これは書かなければと、書かずにはいられないと思った。ほかに迫っている締め切りが数多とあるのに、である。早くこの胸に伝わる何かを、こみ上げてくる何かを、薄れてしまわないうちに早く・・・!と急いてしまうのだ。

今回も非常にかっこいい大人たちだった。

私が読み進めていって、最初に憧れにも似たかっこよさを感じたのは、長女亜矢子ちゃんだろうか。もともと聡かったであろうことも原因かもしれないが、幼少時から寿美子さんの状態に気づき、あまつさえ誠治君を庇いながら一家の平穏を守ってきていたなんて・・・なんて強い人なのだろうと思った。なんてできた人なんだろうと思った。そして・・・ああ、何と表現したらいいかわからなけれど、物事を進めるタイミング、切り込む度合い、切り返しの痛快さ、正しいことを間違えない意志の強さ、全て私にはなくて憧れに値すると思った。こういう大人に私もなりたいものである。亜矢子ちゃんの『自分の非を一切感じない時の真っ直ぐな目』、あれは私からしたら非常に難しいのである。自分が正しい、自分に非はない、など単なる思い込みで実は周りに多大な迷惑をかけまくり野郎だった。なんてことはきっとよくある話だ。だから、見極めだが大事なんだと。攻めるところをはき違えてはいけないのだと。

そういうところは他にもある。例えば主人公誠治君。

彼は最初に登場したとき、世間一般に言う『親のすねをかじりまくりの非常にダメ人間』だったと思う。今自分で書いていても、本を読んでいる時ですらそうだったのだが、私自身が今現在割とダメ人間なので、セリフ、文章がいちいちグサリときてたまらないのだがまあ、そんなことは置いておいて。

折角正規就職したのに、変だ、なんだか気持ち悪いからという理由でたった3か月でやめてしまったり、自分がちょっと不機嫌になったくらいで、しかもあんな失礼な態度をとってバイトを辞めたりと、見ているこっちが思わず口を挟んでしまいそうなダメっぷりである。

会社への就職は、私自身がまだ経験がないので何とも言えないが、バイトに関しては「いやいや、そりゃあねえだろ!!」と突っ込んでしまいたくなったものだ。つまりはダメ人間な私からしてもダメだったということだ。そんな彼がどうだろう、物語の最後には立派な、いつもの有川さんの、かっこいい大人になっていた。(まあ、私の中での最強は亜矢子ちゃんですが(笑))お父さん、誠一さんとのやり取りもよくできたものだと思う。

バイト時代の彼は、きっと誰がどう見てもわがままで身勝手な、体だけ大人になった子供ではなかっただろうか。私も最近気が付いたのだが、子供にとって親とは、親というだけで絶対的な存在なのだ。大人というだけで、自分とは違う、すごいことができる人たちなんだ、という考えがやっぱりどこかにある。だからなのか、親にはわがままも言うしわがままどころかめちゃくちゃな八つ当たりや、何でもしてもらって当然という気持ちがどこかにあるのではなかろうか。しかし親だって(あるいは大人だってと言ってもよいかもしれないが)、色々な経験を子供より積んではいるものの、子供の前では見せなくたって譲れないところや我が強く出てしまうところもあるだろう。結局は大人と言ったって、子供からの延長線なのだ。今まですごい人たちのように思っていたけど、自分と同じようなところだってたくさんあるんだ。それに気が付け、なおかつ認められたら、精神的大人へ一歩近づける気がする。・・・私だけだろうか?(笑)

少し話がそれてしまってので修正すると、最初の誠治君は怒鳴るだけの、威張り散らして我が物顔をするだけの誠一に、殊更いらいらし癇癪を起して、まるで反抗期のようだと少し思ってしまった。それが、誠一をよく観察するようになり怒鳴られて腹を立てるのではなく、なぜこんな行動に出たのだろうと分析し、理由を理解する。すると今まで何も考えずただただ口煩い威張り散らしている腹立たしい親父が、自分の分が悪くなるとそこから目をそらしあまつさえ自分より下だと思っている人を捌け口している。なんてことが見えてきたり。

