もうすぐ教え子に修了証を出すことになっている。
「あゆみさん」だ。
ハットリ・メソッド手相。
彼女が学び始めてかれこれ4年になる。ラク
「タロットは難しいけど手相はラク」という。
「みんなどうして手相が難しいというのかわからない」とも。
今修了コース全六回に入っている。
今年度中には終了する。
先日のレッスン中に、
彼女がわたしの顔をまじまじと見た。
まじまじと見たからと云って、
なにもない。
あゆみさんは云った。
「センセイ、目の下に黒いものができてますね?」
わたしは老眼なのでときおりメガネをかけている。
天眼鏡のような厚いレンズがついている。
だから、目の下のホクロがよく見えたのだろう。
「それ、なんですか?」
なんですかと問われるまでもなく、
目の下のホクロだ。
手相・タロットの生徒さんとはいえ、
ときには人相の話もする。
「ここは臥蚕(がさん」。下にあるのが涙堂(るいどう)」
二つをまとめて男女宮と呼ぶ。
子供運とか性的な能力をあらわす部位とされる。
ならば、そこにホクロがあるのだから、
「元気に満ちあふれている」かと言ったら
それはただの老いたるものの遠吠えだ。
綺麗なホクロだったらはそう云ってもいいだろうが、
わたしの場合はきれいな「黒」ではない。
つまり
アスリートたちによくみられる
涙堂のきれいなホクロと違い、
元気さが衰えてきたあかしなのか、
あるいは「自分で思っているほどお前は元気ではないぞ」
という天からの忠告だとするのが正しい。
それでもわたしは見栄を張り、
ここにホクロがあることはアスリートと同じだ、
元気な老人だ、などと断言したかもしれない。
あゆみさんが人相の生徒さんでなかったからこそ
こう云うことが許されることにしておこう…。