ベルの音が鳴り響いた。
反射的に体がビクンと跳ね上がり、ハッと目を開ける。
目の前にはチェギョンの柔らかい体と、優しいチェギョンの香り「此処は・・・。」目が覚めて直ぐに今の状況が掴めなかったが、彼女の二つの膨らみの間に顔を埋めて、久々の幸せを味わう間に現実を思い出す。
携帯の音はまだ鳴っている。
仕方がない.。
少しだけの幸せを味わっていたいが、体を起こしてぼんやりとした風景にメガネを探す。
確かチェギョンがテーブルに置いた筈、チェギョンを起こさないように腕を伸ばし、テーブルの上のメガネを探し、クリアな画面を手に入れた。
鳴りやまない音に目線と耳を傾ける。
ベットの端の方に畳まれた服が見える。
チェギョンを起こさないように、体を伸ばし自分のスラックスのポケットから携帯を出した。
予定の時刻に電話を鳴らしてくれと頼んでいた表示を見ると、秘書の名前が出ていた。
「はい。」体をチェギョンの隣に戻し、彼女の髪の毛を後ろに撫でてあげる。
「社長代行、お時間です。」真面目な声が耳元に聞こえる。
「分かった。じゃあ、11時40分にホテルに迎えを寄越してくれ。」「了解しました。」事務的な電話を終え、フー―っと溜息を吐いた。
「時間だ。」久々な休息。
忙し過ぎて会社から出る事も出来ずに、ソファで仮眠をして過ごす日々。
朝のスケジュールチェックの時に、午後からの会議まで突然時間が空いたと秘書の報告があった。
小さい時から何事にも冷静に対応するようと躾けられて、育ってきた。
父が倒れて代行でこの会社の窮地を乗り越えないといけない時にも、テキパキと業務をこなし、会議でも率先してまとめていった。
小学、中学、高校、大学、そして就職。
冷静に冷静に過ごしてきたのに。
小さい時から何事にも冷静に対応するようと躾けられて、育ってきた。
父が倒れて代行でこの会社の窮地を乗り越えないといけない時にも、テキパキと業務をこなし、会議でも率先してまとめていった。
小学、中学、高校、大学、そして就職。
冷静に冷静に過ごしてきたのに。
時間が空く!この言葉を聞いた時に、瞬間!目がカッと見開いた。
チェギョン!!
脳細胞を全部仕事だけに向けていたのが、一気に身体中全てが、チェギョンを求め始めた。
チェギョン、チェギョン、チェギョン、チェギョン。
何兆もの1センチ位の小さなオレが体の中で叫んでいる。
会いたい、チェギョンに会いたい。
その声は、オレの体を爆発させるんじゃないかと思うくらいの激しさになっていく。
その声は、オレの体を爆発させるんじゃないかと思うくらいの激しさになっていく。
そうだ。
チェギョンに会えなくなってから、今日は5日目だ。
チェギョンに会わなければ、オレの中の小さな奴等のおかげで倒れてしまう。
直ぐに携帯で、チェギョンに電話を掛けたが、お掛けになった電話番号は、冷たい声が繰り返すだけで。
「アイツー!」充電切れか?舌打ちを打ちながら時計を見み、まだ部屋にいる時間だ。
ガンヒョンに電話だ。慌ててガンヒョンに掛けたら。
「室長!チェギョンは、遅くまで仕事していたんですが、夜の爆弾低気圧のせいで帰れなくなって、経理部に泊まったんです。」
直ぐに携帯で、チェギョンに電話を掛けたが、お掛けになった電話番号は、冷たい声が繰り返すだけで。
「アイツー!」充電切れか?舌打ちを打ちながら時計を見み、まだ部屋にいる時間だ。
ガンヒョンに電話だ。慌ててガンヒョンに掛けたら。
「室長!チェギョンは、遅くまで仕事していたんですが、夜の爆弾低気圧のせいで帰れなくなって、経理部に泊まったんです。」
「はぁ?」さっきまでのチェギョンを求める熱い体は違う熱さに変わる。
一センチくらいのオレの姿は変貌していく。
韓国の王の血を受け継ぐオレのDNAには、代々のイの王達の血が流れている。
生まれたままの姿のオレは、数々の王の姿に変わっていき。
チェギョンと一夜を過ごしたムン・ジェウォンの元へと急がせる。
オレの女と過ごすなんて許さん!アイツを倒せ!女を奪い返せ―!
