このところ藤崎百貨店さんが、玉虫塗のボールペンの件で中国ファンから相当なバッシングを受けているようですね。


中には口汚く罵るファンもいて、見ていて気持ちの良いものではありません。


せっかく注文した商品がキャンセルされて残念な気持ちもわかりますが、この騒動に心を痛めているであろう、羽生さんの気持ちを考えると、もう少し冷静になってくれればと思わずにいられませんでした。



ところで中国といえば、昔もっと日本の円が強かった頃、日本企業が中国にどんどん進出していた時代がありました。


しかし、日本企業はどうも交渉ごとに弱く、日本国内でブイブイ言わせていた企業が、海外進出のブームに乗って中国へ行き、酷い目にあって撤退するという事例がいくつもありました。


これは文化の違い、商習慣の違い、そして交渉とは何かという認識の違いだと思うのですが、交渉のスタート地点は、少しでも有利な場所から始めた方がいいに決まっています。


なので中国企業の担当者は、まず初めに喧嘩腰とも言える強気な態度で、自分側の要求を突きつけてきます。


その勢いに驚いて、相手が半歩でも退いてくれれば儲けもの。さらにそこへ畳み掛けて、相手をどんどん譲歩させます。


そしてこれ以上、相手がもうどうにも譲歩できない所まで追い詰めた上で、やっとにっこり笑って契約の商談を始めるのです。


しかし、この時点ですでに勝負はついています。

劣勢に立たされた日本企業は、有利な契約を結ぶことができず、相手に利益を吸い上げられるだけ吸い上げられて、酷い目に遭って帰ってくるのです。


今まで日本国内でぬくぬくと商売をしてきた企業は、この手の交渉術にまんまと嵌められてしまいます。


要は舐められているのです。


最初の一撃で相手が半歩でも引くかどうか、試されているのです。


そこでちょっとでも弱気を見せれば、こいつはカモだということになる。


もし最初の時点で、がんとして退く気を見せず、そういうことならこの交渉は終わりだ、と決裂も辞さない態度を取っていれば、こいつは骨のある相手だとわかり、すぐに無理な要求は引っ込めて、笑顔でまともな交渉が始まります。



どうも日本企業は、国内の商習慣なのか何なのか、これからお付き合いが始まる相手を怒らせてはいけないと、どこまでも下手に出る傾向があるようです。



その負け戦の光景が、今回の藤崎百貨店さんの件で思い出されてなりませんでした。


今回、注文をキャンセルされた中国ファンは、喧嘩腰の勢いで藤崎さんにクレームを入れていたようです。


それによって相手が半歩でも譲歩してくれれば儲けもの、一言でも相手が謝罪を述べれば、悪いと思っているのなら誠意を見せろ、と畳み掛ける。


中国式交渉術、そのものです。


それに対して今回の藤崎百貨店さんの誠意ある対応は、本当に頭の下がるものでした。


一旦キャンセルした全ての事案を精査し直して、カードが使えないお客様には代引きができるようにしたり、お1人様1本というルールを破っていた客にも、キャンセル扱いではなく1本だけならお届けするようにしたり、海外への転送サービスと思われる業者にも販売するようにしたり。


怒り狂っていた中国ファンの要求を、ほぼ全て飲んだことになります。


まさにゴネたもん勝ち。

お客様は神様。


しかし本当は、お客様は神様なんかじゃありません。

店は客を選べるのです。

おかしな要求を突きつけて来る客は、相手にしなくて良いのです。


クレームをつければ、いうことを聞かせられる店だとナメられてはいけません。


藤崎百貨店さんがこれだけ誠意ある対応をしてくれたにもかかわらず、中国ファンは感謝するどころか、最初からきちんと対応しなかった方が悪いと、いまだに毒を吐き続けています。



今回の件で分かったと思いますが、どんなに誠意を尽くしても、通じない相手というのはいるのです。



何よりこの騒動で、羽生さんがどれほど心を痛めただろうかと思うと、いたたまれない気持ちになります。


あくまでも藤崎百貨店さんがこの玉虫塗ボールペンの企画販売をしてくださったのは、羽生さんへの感謝の気持ちを伝えるためだったという事を、忘れないようにしたいですね。