定休日の火曜、留守電に一件のメッセージが入っていました。


「橋本さん、いつもお世話になります。
あのぉ~せっかくいただいたお話なんですが、
僕、今回は見送らせていただきます…」


電話の主は男性会員のKさん(48歳)。


数日前、彼にお見合いを申し込んで来られた女性が
いらっしゃったので、早速その報告をしたのですが、
「お断り」のお返事でした。


Kさんが入会されてから3か月。

「やっと彼に第1号のお申し込みが入った!」と、
私も心が弾んだぶん、意外な答えに一瞬言葉を失ってしまいました。

お相手の女性は、彼より5歳年下の方。


学歴も高く、とても上品でその上、なかなかの美人。

本心を言えば
「えっ?あなたからKさんにお申し込みをするの?」と、
驚いたほどでした。


ここまでお話しすると、その流れから、

Kさんの人物像が何となく想像できたかも知れませんが、

その想像どおり、彼は、この「婚活の場」でお相手を見つけていくには、
正直不利な条件の持ち主です。


「ぜひあかね屋さんの力を借りて頑張っててみたいんです!
こんな僕ですが、入会させてください!」


「橋本さんの薦めてくださるお話なら、どんな方でも会います!」


なんて、入会された時の、彼の言葉には、
随分と力が入っていたのに・・・


でも、彼が今回のお話を断った気持もよく分かります。


Kさんはお申し込みをされてきた女性に、
興味が湧かなかったわけではないのです。


彼はお見合いをすることに「怖れ」を感じた。

そして、その「怖れ」に屈したのです。


Kさんが初めてあかね屋を訪ねて来た日を含め、
これまで何度も直接お話をしてきました。


その間、はっきりとは言わなかったものの、
察するに、彼は女性とお付き合いをした経験は無さそうです。


ずっと一人でいることが、
Kさんにとっての「慣れ親しんだ世界」。


この慣れ親しんだ世界の一歩外へ出ることは
想像以上に難しいのです。


彼のように「どうしても結婚したい!」と強く希望しながら、
いざ、お見合いとなると尻ごみしてしまう。

そんな人は他にも結構います。


結婚したいと願っている自分と、
慣れ親しんだ世界から出たくないもう一人の自分。


その人たちは、この「二人の自分」の間でもがいています。

結婚相談所に入会はしたものの、
まだ婚活を始める段階には進めていない。


その人たちには、まだまだ、時間が必要なようです。

さてこの数回、結婚にまつわる母親と娘の複雑な関係を
取り上げてきました。


不思議ですね、メルマガのような発信の場で、
こうした、あるゆる婚活にまつわるテーマや話題を取り上げると、
必ずと言っていいほど、同じような出来事や問題が起こります。


これこそ「引き寄せの法則」が作動しているのでしょう。


「ということは、今回も困ったお母さんの話ですか?」

はい、そのとおり。

大変申し訳ないのですが、今回も困ったお母さんの話です。


以前も似たテーマを書いたことがありましたが、
つい先日も、「この人、本当に正気なのか?」と、
疑いたくなるのようなお母さん出会ったので、そのことを書きます。


女性会員のEさんは、多くの出会いの機会を求めてあかね屋以外に
複数の結婚相談所に入会しています。


そして、数か月前、別の相談所でお見合いした男性とお付き合いに入り、
いよいよ成婚間近というところまで来ているようです。


たとえ他の相談所で成婚なされたとしても、
あかね屋の会員さんが夢を実現されたのなら、
私にとってそれ以上の喜びはありません。


ですからEさんの場合も、
ぜひ、順調にことが運ぶことを祈っていました。


そんなEさんのお母さんから、つい先日電話がありました。


その要件はEさんの縁談がまとまりそうで、
これから結納などの話を進めたいのですが、

お相手を引き合わせてくださった相談所の対応が頼りなく、
アドバイスだけを私のほうに求めて来られたのです。


しかし、お母さんの話を聞いていくうちに、
だんだんと私の胸はざわついて来ました。


Eさんのお父さんは大学教授です。


彼女のお母さんは、ただそれだけの理由で、
娘婿もそうでなければと決め、
大学教授以外の人とのお見合いは一切認めませんでした。


そして、その数件のお見合い中で出会われた一人の方と、
いいお話になり、「結納はいつ、どこで」というところまで
来たわけですが…


当のEさんはお相手の彼には、
まったく魅力を感じておらず、
ただお母さんの希望をかなえるために、
結婚を決めるとのことなのです。


もし、私が引き合わせたご縁であれば、
Eさん本人にとことんお話して、
この結婚を決めるか否かについて、
もう一度よく考えるように強く勧めますが…。


しかし、それにしても…
こうまでして自分の思うように子供を操りたいのでしょうか?


