藤本教授にとって問題は、日本がものづくりをすべきかどうかではない。問題は、どの製品なら比較優位があるかどうかだ。日本が実力を鍛え上げたのは、人材も資源も乏しかった1960年代の高度成長期だと藤本教授は言う。人材も資源も乏しかったが、企業はそのため無駄を最小限に節約し、各自の担当を狭く区切った分業よりも、色々な能力をもつ労働者同士のチームワークを頼りにした。こうした経験から、やがて先進諸国の想像力をかきたてることになる様々な「日本式」経営術が生まれたのだ。たとえば在庫を最小限に抑えるためのジャストインタイム生産方式や、あるいは工場の現場で絶え間なく作業内容を改善していく「カイゼン」活動などがそうだ。
日本は、製造とデザインの部分で高度な調整を必要とする製品作りを得意とすべき。藤本教授はこう言う。さらに、日本の比較優位性とは簡単にパッケージ化できて国内外のライバルに真似されてしまうようなものではなく、意識的にそうしたというよりはたまたまそうなったものが結果として他よりも優れているという、耐久力のある優位性でなくてはならないと。藤本教授のデータによると、日本の輸出品は、デザインと製造課程が複雑であればあるほど、輸出量が大きくなるのだそうだ。
とはいえ日本の技術力の評判がいくら高くても、優位性維持を可能にする、高度なデザイン力を使う製品は、必ずしもハイテク製品とは限らない。「日本は半導体を失ったが、トイレ便器は死守している」と藤本教授は、TOTO社の成功に言及。TOTO社は、水不足問題を抱える中国でも需要に応えられるよう、少量の水を効率よく使う便器を開発し成功している。
企業が不況にどう対応しているかについても?同様のことが言える。たとえば日立と東芝は、ハイテクを使うがデザイン技術的には単純な家電製品のウェイトを抑えて、究極のデザインが難しい製品、つまり原子力発電所の建設にシフトしている。
世界的に競争力を持つ製品とは別に、日本国内で成功すると思われる工場は二種類ある。ひとつは、国内市場の需要に合わせてタイムリーな製品を作り出すいわゆる「クイック生産」専門の工場。もうひとつは、いくつかの工場の中心的役割を果たすいわゆる[マザー工場」で、研究開発部門と合わせて国内に残し、製品デザイン部に臨機応変なフィードバックを即座に返す役割を果たすものだ。
本田技研工業の伊東孝紳社長は、輸出から現地生産へのシフトがホンダ社内の「大まかなトレンド」になっているが、そうした二種類の重要拠点は日本国内で重要な役割を担うと話す。「最新ものと技術的に最高レベルのものを日本国内で完成させてから、海外に移転 高品質モンスター ヘッドホン
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るというのが我々の考え方です。こうした技術は単なる製品ではなく、製造工程そのものに直結している。ということは国内製造がなければ、われわれの技術は進歩しないということです」
日本精工の藤沢工業にとってそれはつまり、未来は比較的明るいということだ。同社が国内に抱える冶金の専門家や、機械油の魔術師たちは、国内9カ所、海外17カ所の工場生産を支えている。そして場合によっては、慎ましいボールベアリングは実は、素晴らしくカスタム化された高度デザイン製品だったりするのだ。
副工場長の白井氏は、積み上げてある幅1メートルのローラーベアリングを指さした。北海の風力発電用タービンの、ギヤボックスで使われるものだ。「これは地上60メートルや100メートルに設置されます。いったん設置したら、取り替えたくはないわけです」
小さなものの作り手に大きな変化
1970年代から80年代にかけての日本の急成長を、何よりも端的に象徴したのは、家電製品だった。ソニーなどの企業は成長しただけでなく、最先端技術そのものを体現していた。
しかし現在、そうした日本企業は台湾や韓国企業の競争相手に上手をとられており、別の意味での象徴となってしまっている。パイオニアは昨年1310億円の損失を出し、今年2月に薄型テレビ事業から撤退。日本ビクターは2007年、東京の同業他社ケンウッドと経営統合せざるを得なくなったし、ソニーはテレビ部門の赤字や全般的な収益悪化に苦しんでいる。家電メーカーのほとんど全てが、国内工場を何らかの形で閉鎖している。
そもそも家電業界というのは、なかなか一カ所に長く留まらないものだ。1960年代には米企業がテレビ製造を圧倒していたが、その後の20年間は日本企業の番だった。さらに最近では韓国や台湾が成長したが、すでにそう遠くない将来、中国に取って代わられるだろう。日興シティグループ証券のアナリスト、江沢厚太氏は「家電製品というのは常に?より安い資本とより安い労働力を求めているもの」だと指摘する。
しかし資本と人件費だけでは、なぜ日本企業のほとんどがアップル社の成功を真似できていないか、説明がつかない。アップルは製造をアウトソースし、iPhoneやiPodなど一連のヒット商品を生み出している。また資本と人件費の安い高いだけでは、なぜデルやインテルなど米企業が成功したコンピューターや半導体の分野で、NECや富士通などの日本企業が苦しんでいるのかも説明がつかない。
問題の大部分は、電化製品がアナログからデジタルに移行するに伴い、製品のモジュール化が進んだことによる。日本企業はそれまで、アナログテレビのブラウン管から画面用の蛍光体まで、全て社内で作っていたし、それが競争優位のもととなっていた。しかし最新のデジタルテレビは、複数の部品メーカーが作る液晶パネルやチップを組み立てれば出来てしまう。たとえばアマゾンのような小売業者でも、「キンドル」のような書籍リーダーを作ることができるのだ。部品を自社デザインする必要がないし、組み立てはアウトソースすればいいのだから。
電化製品のデジタル化によって、ソフトウェアの重要性も高まったのだが、これこそ日本が(ゲームソフト分野を除いて)ほとんどうまくいってない分野だ。こうした要素に加えて、対応の遅さが事態をさらに悪化させた。「頭が硬いせいで、垂直統合や非効率が必要以上に長く続いてしまった」と江沢氏。
業界は今後、家電を減らし、もっと「Business to Business(B-to-B)」の企業間取引にシフトしていくだろう。パナソニックはサンヨーを買収し、太陽光やリチウムイオン電池の製造に乗り出したし、東芝と日立は発電所やインフラ設備に集中し始めている。一方のソニーは、ソフトウェアやメディアコンテンツの販売も組み合わせられる、ネットワーク製品を主軸にしようとしている。
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(翻訳?加藤祐子) (訳注?文中の日本人の発言は、フィナンシャル?タイムズの英文からgooニュースが日本語に翻訳したものです。必ずしもご本人が使った日本語表現ではありません)
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