こんばんは。

最近ブログ更新激しめです。(笑)
鉄は熱いうちに打てじゃないけど、読んですぐ文字に起こさないと熱が冷めちゃうからね。スピードが命なのです。
ココスでハッピーバースデーの曲聞きながら、隣で店員さんがタンバリンシャンシャンやってる中ブログ書きます。シュール。

さてさて、結局買いましたよ。「変身のニュース」で天才と絶賛させて頂いた宮崎夏次系の別作品。

「夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない」。

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タイトル。(笑)

「僕は問題ありません」も同時に買ったのだけど、こっちはまだ大事にとっておいてあります。

「変身のニュース」と比べると、だいぶ過激で暴力的な表現が多い気がした。宮崎夏次系の作品はぶっ飛んでいるようで、一冊を通してまとまったテーマがあるように感じる。「変身のニュース」はタイトル通り「変身」によって登場人物の世界が変わる瞬間が共通して描かれており、「夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない」はセンシティブな人間関係が共通したテーマかなと。
対人関係は接近すればするほどに相手を傷つける可能性が増す、という思想の中でその在り方に苦悩する人々の話。ゆえに関係維持のために接近しない。他人を傷つけるかわりに自分を傷つける。対人関係の中でたまるフラストレーションが息苦しさを増大させる。本作はそんな現実世界でもよく起こる葛藤を生々しく描いている。

なんかね、「変身のニュース」でもそうだったのだけど、宮崎夏次系の作品は第1話がすっと頭に入ってこないのよ。(笑)いまいちピンとこないので最初は不安になるのだけど、何話か読むうちに軌道に乗ってくる。雑味のない「夜とコンクリート」を読んだ後だから余計にかな。いい意味でくせ者。

もう、第1話から電車の到着を知らせるアナウンスの音が「ポコ○ンポコ○ン」って。(笑)
なかなかいい感じに狂ったスタートだな。がっちり心掴まれたわ。

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私が特に好きだったのは、表題作の「夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない」「リビングで」「毎日」「なほちゃんの白いたまごやき」。

「夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない」は、やっぱり大好き。何度読んでも良い。ちょっとあらすじは短めで。この後が長いからね。(笑)
主人公の女の子は、毎晩隣の家の男の子が全裸で外に立っているのを目撃する。
だけど、いつもその男の子は車椅子に乗り、酸素ボンベをつけて、病気の“フリ”をしている。自分の存在が家の平穏を保っているとわかった上で、彼は敢えて演じているのだと。
「弱い者無しにこの家が成り立たない事を彼は知ってるんだ。それに比べて自分はなんて自覚の足りない子供だろう。」と女の子は思う。

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特に印象的な場面で、母親が男の子を車椅子から川へと投げ落とすシーンは、息を呑んだ。

川に落ちる彼を背に、ぐっと目をつぶり、

「耐えろ 隣人よ 私達は 生まれる場所を選べない」

という女の子の言葉が痛いほどに刺さる。

月日が経ち、いつの間にか隣の彼は引っ越しており、また別の家族が越してきた。

そして、女の子の家の留守電に入っていたのは、

「僕のちん○んは変な形。その事を誰かに覚えててほしくて、毎晩驚かせてごめんなさい。」

という男の子からのメッセージ。

最後、「今はもうあの子の顔も思い出せない」という言葉と共に、女の子は雪だるま?を作っているのだけど、それが完全にソレの形。

なんだろう。この作者、男性の“あの部分”をよく出してくるけど、性的なものというよりは、恐らく自我の象徴のようなことなんだろうな。
色白で綺麗な顔立ちで、女の子のようなか弱い見た目の彼が、自分を偽って生きていた彼が、唯一自分を主張できるのがソレだったのかなと。
「変身のニュース」でもあったね。第1話で「金○」(自粛)。

