あの店に行くには、この地下道を上がれば良い。
手に持っていた傘のホックを外し階段を昇りあがる
一歩一歩上がるたびに、冷たい風と雨のニオイを感じる
せっかくのバーゲンで買ったブランドの靴が濡れてしまう。
80%OFFで買えたチョー有名なブランドなのにー!!でも仕方ない。
此処までしか地下道がないから、、上がるしかない。
出口に上り立ち傘を広げる。
目指すのは、有名なパティスリーが経営しているビル
傘を飛ばされないように斜めに握りしめ、一気に走り出した。
雨の日は嫌いじゃない。
雨の音がする中ベットの中でゴロゴロと寝ているのも好きだし、優しく降り続く雨を見ながら皆とランチするのも好き
でも、風が強く寒い雨は嫌い
バシャバシャと跳ねる雨の水が、買ったばかりのヒールを濡らしていく
「せっかく買ったばかりだけど、今日は絶対に行かないといけないの。」まるでヒールに謝るように言い続けながら走っていると
「シン・チェギョン。」雨の音に消されない自分を呼ぶ声に立ち止まってしまった。
自然に傘を水平に保ち、声の方を顔を向けると。
雨の中なのに、黒く光り輝くお高そうな車が停まっていた。
窓ガラスが下がっていて奥の人が私の名前をもう一度呼んでいる。
嫌々、こんな車に乗っている人なんか知り合いになんかいないよー。と体は後ろに下がり始める。
「何やってるんだ。さっさと車に乗れ。」この声は―ッ、私が大っ嫌いな室長
「室長。私濡れてるんで。こんなイイ車になんか乗れませんって。」なんで嫌いな奴の車に乗るなんて無理。
今日室長は午後からずーっと会議で席を外していたので、今日は怒られることもなく平穏な午後を過ごせていたのに、なんで最後の最後に会うのー?ここは上手く乗り切らないと。
「こんな人通りの少ない所で、女一人で歩いているなんて、襲ってくれって言ってるもんだ。さっさと乗れ!!」
恐ーい。逃げ切ろうとしたが、日頃の条件反射のお陰でドアの取っ手を取ってしまった。
出来るだけ高級車にぶつからないように,傘を閉じ助手席に座った。
適温な空気は私の身体に染み渡り、ついホッとしてしまった。
この車に乗ったのは2回目だ
「シートベルトかけろ。」私に促す声はさっきの怒り口調ではなかった。
「で、何でこんな所を走ってるんだ?地下道で帰れるんじゃないのか?」
「今日は、ガンヒョンの、あっイ・ガンヒョンの誕生日なので経理部の女子だけでお祝い開こうって。
で、私が責任を持ってバースディケーキを受け取りに行こうと、その先のパティスリーに。」指差す先には微かに目指すビルが見える。
「全く、こんな雨の日に、タクシーで行けば。」
「タクシーなんて高いです!!庶民は歩いていくんです。」身を乗り出し反論をした。
「それは済まなかった。で、どこのケーキ屋だ?」
「この道真っすぐの―ッ後、200メーター位です。」私の言葉を聞き終わらないうちに車は走り出す。
1分くらいで辿り着いた先には、お目当ての店
「じゃあ。有難うございました。」ここはさっさと降りるべし。傘を持って降りようとしたら
「まだ降りるな」室長は後ろから傘を取り出し、扉を開けて助手席の扉を開けてくれた
「ほらっ。降りろ。傘は置いてけ。」見上げらる室長と目が合う
「ここまで送って頂いたので、もう一人で大丈夫です。」傘を持とうとしたら
「お前の靴がそれ以上濡れないように、店まで送って行ってやる。」
「じゃあ、そこまでだが気を付けていけ。」
私は、予約したケーキを持ち「今日は突然送って貰い、そしてケーキまで買っていただき有難うございました。」深々と頭を下げた
「部下の誕生日ケーキぐらい払うのは、当たり前だ。じゃっ。オレはこのビルの駐車場に入るから。」私はケーキを持ちながら傘を開いた。
偶然にも室長もこのビルの最上階のレストランで集まりがあるそうで、私はこの地下の安くて美味しいイタリアンの店
同じビルなのに、全然違う私達。
嫌いな室長だけど、送って貰いケーキ代まで出して貰っちゃったから、今日は少しだけ嫌うの止めとこうかな。
(笑)
傘を差しながらこのビルの散歩道を抜け地下へのエスカレーターを下った。
皆様、こんばんは。
過去のお話です。
四つ葉の設定をちょっとだけ東京にして書いてみたやつです。
あー早く東京に行きたいーーーーー。
では、おやすみなさい。