王達はデカくなり、興奮状態。
まさに、オレの身体はチェギョンへ向けてMAX状態だ。
「ムン・ジェウォンと一緒で」オレに宣戦布告をしたライバルの名前を聞いた途端、ガンヒョンとの電話を勝手に切り、傍にいた秘書に「出掛ける。車を出してくれ。11時には電話で起こしてくれ。」それだけを言い社長室を飛び出した。
「ムン・ジェウォンと一緒で」オレに宣戦布告をしたライバルの名前を聞いた途端、ガンヒョンとの電話を勝手に切り、傍にいた秘書に「出掛ける。車を出してくれ。11時には電話で起こしてくれ。」それだけを言い社長室を飛び出した。
カツ。カツ。革靴の良い音が廊下に響く。
革靴の音は段々間隔を狭めていき、仕舞いには、体が勝手に走り出していた。
早く、チェギョンの仕事場に駆けつけたい。
オレ以外の男と一緒なんて、体の中の代々の王達が叫び、血が逆流しているんじゃないと思う位に、煮えたぎっている。
会社の外に出たのは、あの会見以来だった。
初夏の日差しが、目にきつく軽く眩暈を感じたが、それよりもチェギョンだ。
車に乗り込み、チェギョンの働いているホテルに向かって欲しいと告げた。
ソウルの道路は何車線もあるのに、尋常じゃない位に渋滞する。
誰も譲り合わないから、自分が先、自分が先と車達は少しの隙間を搔い潜っていく。
まったく変わらないなー。
元の皇太子の住んでいた東宮殿の横の道路は幾分空いていて、車のスピードは上がる。
この煮えたぎっている熱い体を落ち着かせようと、目をギュー―っと瞑るが。
頭の中はチェギョンでいっぱいだ。
明洞を過ぎ、働いているホテルの大通りに出ようとしたところで又渋滞にはまる。
「くっそーーっ。」近くまで来ているのに、中々進まない。
体が自然にドアの扉を開けた。
「社長代行?」突然の行動に、運転手は驚く。
「社長代行?」突然の行動に、運転手は驚く。
「此処から降りて行く。」その言葉を言い残して、オレは走り出していく。後ろからは運転手の「社長代行ーーー!!」と大きな声が響いていた。
地下道を通って行こうとしたが、運良く交差点の信号が歩くになった。
色んな人種が行き交うこの道路の中を、仕事姿のオレは駆け抜けて行く。
上着を車の中に置いてきて正解だった。
猛ダッシュで掛けて行くオレには、邪魔だった。
ランニングシューズとは違い革靴での猛ダッシュは辛いが、ホテルが見えてきた。
そびえたつ韓国一のホテルの正面玄関の中に走りながら入っていき、スタッフ専用の扉を開けエレベーターを目指す。
ポケットから携帯を取り出しファンへ電話を掛ける。
「シン!どうしたんだよ?今仕事は良いの?」
「今ようやく時間が取れた。それより好い部屋取ってくれ。じゃあ、又電話する。」用件だけ言って電話を切る。
エレベーターを経理部の階数のボタンを押した。
久々のチェギョンを腕で抱きしめた喜びで、怒りの矛先のムン・ジェウォンの事なんかどうでも良くなった。
代々の王達が体の中で暴れていたのに、チェギョンを抱きしめた途端。
ポンッと又生まれたままの姿に戻り、皆大人しくなり幸せな顔でニコニコしている。
チェギョンとムン・ジェウォンは何もなかったと言っている。
もし、仮にも、イヤ有り得ない話だが、チェギョンが他のオトコと浮気をしてもオレは何度でも許してしまうだろう。
それ程までしてチェギョンと言う女は、今までのオレを真逆に変えさせていく。
本当は時間ある限り繋がっていたいと思って、ここに部屋を取ったのに、チェギョンはオレの体が限界な事を、教えてくれた。
二人での爆睡は少しばかりだが、体は十分に休めれた。
オレは横で眠るチェギョンをこのまま寝かせてやりたかったが、1分1秒と残りの時間が減っていく。
「・・チェギョン。」彼女の頬を包み親指動かす。
「チェギョン、時間だ。オレはもう行かないといけない。」寝てしまうと中々起きない彼女を起こそうと声を大きくする。
