「何で。」唖然と口を開けっ放しの私

「何でって。」ニヤリと笑うシン君

「ほら、チェギョン。携帯の画面真っ黒だよ。」ユル君から差し出された画面にヒビが入った携帯。


本当だったら、泣き叫ぶところだが。


それどころじゃない。


「何で私の写真なの?」私の問いかけに対して、どんな反応で来るのか分からず、体が緊張で強張る。


バン!静かな部屋に響き渡る扉の音に、皆目が向かう。


「さー!手続きも完了したから、シン帰るわよー。」部屋のドアを勢いよく開け広げた先には、先程コンビニにいた綺麗な人が仁王立ちしていた。


その堂々たる佇まいに、思わず平伏したくなる感じは、誰かに似ている。


でも、私は先程のコンビニでのことを思い、シン君の彼女さん?嫌奥さん?と考えてしまい、強ばった体が少し震えだす


「シン、さっさとしないとー。私明日にはアメリカに戻るんだからー。実家に帰ってお婆様に沢山のお土産渡さないとー。」グイグイとカレの手を引っ張る。


「今、大事なところなんだ。」綺麗な人の手を振り払って、私の方を見る


綺麗な人はピンと閃いた頭を頷き「あー、シンの大好きな子ね?ごめんねー。10年待たせたけど、もー立派な経営者になったから。


ユルから、毎回報告を受けて。貴方がまだシンの事好きだって、確認済み。


こんなやつだけど、貰ってやって。」シン君を指差しニッコリ笑う。


2人並ぶと似ていて、威圧感がハンパない。


彼女さん、嫌、奥さん、確実に、おねー様だ。


「ねーさん。何でチェギョンに言うんだ。オレの口から伝えようとしたのに。」少しばかり拗ねているカレ


「だからー、時間が無いんだってば。じゃー、貴方も来なさい!」私の手を取り早歩きで扉を開けた。


「えー!」叫んでいる私の後をカレとユル君が追いかけて来る


「良くわかんないんだけどー。」引きずられながら叫ぶ。


「チェギョン、ねーさんはせっかちだから、諦めろ。」ニヤニヤしながらついてくる。

「それに、ヘミョンに逆らったら、生きてはいられないよ。」ニッコリしながらついてくる。


カレとユル君が納得!という風に手を叩き合う。


「え?2人とも。」さっきはお互い知らない風だったのに。


「チェギョン、ごめんね。僕とシンは従兄弟なんだ。」テヘッという顔


「僕が一族の跡取りを拒否した為、急遽シンが後を継ぐ事になり、アメリカに留学させられたんだ。

その代わりに、自分が帰ってくるまで、チェギョンに悪いムシがつかないように側にいてくれって言う条件だった。」


玄関前に乗り付けてある黒塗りのドデカい車に乗せられた私は、1人小さく乗った。


車って向かい合って座るもんだっけ?


