「シン君、ただいまーーー!体大丈夫だった?何度も、シン君にラインしたんだけど返ってこなくて心配したよ。」

職務室に急に駆け込んできたチェギョン。

突然の登場に、学校は!?フッと時計を見ると、4時手前だった。

何時もなら、友達たちと騒いでいてオレが迎えに行かないと、帰らなかったのに。

チラッと彼女を見ると、心配そうに見下ろしている。

並んで立っていると何時も見下ろすのはオレなのに、今日は机に座っているから立場が逆だった。

下から見上げる彼女の姿。

唇に目が行ってしまう。

ボーーっと唇を見ていると、何かを言っているみたいで、唇はゆっくりと動く。

ピンクに輝き、口の動きで、閉じたり開いたりとんがったり。

唇から目が離せなくなってしまう。

チェギョンが、欲しかった

オレだけのモノにしたかった。

オレが触れる事を許されていない所は、オレを誘いまくる。

でも、それは許されない。

彼女の心は、オレの元から離れて、嫌元々彼女の心はオレなんかに向いてなかった。

ジーっと彼女の事を見上げていたが、ガタンッと言う音が職務室に響いた。

急に立ち上がったオレは、何時も通りに彼女を見下ろし「オレの事は良いから、今日の妃教育を進めてくれ。」冷たい言葉を彼女に言う。

「シン君の事が心配で慌てて帰ってきたんだよ。」見上げる彼女の目に映る自分の姿。

無表情の顔が映る。

さすが、皇太子で鍛えた表情。

このまま彼女には、オレの感情は見せてはいけない。

何があっても、この表情を通さないといけない。

「そういう感情はいらない。お前は2年間妻を演じてくれれば良い。」彼女の顔をしっかりと見つめて言った。

「えっ?シン君?」戸惑う彼女を残して、オレはコン内官を引き連れて、この部屋を出た。

「殿下、妃宮様は一生懸命殿下の事を看病されておりました。」部屋を出て、何も言わずに立っているオレに、コン内官は優しい声で伝えてくれた。

手に持っていたファイルを、ギュッと握り締める。

もう決めたんだ。

「コン内官、このファイルを貴方に預けます。内密にこの事を進めて欲しい。」

軽いファイルはオレの手から離れて、コン内官に手渡された。

コン内官は、ファイルを開いて目を見開いた。

オレはコン内官を見ずに、「絶対に誰にも漏れないように注意は怠らずに。」

「殿下!」

「異議があっても、皇太子の私の意見に貴方は従わなければならない。」淡々と伝える言葉。

「・・・殿下。」ガックリと肩を落とすコン内官。

「コン内官、何時も我侭を言ってしまい申し訳ないです。小さい時からオレの傍にいてくれた貴方にしか、これは頼めないんです。」

「殿下はそれで、宜しいのですか?」

「・・・・・。」無表情を通す。

もう何も聞かない。

身体の向きを変えて、一歩足を踏み出した。

もう動き出したんだ、後戻りは出来ない。









夕食の途中で、シン君が立ち上がった。

お粥だけなのに、半分も残していた。

「シン君!まだ残っているよ!」

「大丈夫だ。」コン内官を従え、歩き出す。

「シン君、食事は大事だよ。ようやく起きれたのに、あまりいっぱい食べるのもダメだけど。」

「食欲がない。」その言葉を残して、この部屋を出て行った。

広いテーブルに一人取り残された私。

ついこの間まで、このテーブルは笑い声が溢れていた。

綺麗な食事マナーのシン君をからかったり、美味しいご飯を褒めちぎったり。

最初の頃、黙々と食べていたシン君も笑って食事をするようになり

毎日のここでの楽しい食事、親から離れて寂しい私の傍にシン君はずっといてくれた。

シン君が退室してしまい、女官のおねーさんと私の二人きり。

シーーンとした部屋に、フォークの刺す音が響く。

「・・・おねーさん。」

「はい。妃宮様。」

「シン君は、私が来るまでこの広いテーブルで一人ぼっちで食べていたんですよね?」

「はい。私もまだ2年目なのでそれ以前の事は判りませんが。一言も言葉を出さずに笑って食べる事はなかったです。」

ギュッと心臓が潰れそうになる。

婚姻するまでシン君に興味がなかった私は、無表情のカレしか見たことがなかった。

高校生でも皇太子だね。

完璧な皇太子やっているのも、楽じゃないだろうなって軽く考えていた。

皿の上のサーモンのカルパッチョをジーーっと見ていたら、涙が出始めてきた。

「妃宮様!如何なされました?」慌てて近寄るおねーさん。

「大丈夫、何でもないから。」無理に笑う。

「妃宮様。」近寄ろうとした足はドアが開く音と共に止まり、チェ尚官が女官を引き連れて中に入って来た。

「妃宮様!何かあったのですか?」泣いている私に近寄ってくる。

「何でもないです。」無理に笑ったが、引きつった顔になる。

傍にいた女官が、チェ尚官に耳打ちをしていた。

話を聞いて溜息を吐く。

「こういう事を言ってしまうのは、皇太子殿下の元に勤める者としては失格でしょうが。」

「チェ尚官さん?」

「10年程ここに勤めておりますが、皇太子殿下はご自分の感情を表に出さないお方でした。でも、妃宮様を迎えてからは人が変わられて。

妃宮様がお喜びになることなら、進んで改善していく。

お食事も出来るだけ妃宮様とご一緒にとられるようにと、公務の時間をずらして貰ったり、どうしてもご一緒できない場合は、私達の人数を増やして妃宮様が寂しくなられないようにと、忠告されて行きました。