ハッと目が開いた。
見下ろしているオレと目が合う。
「シン君・・。少しは疲れが取れましたか?」とローンとした目でオレを見上げる。
「だいぶ良い。」彼女の指が伸びて、オレの頬をなぞる。
「うーーん、やっぱり頬コケちゃってます。時間があればもう少し寝かせてあげたかったです。」ニッコリと笑う
「ずーっと寝ていたが、今は時間がない。」彼女の身体の下に手を入れグイッと持ち上げた。
「えっ?」急に抱き抱えられた彼女の声は驚いている。
「シャワー浴びる。」彼女を両手でしっかりと持ち上げて、バスルームに入り込んだ。
バスローブをチェギョンに羽織らせると、白い肌にはキスマークが見える。オレは満足して紐を結んであげた。
バスルームでちょっとばかり悪戯してしまって、体はフラフラと揺れている。
「腰に力入ってないぞ。」ニヤリと笑う。
「シン君のH。」怒った声まで可愛い。
「腰に力入ってないぞ。」ニヤリと笑う。
「シン君のH。」怒った声まで可愛い。
「オトコは皆Hだ。」平然と言いながら、自分もバスローブを羽織り、メガネを掛ける。
「じゃっ!シン君は世界一のHです。」真っ赤になってオレの体にしがみつく。
「お褒め頂いたようで、光栄です。」彼女の濡れた髪の天辺にキスをする。
「世界一のHだけど、大好きです。」ギューと抱きしめてくる体が熱い。
「次は何時会えますか?」オレの胸元に隠れてポツリと呟く言葉。
「5日後には絶対に会いにくる。それと引っ越し手伝えないけど、アイツらに頼むから大丈夫だよな。」少し屈んで頬にキスをする。
「・・・。」チェギョンは黙り、何かを考えている。
「チェギョン、オレはもうここを出て仕事に戻るけど、お前はここで寝ていたら良い。」彼女のおでこにキスを落とす。
ハッとオレの顔を見上げる。
「もう行くんですね。付き合い始めた頃、シン君がギョン君の秘書をしている時に会えない日があっても、こんなに辛くなかったんです。今の状況で言うのは我儘だと分かっているんですが、シン君に会えないのは凄く辛いです。」真っ赤な顔は段々ウルウルしてくる。
洗面台に置いた携帯に、LINEの表示がでた。
彼女の頭をポンポンと撫でながら「ちょっと待ってろ。イ・ユルが来た。」
シン君のセットされていない前髪は長く表情が見えにくい。
ユル君が来たって事は、下着又買ったんだ。
シン君は私をここに置いて扉を閉め、二人で何か話している声がする。
私は扉を少し開けて様子を見ていたが、シン君は未だにユル君にだけは気を使っているのが分かる。
もう何度もユル君は初恋の人で、もう何とも思ってないと言っても、透明な壁で遮っている。
私は、今ここでシン君の為にすべき事があると、扉を開けて二人の元に出て行った。
「ユル君!」バスローブを羽織ったままの私はシン君に抱きつく。
オトコ二人の顔が驚く。
「ユル君!お久し振りです。突然ですが、私の初恋のユル君。去年まであなたの事運命の人だと思って、ずーっと待ってました。
でも、イ・シンと言う人に出会ってから、私の運命の人はユル君じゃなくなりました。
イ・シン!カレこそ本当の私の運命の人です。」真っ赤になりながら、二人のオトコに自分の気持ちを宣言した。
「チェギョン。」シン君の顔は驚き少し赤くなっている。
ユル君はジーッと私を見つめて大きく息を吐き、まっ直ぐに私を見つめる。
「チェギョン、僕と君は結ばれない運命だったね。イ様、僕が言うのもなんですがシン・チェギョンの事を幸せにしてください。
では、ご指定された色が在庫になかった事は申し訳ありませんでした。代わりのお品でお許し頂けたので、本当に有難うございました。」ニッコリと笑い、シン君に紙袋を渡し深々と頭を下げてホテルのドアを閉めた。
「えっ?」シン君に抱きつきながらこの状況は。
「イ・ユルに頼んだお前の下着の色がなくて、代替えの話をしている時に、バスローブのまま出て来るとは!
