平成28年2月19日衆議院第2議員会館にて、「幼い犬猫を守る札幌市条例を応援する緊急集会」が行われました。

塩村あやか先生、司会の渡辺眞子さんはじめパネリストの方々の華々しいこと!
参加されている動物愛護の方々もキラキラしていました。

*

動物愛護が当たり前の思想に変化していっていることを感じることも最近は多いように思います。

しかしここに至るまでには、見えないところで本当に血のにじむような努力(時間もお金も命までも削って活動されています)を、現場のボランティアさんがしてくれていて、それを伝え続けてくださったからこそなのです。
そしてその想いを実現させよう、どうぶつたちを守ろう、とがんばってくれる議員さんたちもたくさんいます。

けれどもやはりまだまだ現実を知らない層はいますし、動物愛護を憎む人たちもいます。憎んでいる人たちは置いといても・・・(愛護側の人間への偏向思想を持っている人の多い印象があります。たぶんなにかのきっかけで愛護側になったらものすごく熱心になるんじゃないかなとは思いますが。)、知らない層に伝わることの大切さをとても感じます。

つい10年ほど前までは殺処分の話をしても、「そんなことあるわけがない」とにわかには信じてもらえない、もしくは「そんな話は聞きたくない」と耳をふさがれてしまうような状態でした。そのような状態では動物愛護の機運を高めること自体が困難です。

今では少しずつ耳を傾けてくれる人も増えて、現に殺処分数も減少しています。10年前に比べれば1/3ほどになってはいます。けれども平成26年度には10万頭の犬猫の命が人間の手によって消されました。多くが苦しいやりかたで。
中には信頼していた人間に裏切られた子も大勢いました。そんな子たちが絶望の内に二酸化炭素ガスで窒息させられながら死んでいくのです。
10万頭というのは、[新たに殺された数]です。数値だけ見れば減ってはいるけれども、現場で恐怖に震えながら死を待つ子は後を絶たないし((今この瞬間にも何百という犬猫が全国の保健所の中にいます))、一頭一頭を見ればひとくくりになんてできない。みんな性格もちがうし個性もちがう。犬猫犬猫犬猫・・・といってしまうとどうしてもそこの部分がぼやけてしまうけれど、一頭一頭のことを考えると、苦しくなるほど悲しくて暗い。これは社会の闇です。

*

さて、今回題目となっている8週齢規制ですが、実は動物の愛護及び管理に関する法律(以下、動愛法と記す)に盛り込まれています(前回の法改正時、松野頼久議員が尽力くださったのです)。けれども附則によって現在のところ45日間でOKとなっています。もうすぐ49日間に読み替えられますが、肝心の56日間(=8週齢)[別に法律で定める日]まで読み替えませんよ、となっているのです。
つまり(動物愛護の機運の高まりに応える形で)法には盛り込んだけど、
(ペット業者の反発が強いから)実質的には8週齢は発動させませんよ、
という、よく言うアレです、[骨抜き]な状態なのです。

それを札幌市はいち早く実現しようとしていますので応援しましょう、全国に波及させましょう、という会だったわけです。


しまった!また前置きが長くなってしまった!!


浅田美代子さんのご挨拶からスタートしました。女優さんでありながら、レスキュー活動や保護活動など大変活躍されていますし、この問題を広めてくださっています。

*

今回の会で印象的だったお話をご紹介させていただきます。
(当たり前ですが、全員の方のお話が重要で大変勉強になるものであったのは間違いないのですが、個人的に、これは!中でも特に!!と思う内容を抜粋した形です。)

まず、必ず話題に上るのが[規制をかけるのが8週齢であることのエビデンス]です。

■米国獣医動物行動学専門医である入交眞巳(いりまじりまみ)先生は、条例・動愛法に関わらず専門医の立場から下記のことをおっしゃっていました。
子犬の離乳期:7~10週(期間幅は犬種・個体などによる;1950年代米国スコットandフラー)
・精神医学面から見て、早期離乳(上記離乳期未満で母犬から引き離す)すると不安傾向の強い犬になる。
離乳自体を通して社会性を学ぶ(つまり早期離乳は学びの阻害である→問題行動の喚起)
 ex1)子犬が母犬のおっぱいを強くかみすぎてしまった時、母犬から攻撃される。そのような時にお腹を出して許しをこうことだとか、服従関係だとか、力加減を学ぶ。
 ex2)お母さんの口をなめて離乳食をねだる行動も服従関係や力関係、社会性を学ぶものである。
「せめて離乳の始まった8週齢まではお母さんから離さないであげましょうよ」というのが欧米の考え方。