シン君の車は基本の椅子だったけど、この車はなんか、何か庶民が乗ってはいけないヤツだよ。




「それにしても貴方可愛いわねー。さっきこの車に乗る時「靴脱いだ方が良いですよねって」言った顔が堪らないー。」私の顔をグイッと綺麗な手で押さえ込んだ。


「ねーさん!」カレが乗り出す。


「だって可愛いんだもーん。ほらシンが大きい声出すから、リスのように大きな瞳がウルウルしてる。」嫌、カレと言うか、おねー様に怯え中です。


「ねーさん!」


「良いじゃない。明日には帰るんだから、私の妹になる人と触れ合っておかないとね。」そう言いながら私の手を取ってギュっと握りしめる。


「ねーさん、やめて貰えますか?ねーさんはバイだから気が休まらない。」フーッとため息を吐く。


「大丈夫。シンの好きな人には手を出さない。」ニッコリと笑う。


その綺麗な笑顔にポーってしまっていたが「あのー、バイってなんでしょう?」オズオズと聞いてみる。


ユル君はいつもの笑顔で「つまり女も男も好きって事だよ。実は僕もそうなんだ。

我が一族はそう言う家系みたい。


でも、シンはストレートだから良かったね。」そのスマイルは女だけでは無く、男にも向けられていたのね。


なんか色々な事が多すぎて目眩を感じる


「あらっ、もう着きそうよ。」おねー様の声と共に車が静かに停まる。


ドアが開き助手席に座っていた白髪の人が頭を下げながら私達を誘導する。


私の目線の先には、広々とした庭園と国の建築物のような豪邸が聳え立ち私の足は一歩も動かなかった。


高校の時、確かにシン君は財閥のおぼっちゃま達と弛んでいて、普通のお金持ちなのかなーーと勝手に思い込んでいたのに。


私の目の前にある豪邸は、そんなレベルじゃないと危険信号を連発している。


「ほらっ。中に。」カレが私を招き入れようと、私の手を掴もうとしたが、私の体は拒否をした。


「はっ?」私以外の三人の目が集まる。


「無理だよ。こんな家、嫌、豪邸。私レベルが入れる所じゃない。」


「気にするな。オレの親族にあって欲しい。今日帰国したばかりで、オレの結婚する相手も連れて行くって言ってるから。」グイッと手を掴む。


「無理、無理無理無理無理無理ー!

10年も会ってなかっんだよ。そりゃー高校の時の気持ちは真剣だったよ。貴方とは、一生に一度の恋だと今も変わらず思ってる。

でも、結婚相手って、勝手に決めないで!

今の私の格好がこの家に相応しくないって物語ってる。」大きい声で言った言葉に、カレの目は大きくなっていた。


「それに私は今、結婚より仕事が楽しい。」


少し寂しそうな目のカレ


「チェギョン。高校の時とは違うんだな。

あの頃のお前は、オレの言うことを疑う事もなく従ってくれていた。」


「あの頃は、貴方しか目に入らなかったから。10年後の私は少し成長して周りを見渡せるようになったつもり。今度はちゃんと貴方に向き合って話をしたい。」真剣な目線でカレを見上げる。


「貴方の受けた仕事を無事に終え、私が貴方に相応しい人だったら、もう一度プロポーズして下さい。」


シーンと静まり返る駐車スペース


カレは「ヤバいな、大人なチェギョンは最強だな。」口元に手を当てて、少し照れくさそうにしている。


2人で見つめあっていると



「チェギョンちゃん。私の恋人になって。」おねーさんが私を勢いよく抱きしめた。


「え?」


「ねーさん!何やってるんだ。離れろって」カレが離そうとやってきた。


「あっちでは、アジアンクールと呼ばれて誰も刃向かう人はいなかったシンに、堂々と言える貴方に惚れちゃった。もし良ければ私の事考えてくれないかしら?あっ、ちゃんとシンの仕事が終わった後で良いから。」私の手を取り、優しく唇を当てられた。