お前はなーっ他のオトコにそんな姿見られるとは!」シン君の怒る声。
「えっ?えへへへーーーっもしかして早合点しちゃいました?」笑ってごまかそうかと。
「今は時間がないからお仕置きは次に会った時に、たっぷりとしてやるから。」顔も怒っていたが、私を抱き返しながら「でも、さっきの言葉にジーンときた。」小さな声。
「私の運命の人はシン君ですよ。だからお仕置きは勘弁してください。」シン君に抱きしめられている腕の中から、顔を出した。
「無理、お仕置き決定。」ギューっと抱きしめてくる。
「シン君、痛いです―――。」ジタバタ暴れる。
「あともう少し時間が許すまで、こうしていたい。」私に覆い被さり愛しそうに呟く。
シン君の掴んでいる腕に力が入る。
「私もです。」シン君にこの声が届くように何度も呟いた。
ホテルの扉を閉めた僕は、カバンを持ちエレベーターに向かう。
下降ボタンを押し、ボーッと階数の移動を見ている。
チェギョン、僕の初恋の人。
僕には奥さんも子供もいるけど、やはり君は僕にとって特別な存在だった。
スーツのポケットから携帯を取り出し、写真を開く。
フォルダー分けしていた場所のチェギョンを選ぶ。
中学校の時のチェギョンと僕の写真。
全ての写真を見つめ、駆け落ちするほど大好きだったチェギョン。
そんな彼女からの、運命の人は僕じゃないと言われて胸の中が複雑だった。
イ様と彼女のバスローブ姿での抱き合う姿を思い出し、彼女のハッキリと言い切った言葉に、イ様が一瞬嬉しそうに笑った。
この間のテレビの会見に出ていたイ様の厳しい顔とは全く異なるその笑顔を見た瞬間、僕はもうこのキモチを捨てないといけないなーと感じた。
この間のテレビの会見に出ていたイ様の厳しい顔とは全く異なるその笑顔を見た瞬間、僕はもうこのキモチを捨てないといけないなーと感じた。
ケタ違いに凄いイ・シン。
この人はきっと韓国一の男になるに違いない。
そんな人が本気を出したら、僕なんかあっという間にソウルに住めなくなる。
僕なんか叶う相手じゃない。僕には妻や娘・・そして年末にはもう1人の子供が生まれる。
フラフラとせずに、ちゃんと父親と夫にならないと。
チェギョンのフォルダーのとこの削除ボタンを選んだ。
削除しますか?と言う問いに、僕の指が震える
「私の運命の人はシン君です。」彼女の声を思い出す。
僕の指はハイのボタンをゆっくりと押し、一瞬にチェギョンのフォルダーが消えてしまった。
最上階の階にエレベーターが到着したことを知らせる音で、ハッとなった。
エレベーターの扉が開き、僕をこの場所からさっさと立ち去る事を進めらているみたいだった。
苦笑いをして中に吸い込まれていく。
1階を選択して、扉の閉じるのボタンを押すのを躊躇したが、僕は珍しく握り拳を作り荒々しく閉じるのボタンを押した。
本当にこれでバイバイだね。
大好きだったよシン・チェギョン。
扉がゆっくりと閉まり、エレベーターはこの場所から一気に駆け下りて行った。