なんだ、親父も俺みたいなところがあるんじゃないか、と思ったに違いない。それと同時に、なんでそんな行動するんだよ、もっと正しい行動があるだろ、とも。けれどそれはきっと第三者の目から見るからわかる事なのであって、頭に血が上っている当事者が気づくことはまずないのも常である。ここから、誠治君は大人になったのだと個人的に思っている。

誠一にわからないように彼をうまく操作していたところを見るとますますそう思う。

誠一は本当によく、どこにでもいるプライドが高く、子供は親を慕ってついてくるのが当然だと思っている親像そのものだ。これは父親に限ったことではないだろうけれど。

子供が、自分で気が付くまでは大人や親を、何か自分とは違ったすごいことが沢山出来る人たちだ、と思うように、親は子供をいつまでも考えの至らない判断力が未熟な自分が手を貸してやらないとすぐに道を踏み外してしまう庇護対象と思い続ける節もあるだろう。

物語序盤は、少々信用がなさすぎでは?と思うところもあったものの、それをまともに指摘するのもはばかられるくらいのお子様っぷりを誠治君が発揮していたのだから仕方ない。しかし、物語後半になるにつれて、誠治君のそんなところは急速に薄れていく。誠治君が医療系の会社か土木系の会社かどちらをとるか迷っていたところ。迷っているからこそ、腹立たしいし寿美子さんの病気のことにも理解がないけど、父親だと、自分より経験がある頼るべき存在だと認めているからこそ、誠一に相談したのに、あの返しようである。危うく私まで「違うだろ!!」と叫ぶところだ。あの場面は誠一君は大人な考えを、正論を自分の中で唱えて相談したはずだったのに。ああやって叫んでしまうのも、(あとから自分で語っていたが)誠治君が目先の条件のみに釣られて、安易な考えで土木系会社への道を考えていると瞬時(これもまた、ほかの考えが浮かぶ好きなく)に判断してしまった故である。しっかり向き合って、しっかり話を聞けば

決してそんなことはなかったのに。

主に武家のことについてばかり書いたが、この作品はもちろん、他の登場人物も魅力たっぷりである。誠治にはないものを持っている土木現場の作業員たち、これぞ審美眼と言えるようなものを光らせる作業長、そして終盤に登場した天然お調子者の(誠治君曰くそれが武器の)豊川君、エリート出にもかかわらずお父さんの遺志を継ぐために女性の身で土木会社に入った千葉さん。この土木会社の人々はおっさんたちはどこか筋が一本通っていてブレない人たち、新人二人は若さゆえの悩み方やパワフルなところが見どころだと。若者の表現に関しては、私も一応まだ若者ゆえ、あまり上手くなくしっくりも来ないのだが、その辺はご容赦いただきたい。あとすごく個人的なことを言えは、少ししか出番はなかったが、誠治君が悩んだ医療関係の会社の専務、倉橋さんといったか。あの人も私のかっこいい大人センサーにびびっと来た。さらに個々の読者に不親切なことを言えば(知っている人は知っているかもしれないが)図書館戦争の稲嶺図書基地司令と同じ匂いがしたのだ。ああ、この人はしっかりした人の内面をきちんと見て、真っ直ぐ見てくれる人だなと。

さてさて、ずいぶん長くなってしまっただろうか。この本はもちろんティーンエイジャーが読んでも面白いと思うが、大人になって読み返すと今度は、誠治君ではなくて誠一の気持ちがわかるようになっているかもしれない。少しでもお心当たりのある大人のみなさん、ぜひ読んで見てください。きっとグサッときて、バッサリ切られること間違いなしです。

有川さんの本を読んでいるといつもかっこいい大人がいて、自分もこんな大人になれたらな、なりたいなと、切に思うものです。文庫版最後の重松さんおお言葉を借りて言うなら、その「心意気」に、いつも泣きそうになります。読むことができて良かった、大切な暖かい何かをまた一つ教えてもらったなと思います。

では、こんな素敵な本に皆様が出会ってくれることを祈って…

2014.05.24

自宅のノートパソコンにて