また、それを半ば仕方なしとするEさんの態度も、
私的には申し訳ないですが、共感できません。


Eさんのお母さんだけではなく、
自分の描いたストーリーに沿って、
娘の結婚を操作しようとされるお母さんは数多くいます。


「ウチの娘の結婚相手は海外勤務しているような人がいいんです、
どなたかいらっしゃいませんか?」

「海外でお仕事してる人でないとダメな理由ってあるんですか?」

「いえ、別にそういうわけではないんですけど、
何となく聞こえがいいでしょう?

それに私も娘に会いに海外旅行にも行けますし…」

「お嬢さんもそう望んでおられるのですか?」

「いえ、あの子は何も考えていないと思います」

「じゃぁ、あくまで海外勤務されている方というのは
お母さんの希望ですか?」

「ええ、そうですが、それが何か?」


こんな理由で、この娘さんのお相手を探すことは、
できればやりたくありません。


娘を意のままに操りたい母と、
しぶしぶながら母の願望を受け入れる娘。


このような家族とつながる男性が気の毒でなりません。

前回は親のエゴ(特に母)によって引き裂かれる男女の縁、
その理不尽さについて、私の思うところをお話ししました。


つい先日も、式場の予約まで済ませていたカップルが、
土壇場で破談となり、私もその後処理に手を取られました。


これも火種は女性側のお母さんでした。


まぁ、私としてはこれまで何10件と、
同じパターンによる破断の事後処理をしているので、
すでに慣れっこになっています。


ですが、このような親の行き過ぎた干渉によって起こる破断は、
一種の虐待に近い、いわば家庭内の「心の病」ではないかと・・・

そう思えてなりません。


同じような事態が起こる家庭には、
独特の親子関係があるように感じます。


それは母娘がお互いとも過剰に依存し合っているという関係です。


しかし、当のご本人はまったくその自覚はありません。


特徴的には「ウチの母は何でも相談できる友達のような人です」と、
やや自慢げに、親子関係の良さを
あえてアピールしてくるくらいのお嬢さんが、
最後にはこのパターンにはまり易い典型です。


30歳を過ぎても親元を離れず、
家でも料理一品作らない。掃除もしない。


「仕事が忙しい」を理由に家事はすべて母任せ。


そんな家庭環境の中で無自覚のうちに、
お互いの依存度が深まっていく。


ここで言う依存とは、娘は母によって今以上ない
「快適な生活」をすることができ、
母は娘の世話をすることで、「母親役」としての存在価値を
持ち続けることができる、という意味での依存。


このような契約関係が、母娘の間で、
無意識に成されているように見えます。


この実に平穏、平和な状態が、
娘の結婚によって一変するのです。


娘が家からいなくなれば「母親役」という存在価値が消滅する。

お母さんにとっては大問題です。


口では「あなたも幸せになりなさい」と言いながら、
お母さんの体の中に住むムシが騒ぎ出します。


「このままじゃ、私の生きる意味がなくなる!」と。


そこで娘の結婚相手に何かと難癖をつけ、
その結婚が無期延期あるいはご破算になるよう躍起になる。


こうなれば、相手方の男性やそのご家族も穏やかではなくなる。

「今からこんな調子じゃ先が思いやられる」と。


やがて一か月も経たないまま、縁談は白紙に戻る。


こうしたパターンの破断が起こるたび、いつも考えます。


この母娘はいったい何を得ようとしているんだろう?と。

たしかに、これまで30余年、

ありったけの愛情を注いで育て上げた愛娘を嫁に出すのは、
それは寂しいことでしょう。


しかし、この寂しさと向き合って、乗り越えてはじめて
「親としての自立」を経験することができ、それによって、
また一段、人としての「成長の階段」を昇れることができるのでないかと、
私は思うのです。


本当に自分の娘を愛しているのなら、依存し合うのではなく、
気持よく旅立たせることが、母親としての最高の世話焼きなのだと・・・。