アンクル・トムの小屋。聞いたことありますか?

 ベストセラーになり、あのアメリカの南北戦争を引き起こした直接的な原因となった、とまで言われているアンクル・トムという黒人奴隷が主人公の小説です。

 リンカン大統領が著者のストウ夫人に会った時に「あなたがこの大きな戦争を起こした小さなご婦人ですね」と言ったのは有名な話です汗



 私はこの本のタイトルをM・ミッチェルの『風と共に去りぬ』の小説の中で知りました。何度も何度もこのタイトルが出てくる出てくるびっくり

 南部出身のミッチェルは相当この本が嫌いだったのでしょうね。小説内で痛烈に風刺しています。

 スカーレットはヤンキー(南部に住む人間から見た北部人に対する蔑称)に本当に『アンクル・トム』の中で行われている黒人奴隷を鞭で打ったりしているのか?だとか、鞭を見せてほしいだとか言われ、自分の家では黒人奴隷に対してそんなことはしていなかったと言っても信じてもらえず、イラつく場面があったりしました。



 アフィリエイトにも載せたアンクル・トムの小屋』を読む―反奴隷制小説の多様性と文化的衝撃も読みました。

 あまりにもこの両作品の奴隷制の描き方が違うんです。言ってしまえば、どちらも両極端であり、ストウ夫人なんて一度も南部に行ったことがなく、自分の目で見て描いたわけではなく言ってしまえば「単なる空想に過ぎない」わけであり、当然奴隷制擁護者から相当なバッシングを受けました。

 全面にキリスト教の素晴らしさを押し出しており、なんか・・・全体像が描かれていないというか。宗教色が強すぎて、キリスト教信者が読むにはいいかもしれないけれど私にとってはかなり違和感がありました。欲張りすぎ、というか・・・読み終わっても「なんて可哀想なトム!!」と純粋に思えなかったです。

 やはり両極端なんです。トムは、もちろん善で、エヴァという天使のような少女も善。そして、トムに残忍な扱いをし、遂には死に至らしめた新しい主人のレグリーは悪。

 善と悪しか描かれていない。グレーがないんです。・・はグレーと言ってもいいかもしれませんが、先に『風と共に去りぬ』を読んでしまったせいか違和感ありまくり!



 結局、どちらがアメリカの歴史上正しいのか?と、この2つの作品では決して外すことのできない南北戦争を中心に調べては見ましたが、そういった歴史書も本によって大分異なるんですよね。

 「ストウ夫人は適当なことを書いている。現実的に、奴隷を鞭打つようなことはなかった」と断言している本もあったり。うーん、ない、とは言えないと思うのですが。

 

 リンカン大統領は必ず世界の好きな偉人ベスト50とかにランクインするような偉大な大統領だと・・・思っていたのですが、なんか調べていくうちにリンカン嫌いになりました。

 そりゃ、「南部は奴隷を所持しているが、それは人道的に間違っている。奴隷を解放するためだ、これはだから『聖戦』なんだ!」と言えば、一般市民には受けは良いでしょう。聖戦、です。正義です。

 でも南部側が北部に奴隷を開放するからという条件で停戦(終戦だったかな・・)を申し込んだ時に、リンカンは拒否しているんですね。あれ?奴隷解放が目的なんじゃなかったの?なんで止めないの?これじゃ、某元アメリカ大統領と変わらないんじゃ・・。なんか、単に聞こえのいい聖戦、なんて文句を用いて、国民その気にさせて、ただ戦争したかっただけじゃないかと疑いたくなります。

 ただ、彼は昔から奴隷制には反対だったことは確かなようですけれども。



 人民の、人民による、人民のための政治。有名すぎるゲティスバーグの演説を行ったリンカン大統領。(リンカーンは発音的に間違っているそうですね)

 また奴隷解放宣言を行ったことも有名です。

 しかし、奴隷は解放されても行く場所はない。当たり前のことですが、一切教育を受けていないので読み書きすら出来ない。奴隷として人権もなく、苛酷な条件で無理やり働かされていても主人は奴隷が働いてくれないと困るから、最低限の食事と住居は与えられていた。

 でも、いきなり開放です。

 微々たる給料を得たり、土地を得て生計を立てた元奴隷もいたことはいたでしょうが、大部分は都心に流れ込み、当然大混乱。

 


 開放されたところで黒人が認められたわけでもなく、未だに激しい嫌悪感を抱かれている状態です。食事にすらありつけず、のたれ死ぬ者も多かったとか・・・

 黒人による暴力事件も多く、ストレスが溜まった白人たちは集団で黒人をリンチした、なんてしょっちゅうだったそうですし、一概には言えないでしょうが、開放されたことでより生活が苦しくなった例も多かったようですね。

 奴隷制が正しい、なんて全く思っておりませんし、勿論人道的にも反対ですが、もうちょっと対策できなかったのかな・・・

 奴隷制は決してアメリカだけの問題ではないし、ヨーロッパにだってあったんだからあまりあーだこーだ言えないような。お前だけが悪いんだー!って責めるのってなんかおかしい。

 そもそも、間違いなく北部にも綿花が栽培できたら奴隷制度、あったよね、と思います・・・私見に過ぎませんけどね。


 『アンクル・トムの小屋』の話よりも圧倒的に奴隷制のことばかり・・・ですね汗

これをきっかけに奴隷制に大変興味を持つようになりました。でも、やっぱこの本好きじゃない・・・。 『風と共に去りぬ』と『アンクル・トムの小屋』の両側から見た奴隷制について大学1年の時何度もレポート書いたし、何故か当時の彼氏と議論して喧嘩になったりしましたね(苦笑)


 ウィキペディア(ウィキの正確さには微妙なところがありますが・・・恐らく本当のことでしょう)によると、「アンクル・トム」とは黒人の間で白人に媚を売る黒人、卑屈で白人に従順な黒人という意味にもされているそうです。

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