AJ weblog

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インディペンデントな音楽系フリーペーパー『AJ』のブログです。

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SOFT BALLETは、1986年に結成されたグループだ。
メンバーは、キーボードの森岡賢と藤井麻輝(ギターやメタルパーカッション等も演奏する)、ヴォーカルの遠藤遼一の3人組。
このアルバムは、1991年に発表された彼らの3枚目のアルバムで、当時勃発していた湾岸戦争の影響を受けている。

SOFT BALLETといえば、森岡賢が得意とするダンサブルなテクノ、あるいは藤井麻輝が創りだす金属的なインダストリアルというパブリックイメージが先行するが、このアルバムを聴くと、そういった音楽性だけではない、とても豊かなサウンドを持つユニットであることがわかる。

オープニングの『SAND LÖWE (BEAT MIX)』(藤井作曲、以下カッコ内は作曲者)は、藤井のエレクトロニクスと森岡の生ピアノの重なり合いがドラマティックな楽曲である。藤井と森岡の、相反ともいえる個性の共存からは、SOFT BALLETというユニットの特異さと、同居する美しさを垣間見ることができる。
(このアルバムにおいて、この曲とラストの同名曲以外に、藤井が作曲した作品で森岡は演奏しておらず、逆も然りである。)

そして直球的なインダストリアルである『Virtual War』(藤井)と、キャッチーなシンセが印象的な『EGO DANCE』(森岡)という、まさに好対照な楽曲のあとだからこそ、『OBSESSION』(藤井)の歌謡曲的なムードに驚かされる。

森岡のピアノとストリングスアレンジが美しい『LAST FLOWER』(森岡)は、遠藤の感傷的な歌詞と相まって、彼らの素直な一面を感じることができる。

冒頭からオーケストラル・ヒット(オーケストラの「ジャン!」という強調箇所を使ったサンプリング手法)を使ったサウンドで盛り上げながら、中盤では切なさを感じさせる『FINAL』(森岡)と、DAF(80年代から活動するドイツのエレクトロニック・パンク・ユニット)とニッツァー・エブ(80年代から活動する、攻撃的なサウンドが特徴的なイギリスのエレクトロニック・ユニット)を彷彿とさせる『OPTIMAL PERSONA』(藤井)という対照的な2曲のあとには、タンゴをモチーフにした森岡の『TANGO IN EDEN』と、琉球音階とワルツを使用した藤井の『TEXTURE』が続く。
ラストは、より生音主体のアレンジの『SAND LÖWE』で、このアルバムは幕を閉じる。

SOFT BALLETは前述したように、藤井と森岡の個性の「奇妙な共存」が注目されることが多いが、このアルバムにおいても「電子楽器と生楽器」「動と静」「ポップと前衛」といった対になる要素が、彼らの幅広い音楽性のもとに、「融合することなく」並び立っている気がする。
ある意味、このアルバムタイトルである『愛と平和』を象徴するかのような、さまざまな相反する要素の共存こそが、SOFT BALLETの本質であり、彼らを孤高の存在としているのではないだろうか。

SOFT BALLETは、1996年に解散したあと、2002年に再結成、翌年に再度解散した。
その後、一時的に藤井は音楽業界を離れるが、2014年に森岡とユニット、minus(-)を結成し、2枚のアルバムを発表。
しかしながら、森岡賢は、2016年6月3日にこの世を去った。


(本稿は、森岡賢さんの逝去に際し、追悼の意を込めて執筆されました。改めて、心よりご冥福をお祈りするとともに、森岡さんが残された美しい音楽に、感謝と敬意を表します。)