ユリの束縛の事を書いていて、昔の交際相手もそういえば同じように束縛・被害妄想の強い女性だったことを思い出した。

 

その女性は、私が初めてお付き合いしたハルカという女性だった。高校生の時に同じクラスになり、全員が順番に教壇に立って自己紹介をするときにもう「かわいい子だな」と思ったのを覚えている。

 

今では時代的に許されないだろうけど、当時私の学校では学園祭の時にミスコンのようなものがあった。もちろん生徒が勝手にやる非公式イベントである。ハルカは、男子生徒による投票でクラスで3番目の人気だった。

 

女子生徒が投票するミスコンの男版もあるのだが、全く票の入らない私からすれば、高嶺の花といってもいい相手だった。

 

おそらく体育祭のようなイベントがきっかけだったと思うが、何らかの作業をハルカと一緒に担当することになり、話す間柄になった。そこから、私が得意な科目を彼女に教えるような形で徐々に親密になり、ハルカの悩みを聞いたりしているうちに信頼関係ができていった。私から交際を申し込み、OKを貰ったのだった。

 

ハルカの束縛に気づいたのは、高校卒業後、お互いが別々の大学に進学したことがきっかけだった。周りにどんな女性がいるのかを逐一チェックするのはユリと同じだった。

 

私は大学の時間割を提出させられて、空きコマが2時間以上続く場合は、数駅となりのハルカの大学に通って会うのがルールだった。その往復区間が、通学定期の範囲内だったのは小さな救いだった。

 

ハルカは私のカバンや携帯をチェックしたがった。初めて「ちょっと携帯見せて」と言われたとき、私は「え、なんで?」と聞いた。

 

するとハルカは突如「携帯見られるの嫌なんだ?何か見られたらマズいメールがあるんでしょ!」と激昂した。勝手に被害を妄想し、自分で自分の怒りを増幅させる姿に、私は驚いた。

 

カバンのチェックも同様だった。断る=見せられないものがある=女の証拠がある=私は裏切られた=怒り続ける、ということらしい。

 

私の携帯からもカバンからも何もやましいものは出てこないのだが、ハルカのガサ入れ癖は治まらなかった。

 

高校では毎日顔を合わせていたし閉じたコミュニティだったので、無意識のうちに浮気されない安心感があったのだろう。別々の大学に進んだことで始まったハルカの束縛に辟易し、付き合いは大学一年の秋には終わった。

 

家が裕福、子どもの頃から音楽を習っている、そして束縛が強いという点は、ユリとハルカの共通点だ。

 

家が裕福、そして小さい頃からお金のかかる習い事を続けるというのは、私が欲しくても手に入らなかったものだ。知らず知らずのうちに、似たような女性に惹かれていたのかも知れない。