正直にいうと

ノブくんに愛される誰かのとこがうらやましくて仕方ないし

ノブくんには幸せになってほしいけど

それがあたし以外の人とだったら

到底幸せなんて願えない。



嫌だよ。


嫌だ。




お願いだから そばにいてよ。






あたしはきっとノブくんのことを嫌いになんかなれない。

ノブくんのことを思い出すときは

いつも愛しい気持ちになると思うんだ。



だって ノブくんはやさしかったから。


ぶっきらぼうだけど

やさしかったよ。





最後くらい ずるいとこ見せて

幻滅させてくれたらよかったのに

最後までノブくんはかっこよかった。



好きな気持ちは 揺るがない。



ホントのトモダチにはなれないかもしれない。

あたしはきっとノブくんに対する想いを消すことができないから。


でもノブくんがトモダチならあたしとの関係を絶たないでくれるというなら

トモダチ、やるよ。


嘘をつくのは苦手じゃない。



キレイな別れなんてないと思う。


だけどあたしは

自分がいくら泣いても苦しくてもいいから

ノブくんの中では思い出したとき困るような存在でありたくない。


幸せにできないならせめて

苦しめることのないように。



連絡をするなというのならもうしません。

待つなというのなら待ちません。


俺のこと好きでいるのはやめてくれと言われたら困っちゃうけど

もう好きじゃないふりくらいやってみせる。



情けないけど

これがノブくんのためにあたしができる唯一のことだから。


夢も希望もなくなったと思った。

これから何を支えに生きていけばいいのかわからなかった。



ノブくんがいないなら

もう何もいらないと思った。


何も必要ないと思った。


もう 何もいらない。


今日の夕ごはんの材料が入った買い物袋も

冷蔵庫の中の缶チューハイも

灰皿もいろいろ買いそろえた入浴剤も


このアパートも


あたしも。




ノブくんがいないなら何も意味ない。




あたしはこれから何のために生きていけばいいんだろう。



一体どこから いつから



ねぇ あたしじゃだめだった?




「ノブくん、大好き。」



それはずっと言いたかったけど言えなかった言葉。



ノブくんは 何も答えなかった。




「また会えるよね?」




「うん。」



そしてノブくんは自分の体からあたしを離した。

涙でぐちゃぐちゃの顔を見られたくなくて

あたしはうつむいた。



「お前が嫌じゃなければ」



涙があふれる。


嫌なわけないじゃない。

あたしがノブくんを 嫌いになるわけないじゃない。


だけど口が動かない。

首を横に振るのが精いっぱいだった。




いつまでも泣きやまないあたしの頭の上に

ノブくんの手が乗る。

やっとうまく呼吸ができるようになった。



「また、連絡してくれる?」



「あぁ、連絡は絶対する。

このままにするつもりはないし。」




次にノブくんから連絡がくるときは

きっと付き合うことになったという報告のあるときだろうと思った。


だけど それでも

ノブくんとこれっきり会えないわけじゃないと思うと

少しは希望がもてる気がした。


ノブくんに触れることができなくてもいい。

一緒の時間を過ごせればいい。

友達でも それ以下でも

会えなくなるよりはずっとましだ。



「…わかった。 

…待ってる。」





「あぁ。でも待たんくていいに。

他に…いいやつがいたらそっち行っていいんだし…」




バカだね。

そういう意味で「待ってる」って言ったわけじゃないのに。


ノブくんは本当に あたしのもとには戻らないんだね。



でも何も言えなかった。

首を振ることしかできなかった。



「じゃあ…俺行くわ。」



「うん、じゃあね」



いつもならドアを開けようとするノブくんの服のすそをつかみながら

キスをして送り出してたのに

もう触れることすらできない。



このドアが閉まったら

もしかしたらノブくんにはもう会えないかもしれない。


いいの?




でも結局あたしはその場から

動くことができなかった。




ドアが閉まり

エンジンのかかる音がする。





やっぱりさよならは 言えないよ。