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■本日の言葉「fall asleep」(眠りに落ちる)■


肩の力を抜いたゆるい「暇ダネ」の英語をご紹介する金曜コラム、今回はなんというかまあ、当事者みんな、もうちょっと考えて行動しようよ……と言いたくなる話題です。だってどう考えても、18歳の女の子の顔に、星のタトゥー56個は多すぎると思うのですよ。(gooニュース 加藤祐子)

○目覚めたらそこには満天の星…

うっかり眠ってしまって目覚めたら、鏡の中に悪夢があった……のだそうです。ベルギーの女の子、キンバリーさん(18歳)によると。本人がBBCや英テレグラフ紙に語っているところによると、左目の周りに3つ、星の形の入れ墨を入れてもらいたくて、タトゥー?パーラーを訪れたのだとか。なんでもそもそも、この一家には家族みんながタトゥーを入れる伝統があって、この日のタトゥーはお父さんからのプレゼントだったそうで。

最初は緊張していたけど、痛くなかったので、ついウトウトしてしまった (I fell asleep) らしいと。そしてふと目が覚めて鏡を見たら……あらまあ、こういう状態になっていたのだとか。

顔の左半分に黒い星が56個。まるで満天の星、というか……。「目が覚めたら、悪夢(nightmare)だった」とキンバリーさん。

パーティ用のその時限りのメークなら、おしゃれで可愛いじゃない?と私も思いますが、入れ墨ではねえ……。

娘が顔にタトゥーを入れている間、外でアイスクリームを食べながら待っていたという父親は、怒り心頭。タトゥー師を訴えて、レーザー除去の費用約180万円を請求しているそうです。

それに対してタトゥー師の方は「勝手にやったなんてとんでもない」と反論。「彼女はずっと起きていて、タトゥーを入れている最中、何度か鏡をのぞき込んでいたんだから。騒ぎになったのは、父親が娘の顔を見てからだ。タトゥー代50ユーロを払ってもらいたいのはこっちだ」と地元紙に語り、全面対決の姿勢です。

誰のどの言い分が正しいのか、外野には知りようもありませんが、ひとつ言えることは、顔に星56個はいくらなんでも多すぎるということ。

といってもBBCサイトで見るタトゥー師ご本人の写真は、すごいな、おい!というぐらいの全身タトゥーに顔ピアスだらけ。その昔ストーンズのアルバムで「Tattoo You(刺青の男)」というのがありましたが、あんな感じ(もう少し最近だと、スバスケットゴール ーウォーズの「ダース?モール」?)。なので、その辺のトゥーマッチ感の境目が私とはずいぶん違ってそうです。確か太平洋地域では全身入れ墨が伝統文化だという地域もありますが、この方はルーマニア出身だそうで。

それからもう一つ言えるのは、顔にタトゥーをいれてもらってる時に居眠りはしない方がいいということ。よく美容院で、パーマやヘアカラーの最中に眠っている人をみかけますが(時には、ブロー中に熟睡している剛の者も)、気がついたらアフロとか、気がついたらモヒカン的な事態はできるだけ避けたいものです。

○あっちに落ちたりこっちに落ちたり

ちなみに、「fall asleep」は確かに文字通り訳せば「眠りに落ちる」ですが、これはなんだかもとからあった日本語表現というよりは、英語の「fall asleep」をそのまま「眠りに落ちる」と訳したのが日本語として定着したもの、という気がします。似たような表現の「目から鱗(ウロコ)が落ちる」も、今や自然な日本語と化していますが、語源は新約聖書ですし。

(「使徒行伝」9章18節に言う、「するとただちにサウロの目から鱗のようなものが落ちて、目が見えるようになった」が出典です。つまりキリスト教徒を迫害しようとしていたサウロが、神の啓示によって「目から鱗が落ちて、真実が見えるようになり」?自らも使徒パウロとなるくだりが出典です)

むしろこの「目から鱗が落ちる」は日本語ではしょっちゅう使いますが、英語では「scales fell from his eyes」とはあまりそんなには使いません。信心深い人は使うのかもしれませんが(私の周りには不信心者だらけ、なのかもしれませんが)。

一方でやはり同じような「fall」がらみの慣用句に、「恋に落ちる」がありますが、これもいかにも「fall in love」を直訳したものがそのまま日本語として定着したという感じがします。江戸時代に「恋に落ちる」という表現があったのかどうか、近世文学にも詳しくないので断定できませんが、日頃から歌舞伎ばっかりやたらと観ている者の直感からすると、「お慕いする」「大切に思う」とか「惚れているわいな」とかはよく台詞で出ていますが、「恋に落ちる」という表現が出てくる古典歌舞伎はちょっと想像しにくいです。

○ピアスやタトゥーに仰天したこともある

さらにちなみに、そのむかし70年代にアメリカの小学生だった私は、低学年の同級生が耳たぶに穴をあけているのを見て、仰天したものです。当時の日本にはまだ「ピアス」というのは一般的にはなかったはず。さらに90年代にイギリスに留学した際には、学生仲間の女の子たちがふつうに鼻ピアスをしたり、ちょっとしたタトゥーを手や背中に入れているのを見て、またしても仰天しました(別にパンクの巣窟でもなければ、アート系の大学でもなかっただけに)。当時の日本では(少なくとも私の周りでは)、顔ピアスやタトゥーは宗教上の理由か、パンクロッカー限定でしたので(パンクなファッションも、ある意味で宗教上の理由のようなものですが)。

この違いはもしかして、日本では戦争中まであった「身体髪膚これを父母に受く、あえて毀傷せざるはこれ孝の始めなり」という儒教の価値観が、欧州にはそもそもないからかな、と思ったりもします(話が飛びますが、「身体髪膚」を説く儒教が江戸幕府下の武家社会の「官学」だったからこそ、その教えに背く彫り物は江戸時代、罪人の証だっただけでなく、無頼な渡世人や反権力な職人に好まれたわけです。つまり、江戸の日本でもやはり刺青はパンクの証だったわけですね)。

なので、「日本の父親が18歳の娘に顔タトゥーをプレゼントする」というのと、「ベルギーの父親が娘に」というのとでは、ちょっと社会的な許容度が違うだろうな、とは思います。でもそんなベルギーの父にとっても、星56個はさすがに多すぎたわけですね。いやはや。


◇本日の言葉いろいろ
?fall asleep=眠りに落ちる
?nightmare=悪夢
?scales fell from one-s eyes=目から鱗が落ちる
?fall in love=恋に落ちる

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◇筆者について…加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊と同い年。8歳からニューヨーク英語を話すも、「ビートルズ」と「モンティ?パイソン」の洗礼を受け、イギリス英語も体得。怪しい関西弁も少しできる。オックスフォード大学、全国紙社会部と経済部、国際機関本部を経て、CNN日本語版サイトで米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュース編集者。米大統領選コラム、「オバマのアメリカ」コラム、フィナンシャル?タイムズ翻訳も担当。英語屋のニュース屋。