「リビングで」は、親子3人の物語。リビングで妻と夫がいつも通りに過ごしていると、突然夫の頭から「ポン」と大きな音が鳴り、夫は気を失って倒れる。目が覚めたかと思えば、夫はなぜか犬になりきっていて、以前飼っていた犬のゲージに入って眠り、犬のように吠え、人間の言葉は話してくれない。妻は当然、困惑するのだが、小学校低学年であるはずの息子のジロはというと驚くほど冷静で、「首輪にしろ身分証にしろ持たせないと」「ハイカイしてご近所に迷惑かけたら大変だよ」と母親に言ったりする。
犬になりきってしまった夫を見た妻は、夫の会社に休職を頼むため電話をかけるが、そこで初めて夫がすでに会社からリストラされていたことを知る。また、小学生が楽しそうに遊ぶ姿を見た妻の、「ジロ あんたケイドロは」という問いかけに対する「僕みたいな嫌われ者がまじれるわけないよ 知らなかった?」というセリフから、周りから仲間はずれにされていることがわかる。
夫のリストラ、息子のいじめ、これらはどれも社会的な問題だ。敢えてそれを見て見ぬ振りをして、正面から向き合わなかった妻に突きつけられた現実。しかし、「きっと少し休めば元通りになる」とあくまでいつも通りの日常を貫こうとする母親に対してジロが暴れて、「クソったれだ」というシーンに戦慄。
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子供は嘘をつかないというか、よっぽど息子の方が現実と向き合って生きている。大人になると、ズルく逃げようとするようになるから、子供のときの真っ直ぐな感覚を失くしたら人間ダメになる気がした。

また別の物語である「毎日」は、結婚してるのかな?それとも同棲中なのかな?の男女2人のお話。彼は、毎日神社の湧き水を汲みに出かける。朝その水でコーヒーを淹れるためだ。時間が来たら会社に出かける。ある日、彼がいつものように神社に行くと、水は凍っていた。だから水道の水でコーヒーを淹れる。彼は「おいしい?」と彼女に聞くと「おいしいよ」と言って飲んでいる。「汲みたてのお水はおいしいね」とも言う。

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その瞬間、彼は、「ふと、彼女を殴りたくなる」と思った。

なにかがおかしい。彼の気持ちは届いていない。愛情を込めても、その労力は特に報われないということに彼は気づいてしまったのだろう。愛が疑いにかけられると、ただただ引き延ばされた毎日がだらだらと続く。毎日毎日。
部屋に虫が入ってきたから助けてと言う彼女を無視して彼は狸寝入り。そうすることによって彼女を懲らしめる。そしてそれは愛の確認でもあるようだ。本当に自分は彼女を愛しているのかと。

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また朝。コーヒーもある。特に描かれていないが汲み水を使ったものだという感じがする。編み物をする彼女は可愛い。なんの疑いもなければ誰もが羨む至福の朝だ。
だけども、もうこの毎日に耐えられない。明確に知ってしまった。彼はこの「毎日」の裏側を見てしまったのだ。その怒りは彼女へ向かいそうになるが、彼は一歩手前でとどまり、手に持っていたアイロンを自分の顔へと押し当てる。彼の行為は、愛する者へなにかを期待したことを罰するもの?かな。
最後は、顔にアイロンの形の火傷を残して、彼はいつも通り彼女に手を振り、仕事へと向かう。
人間関係なんて疑い出したらきりがないのはわかっている。何かを変えようとしても、当たり前のように毎日はやってくるし、また明日も彼はコーヒーを淹れ、仕事へ行くのだろう。そんな彼の葛藤する気持ちのやり場のなさ、虚しさが伝わる。

「なほちゃんの白いたまごやき」は「毎日」とすごく似ている。彼女であるなほちゃんの作った料理がすべて缶詰(レトルト)であるという事実を知り、彼氏は衝撃を受ける。それがどうした、それでも僕は彼女を愛していると彼は思おうとするのだが、うまくいかない。そして、彼は、「これがなければ何も出来ない女なんだ サギやろう」と彼女の目の前で缶切りを窓から外へとぶん投げる。

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「拾ってこいよクソ女」。という彼の言葉もすごい。

傷つけて愛の確認をしようとするのも「毎日」とそっくりだ。
彼は缶詰の料理、つまり虚偽の愛情に浸かっていて、それに対して反発もあり、傷つけて愛の確認をする。
最後のシーン。海に落ちた缶切りを拾ってドロドロに汚れた彼女は、それでも懲りずにきりきりと缶を開ける。
彼はなにかがおかしいと引っ掛かりながらも、虚偽の愛は日々循環していく。

なかなかにバイオレンスじゃないか。でもやっぱり不思議なのは、読み終えたあとの謎の清々しさ。
完全に人間のダークサイドを描いているのに、なんだろうね。

そして、やはり天才はどの作品でも天才だ。ブレない。それは証明された。

ブログが白熱してきたので、そろそろおしまい。
ココスにいくら投資してるんだ私。
名誉会員にでもなれるんじゃないか私。

帰ろう。それでは。