そのさり気ない仕草に、胸が高鳴ってしまい。頬が熱くなる。


「チェギョン、お前何で赤くなってるんだ」おねーさんから私を引き離した。


「そんな事された事無かったから、かな?」熱い頬を手で覆う。


「まー、シンったら、チェギョンちゃんにそんな事してあげた事無かったのね。私と付き合ったら、幾らでも優しくしてあげる。」甘い言葉に誘われそうになる。


「ねーさん、オレ達には10年と言うブランクがあっても、強い絆があるんだ。」自慢げに私を見た。


「10年も連絡しなかったのに?」私の眉間に皺が寄る


「ちゃんとユルに頼んでお前の様子を」


「何それ、今流行りのリモートってヤツ?私はずーっと、あの喧嘩別れした日からずーっと後悔でいっぱいだったのに。


大好きな貴方ともう一度やり直したいと、思ってたのにー。」一粒流れた涙は止まらないほど溢れ出す。


「チェギョン。」大好きなカレの声が私の名前を呼ぶ


「許さない。」泣きじゃくる私をカレが抱きしめてくれる。


「経営の勉強の為に、ずーっと会いたいのを我慢していたんだ。ようやく抱きしめる事ができた。」もっとキツく抱きしめる。

「ユルからの写真じゃ物足りなかった。」


「私の10年の想いはどうするのー。」子供のように大きな声で泣きじゃくってしまう。


「まったく、変わらないなー。」それなのに、優しく髪の毛を撫でて私を落ち着かせようとしている。


「泣けよ。今までの分。」何よ、そのセリフ。止まらないー。


もう離れないと言う風にガッチリとカレにしがみつきながら、ワンワンと大泣きしている私に、おねーさんもユル君もどうしようとオロオロとしていたが


ようやく落ち着いた私に


「で、10年前の喧嘩って?」ユル君が聞いてきた


2人顔を見合わせ「どっちがお互いのことを好きかって言い争っているうちに、ね。」


「え?何そのくだらない理由。」おねーさんの冷たい目が刺さる


「だから、シンが喧嘩の理由を教えてくれなかったんだ。」呆れ顔のユル君


「あの頃は、凄く真剣だったんだからねー。」2人顔を見合わせた。








三ヶ月間の仕事も無事に終え、カレからのお誘いを受けた。


「お試しデートだ。来ないと損するぞ。」カレからの私用の連絡は10年振りだ。


OKの大きなスタンプを送り、着て行く服を選ぼうとタンスの中の服を、全部出した。




「何だその格好。」高級車の横で待っていたカレの姿は、少しだけカジュアルなスーツ。

「良いじゃん。ありのままの私を見て欲しいもんね。」マフラーをグルグル巻きにして、ダボダボの服で現れた私をジロジロと見て「相変わらずだな。」と苦笑いをした。


ピアノを弾けるカレに付き添い、楽器屋に行ったけど、目に入ったタンバリンをノリノリで叩いていたら、静かにと怒られて。


展示展に行っても、カレのお薦めの良さが分からず眠気が襲い。


最高級の焼き肉屋に行っても、2人の焼き方が違い、言い争う。



2人で顔を見合わせ「オレ達ってほんと、考えも趣味も好みの味も違う。


それでもチェギョンといると変わらず楽しくて、楽しくて仕方ない」カレの笑顔をまぢかで見てしまい、釣られて笑ってしまう。


「ほんと何でだろうね。こんなに合わないのに。でも、楽しいー。」


「チェギョン。三ヶ月お前の事見てきた。

仕事に真剣に取り組む姿に、益々惚れた。


もう一度言う。オレと結婚してくれませんか?」胸ポケットからリングケースを取り出し、私に差し出す。


こんな事されるのは、初めてなので頬が熱くなる。

「はい。」小さな声で答える。


2人顔を見合わせ、笑い合う。


「ヤバい、幸せすぎるんだけどー。」カレのプロポーズに、体がフワフワと浮いてる感覚。

カレが私を抱きしめ「ところでプロポーズも承諾してくれたんだから、もう前みたくオレの名前で呼べよ。」不満そうな顔


私はカレを見上げ、ふふふっと笑いカレから逃げ出した


「シンチェギョンさーん。聞こえてましたよねー。」と慌てて追いかけてきた






「おねーさん、ごめんなさい。」私は頭を深々と下げた。


三ヶ月間アメリカに帰ってしまったおねーさんと電話で話ししたり、たまに韓国に来た時にあってお話をしていたが、カレからのプロポーズを受けたので、ちゃんとお断りの返事をした。


「おねーさんの事は好きですが。やはり愛する事は出来ませんでした。」頭は下げたまま。

「チェギョンちゃん、ちゃんと話してくれて嬉しいわ。仕方ない貴方のこと諦める。


私の運命の相手は、貴方じゃ無かった


もうお邪魔虫は、アメリカに帰るわ。」カレのうちにおねーさんを呼び出して、お話をした。


「ねーさんが結構マジだったのを知ってたけど、こればかりは譲れない。」カレも頭を下げた。


「まー、チェギョンちゃんの気持ちは最初から決まっていたのに、やはり兄弟ね。同じ人に一目惚れしちゃったから。」ちょっと寂しそう。


「でも、くよくよしてられないわ。私の運命の人を探しに帰るわ。」私達に手を振りおねーさんは行ってしまった。





カレは私を後ろから抱きしめ「チェギョン。」私の髪の毛に顔を埋める


「シン君。」回された腕に自分の腕を絡める


「ようやく名前で呼んだな。」


「そりゃー、私の旦那様になるお方ですから。」ソファに雪崩れ込み、カレの体の上にダイブした。


「10年間ずーっと隠していたキモチは、冷え切ってしまったけど、温めてくれますか?」カレの顔を覗き込む


「最強の熱とスピードで温め直す。」大きな手のひらは荒々しく私の顔を掴み、自分の顔に近づけ重なりあった。







皆様、こんばんは。

地震は大丈夫でしたか?

私はその時間、バイトをしていて、ビックリ。

長い間揺れていました。


又、大きい地震が来るかもしれないので、お互い気をつけましょうね。


さて。このお話はここで終わりです。
日にちを掛けてしまったので、最初と最後が合わないかもしれませんが。許してやってください。

だば、おやすみなさい。