■また、日米の獣医師である西山ゆう子先生は、臨床現場での経験から早期離乳の4つのリスクを挙げておられました。
①ワクチンをいつ打つんだという問題がある。早くに打たねばならない。
伝染病にかかりやすくなる。
下痢をして、長くかかって治りにくい。
④日本では12週齢以下の子犬を育てるのが下手である(米国との文化の違い)
現場の医師は経験上誰でも知っていることだ、とのことでした。

■動愛法改正時のパブコメにて8週齢規制に対して、
「母犬の元に長く置きすぎると、母犬が子犬を持て余す様子が見られる
おっぱいに噛みつくようになるので母犬を守るために早めに出荷すべき
とする意見がペット専門家であるはずの業者側の意見として出されたそうです。
(神奈川県動物愛護協会の山田佐代子代表より)

■また、改正時、動愛法での8週齢規制が実現しそうだったという時に出てきた、それを阻止するワードに「ペットショップ従事者の生活を守る」というものがあったとのこと。
(動物との共生を考える連絡会代表の青木貢一獣医師より)

□8週齢規制は、売るなといってるんじゃなくて子犬子猫の心身の発達を阻害するのをやめましょうよという内容なのに、そんなワードが出てくる。結局、ころころしているなるべく小さい内になるべく高い金額で売りさばいてしまいましょうということなのでしょう。
上にも書きましたが、ペット産業が生み出す不幸な命を救おうと活動しているボランティアさんはお金も時間も削って命をかけて動いているのに。救っても救ってもなお救いきれなくて、悔しい思いをしながら、それでも今日も明日も動き回っている。
そうだというのにペット産業に従事する人間の生活を守ることにばかり焦点をあてつづけるなんてはなはだおかしな話だと私は心から思います。
そして、ペット専門家なのに利益優先の発言をしてしまえたり、殺処分問題解消にのりだそうとしない、むしろ原因を生み出し続けている業界に命の売買をさせつづけている矛盾に、消費者側も気づかなければいけないと思うのです。
売られているからお金を出して買うというのは当たり前の行為です。けれども、それが本当に正しいことなのかどうか本質を見極めるのは実はとても重要なことなのではないでしょうか。
これからはTPPによってさまざまな商品が甘い顔をして店頭に並ぶでしょう。それをなにも考えずに買ってしまうのは自由だけれども危険なのです。消費者も学ばなければいけない。
店頭に命が陳列されている光景は果たして正しい姿でしょうか。

*

■上述しましたように動愛法では附則によって8週齢(56日)が[別に法律で定める日]まで49日になっているのですが、その[別に法律で定める日]がいつなのか。細川敦史弁護士が似た事例を例示くださいました。
・金融法における消費者金融の金利が104%だったものを40%に落としましょうという施策において、でも急にそんなに落とせないから[別に法律で定める日]までは57%としましょうと決まったのが昭和58年。さて、実際[別に法律で定める日]が訪れたのはなんと平成3年だったそうです。その間実に9年!!

□動愛法は命が関わっているのでそんなに悠長なことは言っていられないのです。次のパブコメではそのあたりが白熱することでしょう。もちろんその他にも改善点、詰めるべき点、いっぱいあります。パブコメには是非ご参加を!


■最後に、私の師匠でもあるねこかつの梅田達也店長の言葉を引用させていただきます。
現場のボラは血を吐く思いで動いている。協働と言うのであれば、議員さんは蛇口をしめるという部分で本気を出してください。

□これまでもこれからも犬猫問題を解決していくのは間違いなくボランティアの力です。
がんばっている行政、たとえば以前私が取材した熊本市動物愛護センターの職員さんもボランティアさんとの協働が殺処分ゼロのために必要なのだとおっしゃっていました。
私たちはパブコメには参加できるけれども、法を動かすには議員さんに頼るしかありません。

救っても救っても救い切れない状態を脱するには蛇口を締めることがなにより重要です。
行政殺処分は平成26年度10万頭でした。
しかし、ペットショップに並べられるまでの流通過程で殺されている子の数は見当もつかないほどです。
ペットの仕入先に関しての情報やそこをとりしまる力はまだまだ弱いのだと太田匡彦記者は指摘していました。深くて闇の多い問題で、頭も痛くなります。

□そんな中で最前線で活躍されているボラさんたちとお話しさせていただくと、本当に勉強になりますし、感動します。危険を省みず、そこに命があるから見過ごせないという強い思いで茨の道を突き進んでいることがとても伝わってきます。みんな手が傷だらけなのです。傷ついた動物たちに寄り添おうとしているから。警戒心から手や口が出てしまう猫と真剣に向き合っているから。この人たちをけなすような人間がいたら私はゆるさない。
動物愛護法は真に動物と向き合っている人たちの意見を反映すべきです。

おわり。