お風呂に入りました。


いつも通り浴槽に浸かる前にシャワーを浴びてたんですけど、

頭からシャワーかぶった後は貼りついた前髪がジャマになるじゃないですか?

ブゥワッハァとかいいながら前髪かき上げるじゃないですか?

そんなときに限って普段見ない天井の隅っことか見ちゃうじゃないですか?




すごいデカい家蜘蛛が居るわけじゃないですか・・・!




もちろん涙目で知らん振りするじゃないですか?

「べ…別にアンタのことなんか…気になってないんだからねっ…!」

みたいな気持ちで天井チラッチラ確認するじゃないですか? 

でも向こうもバカじゃないから迂闊に動いたりしないじゃないですか?

「蜘蛛はG(黒い彗星)と違って人間に向かってはこない」

そんな自分勝手な持論を脳内で展開しながら洗顔して顔を上げたら


さっきの場所から居なくなってる…っていう小悪魔的なところを見せ付けてくれたわけですよ


完全に女子じゃないかお前…なんで動いたんや…

ものすごくドキドキしながらも、私も女の端くれでございます。


「後ろの席の子に用があるだけで決してアンタが気になるからじゃない」


という思春期感を満載にして挑みました。

チラチラとあらゆる動作にかこつけては天井を仰ぎ見て、気になるアイツの動向を逐一チェック。


(もちろん脳内BGMはマーマレード・ボーイの『笑顔に会いたい』)


私の左後ろの天井隅に居た気になるアイツ(八雲と名づけました)はいつの間にやら振り向かずとも目視できる天井左前に素早く移動していました。

世が世なら盗塁王間違いナシです。大したものです。


そんな風に全力で現実から目を逸らし、頭を洗い終えて天井を見れば


さっきより近づいてる…!


一体何が八雲をそんなに駆り立てたのでしょうか。

私は極力物音を立てずに行動していたはずなのに何がいけなかったのか。

しかし、そんな自問自答をしている間にも八雲はじりじりとこちらに近づいているではありませんか


なんてこった!まだトリートメントも付けていないのに!

トリートメントはシャンプーよりもすすぎ時間が長いのに!

なんならこの後身体も洗わないといけないのに!


私がトリートメントに手を伸ばしあぐねているその間にも刻一刻と八雲は私の真上に近い場所へ移動してくるではありませんか。

死ぬ、やばい、死ぬ。

八雲が私に落ちてくる→パニックになる(私が)→滑る→転ぶ→死ぬ←NEW!!


なんということでしょう、お風呂で転んで死ぬのだけは勘弁願いたい所存です。


ただ、名前付けたりトリートメント付けようか迷ってる間に八雲は私の真上にある電灯で、惜しげもなくその長く美しい脚を見せ付けてくるではありませんか。


「わぁ、モデルさんみたいだね」


そんな白々しいお世辞が全力で脳内を駆け巡りましたが、なんせ相手は節足動物でございます。私の敵意のなさを読み取ってくれたのかくれていないのか。

もうトリートメントなんか付けなくても死なないけれど、八雲が私にその好意を伝えようと頭の上に降りてきたりしようものならば私は死ぬのです…!(錯乱)


人生は取捨選択の連続です。


トリートメントを諦め、体をそそくさと洗い浴室を後にした私は勝ったのです。


明日も居たらどうしよう…。


お後がよろしいようで…(無理やり)