男は本当に、　つら～い　せつない～

「女は三界に家無し」
女は、幼少のときは親に従い、嫁に行っては夫に従い、老いては子に従わなければならないものであるから、この広い世界で、どこにも安住できるところがない。

これは、昔の偉～い人達が、本来は強い女の本性を少しでもおさえるように女に暗示をかけて、そう思い込ませようとした。
そうすることによって、少しでも弱い男に自信を持たせて世の中の均衡を保とうとしたのである。

余程、女は従わないものらしく同じ意味の言葉がここにもある。
江戸時代に『女大学』という教訓書がある。

【婦人三従の道】
婦人には、三従の道あり。凡そ婦人は、柔和にして、人に従ふを道とす。わが心にまかせて行ふべからず。
父の家にありては父に従ひ、夫の家にゆきては夫に従ひ、夫死しては子に従ふを三従といふ。身を終はるまで、わがままに事を行ふべからず。必ず人に従ひてなすべし。

これは、昔から女は従わず、男は泣かされて来たと言う証しである。

現代はこんな教訓は紙屑箱に捨てられ、女の本性がむき出しになり、再び男は泣かされているのである。
幼少の頃は、男の子が生まれたと少しは喜ばれもしたが(今はそんなことはない)、学校に入れば口では女の子に勝てず、いつも悪者にされ、嫁を貰えば稼ぎが少ない、出世しないと馬鹿にされ、子どもが生まれれば子どもは「母ちゃん、母ちゃん」と嫁になつき、父親は恥ずかしい存在に置かれる。

老いては孫は「婆ちゃんの家」と言って、決して「爺ちゃんの家」とは言わない。
そして、爺ちゃんが呆けたり、ヨボヨボになる前に亡くなることが婆ちゃんの幸せにつながると信じられている。
ここまではワシじゃ。

ここから武田鉄也の「今朝の三枚おろし」にはいる。
この方は〇〇会社の社長を経験なさった後、会長をお勤めになって70代に入られて会社から身を引かれた。
そんな「名を成した方」がいると思ってください。
世の中にはいっぱいいる。
その方が家庭に入られた。
「これからは趣味のバラづくりでもやってみようかと思ってね」とか何か言いながら。
それで家に入った。

ある夜のこと、60代の気付きの頂点に達した奥様から「ちょっとパパ、お使いしてくれる？牛乳と玉子二つ買ってきて」と言われた。
ただし奥様は健康にもの凄く気を遣われる方。
だから牛乳の脂肪分、殺菌方法、パッケージの裏側を見ながら「〇％以下じゃないとダメよ。パパ忘れるといけないから」と言いながらメモを書く。
それで駅前の高いところへ行って牛乳をひたすら求めた。
注文が多かったから、それでやっと見付けた。
「牛乳手に入った」と思って、家に帰ってきた。
「どうもありがとね、パパ」と言いながら、牛乳を手のひらに乗せたら奥様がもう一つ手を出された。
「何？この手は？」
「パパ、玉子は？」

玉子二個を忘れた。
たちまち曇る奥様の表情、奥様は何とおっしゃったか？
「二つできないの？社長やって会長やって二つできないの？用事が････」
「いやいや、わかったよわかったよ。行ってくるよぉ。車のキー貸して」
「もうさっき車庫のシャッター閉めたでしょ!?自転車で行ってくればいいじゃない！」

70半ば過ぎた方が、またもう一度マーケットまで玉子二個を求めてペダルを漕ぐ。
その時に夜の雨がザーッと降り出した。
ペダルを漕ぎながら彼の両目から涙がスーッと流れたという。
70を四つ過ぎてのおつかい。
つら～い。
思えば生まれて初めてのおつかいの時もそうだったが、最後のおつかいの時も涙が出るとは・・・
切ない。