妃宮様とは許婚での婚姻でしたが、皇太子殿下は毎日笑うようになりました。」

チェ尚官は、ジーっと私を見つめて「これ以上言うのは、皇太子殿下の意に反すると思うので。」

「えっ!?何ですか?」涙を拭きながら問いただす。

「さっ、妃宮様お食事を続けて下さい。」綺麗な顔が優しく告げる。

「もう、シン君の事おしえてくれないの?」すがるように見つめても。

チェ尚官は、無表情のまま控えめに立っている。

仕方なく私は食事を始めた。

夜になってもシン君の姿は現れずに、私はシン君の部屋の前で待っていた。

椅子に座って、ボーーっと待っていると吐く息が白く広がっていく

寒い。

ペラペラのネグリジェは今日も凄くて、ピンクのガウンを着ていても寒かった。

膝を立てて、腕を回して暖かくしようとしても、中々暖まらない。

ちょっと前まで、シン君のベットで二人温めあって寝ていたのが、懐かしい。

又、一緒に寝ようよ、そうすると又仲良くなれるよね。

ギュッと寒い体を温めていると、外の方が騒がしくなった。

「シン君が帰って来た!」慌てて立ち上がり、こっちに向かってくる足音を待った。

シン君の指示しながら歩いてくる姿が見えるようになり、頬が熱くなるのが判った。

カツンッ、カツンッ・・・、靴の音が止まる。

カレの事を見上げて待っていた私を、驚いた目で見るシン君。

「シン君、待ってた。」カレに近寄ろうとしたら「そんな姿で、歩き回るな!」強い口調がこの廊下に響く。

「えっ?」

シン君の冷たい目が私を見下ろす。

ポン!こんな時にラインの音がガウンのポケットから聞こえた。

私の手は、こんな状況なのに、無意識にポケットから取り出し、表示を見ると

「・・・オッパ。」小さい声はこの廊下に響く

シン君の顔が歪む。

私は慌ててスマホをポケットに入れて、シン君を見たら、カレは自分の部屋に入って行った。

「あっ!シン君!待って!」ドアに手を掛けたら、ドアノブは頑なに動かない。

「えっ?鍵?なんで?今まで掛けた事なかったのに。何でー?」段々声が高くなる。

「妃宮様、もう寒いので、ご自分のお部屋に戻られた方が良いかと。」コン内官さんが優しく言う。

「嫌です!ようやく起きたら、シン君の態度が変わってしまって、ちゃんと話したい。」

「妃宮様。」コン内官は辛そうに私の名前を呼んだ。

「コン内官、良いでしょ?シン君がここを開けてくれるまで、居座る。」

「お風邪を引きます。」

二人で睨みあい、嫌、コン内官は何時もの優しい顔で私を見つめている。

「分かりました。」トボトボと向かいの自分の部屋に入っていった。






次の日。

シン君は学校に登校する。

制服に着替えて自分の部屋から出てきた。

カバンを背負って、カレの事を待っていた私は、嬉しくてカレに近寄った。

「シン君!おはよーー!今日から学校に行くんだね。」嬉しくて、ニコニコ顔が止まらない。

カレはチロッと私を見ても歩きを止めなかった。

「シン君!」私は慌ててカレの後を小走りでついて行く。

「ねーーっ、意識が戻ってから何か変だよ、どうしたの?ねーっシン君!」

後部座席の扉が開いていた所にカレは優雅に座る。

後をついていた私は、慌てて自分の乗る方に向かって、走った。

ゆっくりと学校に向かう車は、誰も話しをせずに、居心地が悪い。

私はカレに向かって又同じ事を聞いた。

「ねーっ、なんで・・・」その途中でラインが鳴った。

表示を見るとオッパだった。

「あっ!」忘れてた。昨日も着ていたのに、返信するの忘れてた。

だって、シン君の事で、いっぱいいっぱいだったから。

返信しようかと思っていたが「気にしないで、やればいい。」ポツリと呟き、スマホにイヤフォンをつけて、曲を聴き始めた。

「シン君。」スマホを握り締め、オッパに返信するのも忘れて、態度が違い過ぎるカレの事をチラチラと見続けた。





皆様、こんばんは。

お久しぶりです。ずーっと携帯のケースをネットで探していました。

グレーのレザーにしようと探していたらキャメル色も良いなー、黒も良いなーと何時までも決めれないで、結局まだ決めてません。

これから時間の許す限り、又検索しに行きます。笑

では、おやすみなさい。