小学校(低学年)の時の話。

【頭抜けて怖い威圧感マシマシの先生】

きっとどの学校にもそういう枠の先生って居たはずだ。
大体その枠の先生は生徒指導的な先生であり、授業はしない。
全校集会のような生徒が全員集まる時に校長先生や教頭先生の真横に立ちTPOを弁えないジャージで威圧感を撒き散らす。
今思うと「お前もオフィスカジュアル的な格好してこいよ」と思うけど6~7才の小僧には生まれて初めて目にするヤクザのようなものでとにかく怖かった。

うちの小学校に居たのがエンドウ先生。
身に纏う雰囲気がもう途轍も無く怖い。
怒りっぽい体育教師的な感じでも無く、激昂した所も見た事無いが、笑ってる所も見た事が無い。
バトルロワイヤルの時のビートたけしのような冷酷な怖さを感じる先生だ。
スキンヘッドに薄〜い色のサングラス。その奥の目はギョロっと怪しい。
背格好はたけしさんと同じで、少し小柄で中肉体型。
感情を捨てたような表情で何を見て、何を感じているのか察しが全くつかない怖さがあった。

とある日、交通安全教室があった。体育館に全校生徒が呼び出され、警察官の人から交通安全を学ぶというよくあるやつ。
生徒達の前には自転車が置かれていて、警察官の人が正しい乗り方を実践しながらレクチャーしてくれる。

この会のテーマは「ヘルメットの重要さを学ぶ。」

ヘルメットを被って自転車に乗っていれば事故にあっても命は守られるよという事を警官の人達が子供達に伝える。
最後にヘルメットの頑丈さを見せる為にトンカチでヘルメットを叩いて見せる警官。感心する子供達。
良い勉強になりましたねと締めの言葉に掛かる校長先生。

とその時だ

体育館の大きな扉が開いた。
そこにはヘルメットを被りママチャリに跨ったエンドウ先生が居た。扉が開くやいなやエンドウ先生は扉から生徒の前までの10数メートルの距離を全速力で漕ぎ始めた。大人が全力で漕ぐわけだから当然ながら凄いスピードだ。
そして、生徒の前に差し掛かった時、エンドウ先生は急ブレーキを掛けた。もちろん、トップスピードから急ブレーキを掛けた自転車は後輪が一気に浮き上がり逆ウィリー状態になる。サドルから投げ出されるエンドウ先生。そのまま自転車はバランスを崩し倒れる。投げ出されたエンドウ先生は宙を舞い、空中で一回転した後、地面に強く叩きつけられる。
突然の大クラッシュに子供達、警官、他の教師達そこにいる全ての人間が呆気に取られ、言葉を失った。

地面に伏せたエンドウ先生が何事も無かったようにスッと立ち上がる。生徒の方を振り返り
「ヘルメットがあるから大丈夫だ」と呟くように言った。
子供達も大人達も皆思ったはず

「話入ってこねぇよ」

もうヘルメットなんてどうでもいい。
交通安全なんてどうでもいい。
「エンドウ先生が宙を舞った。大クラッシュして吹き飛ばされた。」
それしか頭に入ってこない。

空中でも地面に叩きつけられた時も顔色一つ変えなかった。
プロだなと子供ながらに思った。