迎えが来るから、とにかくドレス着て靴履いて城に来い!」その言葉を言いながらも、アルフレッドを走らせた。

あっという間にチェギョンの屋敷を離れ、今日の舞踊会での彼女との踊りを楽しみにしているオレだった。













「チェギョン、今から町に行って今日の舞踊会ようの首飾り買いに行くわよ。」お母様が仕事をしている私に言いに来た。

珍しい何時もはヒョリンおねー様としか出掛けないのに。

「ほらっ、行くわよ。」

無理矢理馬車に乗せられ、町に行かされた私は、今宝石店の前にいる。

「チェギョン、ここはあるお方がやっているこの国で一番の宝石店なのよ。」中に入って行くと。

「お待ちしてました。」フッと顔を見上げると、優しい顔の男の人が立っていた。

「シン家のお嬢様に、こんなカワイイ人がいたなんて!」明るい髪の笑顔が素敵な男の人。

私は何時ものボロイ恰好ではなく、たまないしか着れないお出掛け用の服を着ていたが育ちの良さそうな人の前では、この格好はちょっと恥かしかった。

「ヒョリンの他に、シン・チェギョン。前の人の子です。」

「そうですか…、じゃあ私がこの子を貰っておきましょう。」ニコニコと笑う顔は、ちょっと怖い位だったが?今何か変な事言っていたような。

「お気に召して頂きましたか?良かったわ、これで従兄弟の王子様にはヒョリンの事を宜しくお願い致します。」

「はい、お任せ下さい。王子のシンは,私の言う事はよくきいてくれるので、ヒョリンさんの事も聞き入れてくれるでしょう。」ニコニコとゆっくりと私に近づいて来る

私の手を取り「あーっ、痛々しい手だ。ボクの所に来ると、こんな思いはさせないからね。」私の手をユックリと触る。

ゾクゾクと嫌悪感が走る。

なんか、この男嫌だ。

「ボクのところって?」男の人の手から、パッと逃れた私の手。

でも、又私の手を掴み「ボクのお嫁さんになるんだよ。キミは可愛いそれに処女だって言うから、ボクは処女が大好物なんだ。男を知らない女をボク好みに変えていくのは、最高に楽しい。」ギリギリと私の手を握り締める。

「ボクの名は、イ・ユルと言う。シン・チェギョン、今日の夕方からボク達の結婚式が始まる。一旦家に帰って、綺麗にしておいで。」

怪しい表情に私は嫌がり、お母様に助けて貰おうとしたが

「ユル様、今日の舞踊会用に宝石を頂けるとか?」物色しているお母様

「お母様!」大きな声で叫んでも

「チェギョン、ユル様はヒョリンを王子の妃に推薦してくれる代わりに、お前が欲しいそうだ。姉の為にユル様に嫁いでおくれ。」

ユルと言われた人の良さそうなニッコリと笑う顔に、私はますます恐怖を覚えた。

どうしよう。

結婚の話は本当の話なの?

今日はお城の舞踊会の為に、徹夜して作ったドレスにガラスの靴を履いて行くのに。

だって、あの人が絶対に来いって言っていたのだから。

チェさん、ガンヒョンさん、あの人、4人で頑張ったドレスを無駄にする事なんか出来ない!!

それに結婚なんか!結婚なんか考えてないって!

私には、家を出て小さな洋服屋さんを出す。と言う夢があるんだから。

ギュッと手を握り締めた。






皆様、お久しぶりです。

11月の末頃から、嫌なことが三回続いてしまって、更新出来なくなっていました。

で、今日ようやくアップ出来るようになりました。

一か月放置してしまい、すみませんでした。

アップしたばかりなのに、灰被り姫は途中で終わりです。

お伽噺は挫折した話ばかりです(笑)

では、ねむいのでおやすみなさい。