子供が円形脱毛症になるとはどういうことか、大人であればわかる。
うちは転勤族だったので、私には古里と呼べる場所はなく、幼馴染みという存在もない。同窓会も、一度もない。
転校生の私に、クラスは違うし、そんなに会わないけど、とても優しくしてくれた女の子がいた。
「転校生に話しかけてあげる私」ちゃんは、転校慣れしているのですぐ見抜く。
けど彼女の優しい笑顔には、確かな善意を感じてた。
私は無意識のうちに、SOSを発していたのかも知れない。彼女は私の言葉にならない寂しさや弱さを、わかりすぎるほどよくわかってくれていたんだろう。
それに、私は彼女の明るく元気な姿しか、記憶にない。
あるとき、彼女の後頭部に10円玉くらいのはげてるのが見えたんだ。私はなんでかわからないけど、胸がギュッとなった。
今でも、思い出すとギュッとなる。今でも、彼女を守りたいと、その時の気持ちが蘇るよ。
私はまた転校し、その学校は卒業していないので彼女とはそれっきり。
彼女は今、どうしているかな。いつか…会いたい。
いつでも笑顔で、他人に優しくするなんて、大人でも立派なことを、私は子供の時に彼女から教えてもらえた。
この幸運を、自分のものにしたい。