両チームはホームベースを挟んで一列に向かい合った。グラウンド整備をしたので土が湿っている。時刻は10時を周り日が少し暖かく感じられるようになった。

「礼」
 
「「よろしくお願いします」」

梨崎のナインがそれぞれのポジションに広がっていく。

先発は土肥。長身から角度のあるタイプ。下半身はほっそりとしているがお尻が大きくスタミナ十分だ。少し色黒で歯が白くその顔からは笑みを浮かべている。自信のある証拠だ。

「絶対打ち崩す」

僕は不思議なことに先程の試合よりも目の前の相手に集中していた。スパイクが地面をとらえる感触、バットのグリップの質感を感じながらバッターボックスに入った。

「打てるよー」
「先頭きろー」

彼は振りかぶり、挨拶がわりの真っ直ぐをど真ん中に投げ込んできた。

僕はそれを不思議なくらい力みなく捉えた。

「抜けたー!」

結果はセンター前ヒット。僕は心の中でガッツポーズをし、サインを見る。

押沢は●を見ていた。

「だから要注意だって言ったのに」と彼女は誰かに聞こえるかどうかわからないぐらい声で呟いた。

試合前の梨崎でのミーティング

「やはり、▪️は要注意だ。全国トップクラスなだけある。じっくり観察して、急所を突け」と梨崎の監督は選手を奮い立たせた。

「誰か何かあるか?」

「はい」と押沢は真剣な目で監督に向かって手を挙げた。

「一番の●くんって子も要注意です。」

「ほう、なぜかね?」

「勘です」

「また勘かよ」チームメイトからはそんな声が聞こえる

「まあよい、押沢の勘はよく当たる。公式戦のつもりで相手してやれ。」

「「はい!」」

場面戻る

「さっきは勘って言ったけどおそらく動体視力、柔軟性、野球IQ、適応力は彼も全国トップクラス。彼が無意識に立っているであろうポジショニングがほとんどデータがないはずの2軍選手の飛ばす方向と完全にマッチしていた。それに気づいているのは■と、さっきから●くんをずっと見てる▲って女。なにあいつ。」

2番の▲の打席はすでに1-2と追い込まれていた。

「なんとか塁を進めないと」

しかし、呆気なく三振に打ち取られた。

「さて、どうやってプレッシャーをかけようか」と■は打席に向かった。