ジョン・ミルトンのParadise Lostです。これも、必読でしょう・・・・。
イギリスの17世紀の詩人で、シェイクスピアと若干被ってるけれど・・・ミルトンが8歳のときにシェイクスピアが亡くなっている計算になりますね。革命を生きたミルトン。どんな心情で描いたんでしょう・・・
旧約聖書の『創世記』を元に作られた叙事詩で、少なくても創世記の流れ程度は押さえていて、ギリシャ神話等も知っていなければしんどい。
・・・けれど、ホメロスやダンテを読んでいる人なら大丈夫だと思います。
ホメロスのほうがずううううーーーーっと読みにくい!
確かに壮大で、高尚。
この『失楽園』もかなり覚悟して読んだので、ほっとした気持ちが強かったです
訳は岩波文庫が主流なのかな??
注釈が巻末にまとまっていますが、これがかなり詳しくってこれを読んでいるだけでも楽しめるかと思います。
創世記・・ということで、やはりアダムとイヴも登場します。彼らが楽園を失うまでを描いた叙事詩で、去っていくところでちょうど終わります。
人類の祖とさせるアダム。
とにかく驚いたのは、ミルトン性欲を認めてますね。
え、それ、言っちゃっていいの????
互に手を取り合ったまま四阿の奥へ入っていった。
われわれが纏っている衣服という厄介な粉飾を脱ぐ煩雑さも彼らにはなく、
したがって肉体を列して横になった。
そして、おそらく、アダムが美しい妻に冷たく背を受けるということも、
また、イーヴが夫婦愛の秘儀を拒むということも、
ありえなかったと私は思う。
(→このあたり、かなり皮肉ってない??)
世間の偽善者どもは、純潔や場所の適否や無垢などについて
いかにも諤々の議論を述べたてるが、それは彼らの自由だ。
要するに、彼らは、神が純なるものとして祝し、在る者には命じ、
すべての者にはその選択の自由を認め給うところのものを、
不純だと称して貶しているにすぎないのだ。
創造者は、生めよ繁殖せよと命じておられる・・・・・(P202)
なんですって。
読書メーターの感想等を見ていてもサタンに注目する人が多いようですが・・・
面白いなと思ったのがこの『失楽園』読む人ってホメロスやダンテ読んでる人が殆どみたいですね。(ダンテって関連書しか読んでないよー)
堕天使サタンは楽園を訪ね、アダムとイヴに会います。
優美で幸福そうに見える2人に落胆しますが、それでもこの2人を堕落させようとする・・・
そして、知恵の樹になる、あの有名な禁断の実を食べさせようとするのですね。
サタンが蛇に入り込んで、そそのかされてイヴが食べた・・・という感じ。
蛇には元々足があったけれど、それで無残にも、一生地面に這いつくばれ!!ってことでああいった姿になったことになってます。
だから蛇って悪の象徴だったり、知の象徴だったり。ギリシャ神話じゃアスクレピオスの杖にもなっているし、
それこそハリー・ポッターじゃスリザリンのシンボルにもなってますよね??
個人的に、J.K.ローリングって本当に勉強家で読書家だったと思います。名前の由来とか凄いし。
ハーマイオニーだって、あれ、シェイクスピアの『冬物語』からだし。(嬉しい)
あっ話がズレました・・・
とにかく、サタンが禁断の実を食べさせようとする過程がとても興味深い。
イヴが悪い夢を見て、アダムが慰めます。
その夢の中で、こう、言われるのですね。
『こんなに果実がたわわに生っているのに、それを軽くしてやり、
お前の甘い味を口にしようとする者が誰もいないのか?
天使にも人間にもいないのか?
知識はそんなに軽蔑されているのか?
それとも、なんらかの悪意、或は、なんらかの禁制が、お前を味わうことを禁じているのか?
だが、誰が禁じているにせよ、目の前に与えられているこの善きものを、
これ以上見逃すことはできぬ。
でなければ、なぜここに置かれているのだ?』(P224)
→これ、凄く恐ろしいことだと思う・・・。思わず身体に電流が走ったような気がしました。物事は全て考え次第だし、「でなければ、なぜここに置かれているのだ?」って・・・・怖くない??食べちゃうんじゃない?
まだ疑う、ということなんて知らないだろうし、悪っていう概念なんてないでしょう。
イヴは彼がその実を掴み、食べるのを見て恐ろしくなり身震いするのですが・・・
サタンが更にこう続けます。
『ああ、聖なる樹の実よ!
もともと甘いとはいえこうやって摘んで食べる時の甘さはまた格別だ』
→”こうやって”って・・・悪いことをして、ってことでしょ??
悪事の後だと、尚更”甘く”感じる――そういうことってあるのかな。批判しているようにしか思えません。
『これが禁じられているのは、神々にのみふさわしいからでなく、
人間を神々たらしめる力があるからに違いない!
だが、人間が神々になってなぜ悪いのか?
善は多くの者に頒かれたるに従いいっそう栄え、
しかもその源は損なわれるどこrか、増々崇められるはずだ!』
→もはや危険思想。恐らく、『失楽園』を読んだ方から見れば「え、引っかかるの、そこ?」と思われてしまうで しょうが・・・とにかくここでした。
もう怖すぎます
イヴにひたすら警告をしていたアダム。何者かが騙そうとしているし、イヴがひとりでいるところをその何者かが見たら尚更危ないよ、と言うと「大丈夫よ!!」とムキになるイヴ。
その結果・・・蛇(サタン)に騙され実を食してしまうんですね。
その事実を知ったアダムは恐れおののきます。
でも、あなたのいない人生など・・・と、罰せられるイヴを思い、自らも口にする。
アダムはイヴを愛していたからこそ、食べたのです。
でもそれって神から見れば、冒涜になってしまう。
全知全能の神よりも、アダムは恐れ多くも単なる一人間を優先させてしまった・・・・
サタンの仲間たちも罰を受けるのですが(上記のよう)同じ禁断の実が何故だか目の前にある。
罠かもしれない、と感じつつも喉の渇きと空腹感に耐えられず、夢中になって食べる。
しかし、その美しい実は灰で・・苦くてたまらない。→でも、また食べるの繰り返し。
サタンは何故そこまでするのか、というと・・・
人類に対する嫉妬、または神に対する嫉妬心らしいんですよね。
アダムとイヴはこの楽園を去ることになりますが、その前に未来を見せてもらいます。
バベルの塔、ノアなども登場。アダムは当然驚きますが、いや、それってアナタが人類の祖なんだから、アナタが原因じゃないの??とか思いつつ。
裏切られた神と、アダムには共感を覚えますが・・・
えっ、どこがイヴは無垢なのよ??と、若干イライラしてきました。
ダンテの『神曲』と並ぶ、超有名な作品です。
ミルトンって特に本読んでいても出てきますし、読んでおいてよかったー。
とても深く、考えさせられ、読んでいて泣きそうになってきました。(私キリスト教徒とかじゃないですよー)
これ、今年読んだ古典の中でいちばん好きかも。
2009年度BEST BOOKでランキングインしそうな予感です^^
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