毎日、目立たぬように過ごす。これが私の学校でのモットー

でもさすがに、今日は、皆に聞かれた。

「シン・チェギョンって、やっぱり妃宮だったんだね。」私はただ笑う。

「でも、アンタって、廃妃になったんでしょう。それなのに、何で皇太子殿下が来たのよ。」

私は両手を広げて、首を横に振る

「アンタが判んないのに、うちらが判る訳がないか~~。」と皆散らばっていった。

やはり、大学の事とか就職の事で忙しいので、私なんかに構う人はいなかった。






妃宮だった頃の私は、王立大学に通う事が決められていたが、今は一般市民なので。

前からの私の夢を叶える専門学校にした。

なるだけその大学から遠いとこに決めた。だって、皇太子がそこに通うはずだから。

授業も終わり、私は毎日通っている病院にリハビリに行く。

ギブスがそろそろ取れそうなので、相談と少しでも前みたく歩けるようにと、願いながらのリハビリ。

リュックを背負い、松葉杖を片手に、病院から家までの長い道のりを歩かないとね。

毎日の日課だけど、家に付く頃にはヘトヘトになっている。

これでいいんだ。疲れ果てて、直ぐに寝ちゃうから。何も考えなくても良いから。







校門を出ると、私はバス停まで急ぐ。

この時間のは直ぐに来ちゃうので、早く行かないと。

私は無理矢理、早歩きで急ごうとしたら。

バス停の傍には黒いフォルクスワーゲンのセダンが止まっていた。

それも宮のマークがつぃていた。

私はいやーな冷や汗をかいた。

踵の向きを変え、そこから逃げようとしたら。

車のドアが開き、皇太子殿下が降りてきた

「シン・チェギョン!!」真剣なカレの表情を見た私は、もう逃げれない事を悟った。







この車には、今二人しか乗っていなかった。

殿下は一人でここまで来たみたいだが、きっとどこかで護衛のおにーさん達がいるに違いない。

バス停の前だと人目もあるし、邪魔なので移動した。

そして、公園の駐車場に停めた。


元々皇太子殿下はあまり話す方ではない為、この車は静かなままだ。
それから10分位して。

「オイ、オレに何か言う事はないのか?」私を見る。

私はカレの顔をマジマジと見つめ。

そりゃー、妃宮やっていた時の愚痴言いたいよ。

それにあの人と婚約してたなんて、もっと早く言ってくれていたら。妃宮なんて、やらなかったのに。

と言うのを我慢して、プリンセススマイルをしてみせる。(特訓したもん)

「笑っているだけでは、話が進まない。」

でも、私は笑うしかない。

カレは深い溜息をはき「オレは、お前が済州島で入院していると、聞かされていた。

そして、廃妃を願い出た事も聞いた。

オレはちゃんとお前の口から聞きたくて、スケジュールを調整して済州島に行く準備をしていたのに。

大人達は、勝手にお前の事を廃妃にした。

力のない自分に失望した。所詮、皇太子っていうのは名だけなんだって。

誰がやったって、同じだ。」

カレは運転席側のガラスの向こうを見続けていた。



カレは今回の件で悩んでいるようだ。でも、私はそのことに対して、助言は出来ない。

だってもう、妃宮じゃない。

ただカレの言葉を、黙って聞いてあげるだけ。

何も話さない方が早くここから出られる。

私はカレの気持ちを逆なでないように、気を付け始めた。

重い空気が漂う中、カレの口が開いた。

「廃姫を頼んだは本当なのか?」ポツリと言った。

私は一回頷いた。

暫くの沈黙の後に掠れたカレの声で「オレはいい夫じゃなかった。」と呟いた

私の目頭に涙が溜まり始めた。慌てて助手席の窓ガラスの方を向いた。

こらえろ!ここで泣いちゃダメ。

自分の胸に仕舞い込んだ箱からイ・シンへの想いが溢れ出しそうだった。

「後、妃宮に聞きたい事が、あの時オレに何か言ってたろ?」

カレは私の事を妃宮って呼んだ。

でも今はもう、廃妃になったんだから、その言葉はダメなのに。

でも、話せないので訂正しなかった。


そして、へっ?何時ですか?と手を広げた。

「海に落ちる前に、お前の口が何か話していた。助けを求める言葉ではなく、むしろちょっと喜んでいた。」


殿下、ちゃんと見てたのね。

私はあの時、あんな時だけど、殿下が私の名を初めて呼んでくれて、嬉しかった。

凄く嬉しかった。

でも、手は顔の前で横に振っていた。

「うん?妃宮、ちゃんと言葉で言え!!」とカレは強制してきた。

それでも、私は手を横に振る。

「姫宮!!」と言ってカレが私の腕を掴んだ。

突然の行為で、私は避ける事が出来ずにカレに掴まれた。

顔は驚いているけど、声が出ない私。


「妃宮、お前、まさか?」気が付くの、おそっ。

「声が出ないのか?」私の頭は1回だけ頷いた。

カレは驚きながら、考え込んでいた。

そして「済まなかった。助けに行くのが遅かった。」頭を下げた。

顔の前で手を横に振り、気にしないで!!と言う顔をした。

そして、リュックから紙とペンシルを出し

「皇太子殿下。

私の声と脚の事は気にしないで下さい。これも、こうなる運命だったの。

私は、この事をちゃんと受け止め、頑張って生きていくから!!

2人とも別の人生を歩むけど。

私は皇太子殿下と妃宮になったミン・ヒョリンさんをテレビで応援していきます。

自分の子供が出来たら、皇太子殿下(は陛下になっているのかな?)と知り合いだったのよと自慢するから。

もう会う事がないと思いますが。本当にお世話になりました。

あっ、病院の時間なので、これにて失礼します。」と、紙を見せてポケットに入れた。


そして、車から降りカレに向かってお辞儀をした。

松葉杖を脇に入れて、私は歩きだした。カレの車から、段々離れていく。

後ろを振り向かずに、歩く。

泣きそうになるのを、我慢して歩く。

歩いていると、横をカレの車が通り過ぎて行った。


さよなら、イ・シン皇太子殿下。



でも車は急ブレーキを掛け、殿下が降りてきた

私の元に走ってきて「妃宮、病院まで送っていく。」

私は顔を見上げて首を横に振る。

カレは悔しい顔をして「じゃあ、これを。」

カレが取り出したのは名刺だった。名刺の後ろに自分の携帯番号を書き込み、私に渡す。

初めてカレの番号を知る。

夫婦だったのに、お互いの番号を知らなかった私達。

今更知っても、どうにもならないのに。

名刺をカレに戻し、いらないというジェスチャーをした。

そしてプリンススマイルを浮かべ。さよならと口で表した

一歩一歩カレから、離れる。

ずーーッと耐えていた涙が溢れてしまった。

止まらない涙。

私の顔は今まで生きてきた中で、1番酷い顔になっていた。

それでも、泣きながら私はバス停を目指す。



私の同じ人への2度目の恋も、失恋に終わった。






皆様、こんばんは。

人魚姫6です。

このお話を読み返していると、時代ですねー。

声の出ないチェギョンちゃんは、紙に書いて気持ちを伝えていましたが。

今ならタブレットですよねー。それか、LINE。

又何年かしたら、それも古くなるのかな?

まったく時代のスピードについていけません。(泣)


では、おやすみなさい。