先日、アメリカ大使館のルーク政治担当公使らと懇談する機会があった。民主党、自民党、公明党のそれぞれ外交担当の議員が招かれた。一部の新聞がこれを取り上げ、米側のこの会を開催した狙いは前原外相が北朝鮮との直接交渉に意欲を示していることを警戒しているのではないかと報じていた。


 確かにテーマは、北朝鮮問題であり、この分野での新進気鋭の学者である礒崎敦仁慶大講師(『LIVE講義 北朝鮮入門』の著者)も参加していたので、関心の一つではあったろう。この時期になぜ、三党の関係者と北朝鮮問題を、との疑問はあるものの、幅広い観点からの自由闊達な意見をたたかわしたというところだ。私の受け止めとしては、米側はそれほど深刻にとらえているとは思えなかった。オープンな会ではないため、詳細に語るわけにはいかないが、恐らくは菅政権の迷走ぶりから、日本の政局を見極めようということであったろうと思われる。


 なかでも、礒崎さんの北朝鮮情勢報告は興味深かった。北朝鮮は、民衆の生活は依然として厳しいものの、皆こんなものだと感じていて、いわば“低値安定”といったところだといわれる。金正日総書記は、自身の死後の国の体制維持を案じ、若い三男の金正雲氏を登用したが、いまその体制を支える布陣が出来あがり、安心している風もうかがえるという。知らなかったが、北朝鮮ではエジプト製の携帯電話が出回っている。ムバラク政権が崩壊に至り、北朝鮮も今ごろエジプトのような事態がくるのではないかと恐れているかも、との指摘をしあった。


 話題は様々にとび盛り上がったが、さすがに鳩山前首相の抑止力をめぐっての「方便」発言については、あまりに恥ずかしくて米側の感想など聞けなかった。