新年早々の3日に、我が家で新年会を開催したことは、既に記事にした通り・・・。
その際、参加メンバーからは過分なほどのお年賀の品々を頂戴した。
厳選されたイタリアワイン数本
宝石のように綺麗なイチゴ
両口屋是清のお菓子詰め合わせ
チョコレート30個のアソート
クレープ包みのケーキ
高野のイチゴのホールケーキと、フルーツのホールケーキ
◆夏ミカンやオレンジに見えるけど・・・どうも列記としたミカン・・・
小学生からの友人A嬢の自宅の庭に、知らぬ間に自生していたらしい・・・
(水分豊富で甘酸っぱくて、大変上出来なミカンだった~!)
普通の家なら、庭に大きな木が生え、そこにたわわにミカンが実れば・・・いや実るより遥か前に樹木の存在に気づくようなものだが、こちらのご家庭は23区内とはいえ相当な敷地面積・・・お隣のお寺の法事にきた人々が間違えてA嬢の家に侵入してきてしまうというほど、広大らしい・・・試しにグーグルアースで見てみたら・・・庭の片隅にプレハブを建てて勝手に住んでも家人は気がつかないのでは・・・と思うほどの広さだった・・・そりゃ、ミカンやリンゴの木が何本自生していても何十年も気付かないだろう・・・
どれもこれも厳選されたお品ばかり・・・血糖値とコレステロール値が気になるお年頃だというに・・・今後の更なる理性が求められる・・・。
しか~しっ!
数多くの素敵なお年賀の品々の中で、異彩を放っていたのは、何と言ってもアレであろう・・・当日集まっていたメンバー全員が狂喜乱舞したアレだ・・・。
ドンペリニヨン様であらせられるぞぉ~!!!
(しかも、片方はマグナムボトル・・・)
これは、悪友Y子様からの差し入れのお品である。
しかし、何故にドンペリなのか?
そして、何故2本もあるのか?
それらを解明するためには、まずはY子様ご自身のことを少々語らねばならぬ・・・。
そもそもY子様と私の出会いは、今から40年前に遡る・・・。
彼女と初めて会ったのは、小学校の入学式の日・・・つまり、私達は小学校1年からのクラスメイトだ。
某私立大学の附属に在籍していた私達は、その後もずっと同じ学校・・・とはいえ、小学1・2年次に同じクラスだった後は、高校1年まで別々だった。その代わり、高校は3年間同じクラスだったが・・・。
あまり人のご家庭のことを、このような場所で書くのも何だとは思うが・・・何故ドンペリ?に繋ぐために簡単に記載することとしよう。
Y子様のご家庭・・・特にご実家は、大変裕福なご家庭である。
小さい頃、遊びに行ったY子様のご自宅・・・広大なお庭の片隅に、体育の授業で使用するような大きなトランポリンがあったことは、今でも皆の語り草となっている・・・。
そして今から数年前、女子10名程度でランチ会を開催していた席上で、
「ほらぁ~、ウチってお金だけはあるからぁ~」
と、能天気に発言したこの言葉は、その年の仲間内の流行語大賞にノミネートされたぐらいだ。
前後関係を省いて、この言葉だけをクローズアップすると、「なんかある意味凄い人?」と思われるかも知れないが、友人として言っておくが、彼女は常に明るく、良い意味で天真爛漫・・・つまり大変お育ちの良い性質をしていて、穏やかな人となりは他人に敵愾心を与えることが無く、大変な人気モノである。そんな素敵な女性ではあるが、アニマル柄をこよなく愛し、ちょっとヌケた部分もある、ラブリ~でお茶目なアラフィフなのだ。
そういう「お嬢様気質」な部分も多少揶揄して、私達は彼女のことを「Y子」や「Y子さん」では無くて、「Y子様」と呼んでいる。
Y子様は男子2名のお母さんでもある。ご長男は現在高3、ご次男は中1だ。
さて、昨年の11月頃・・・Y子様から電話があった。
丁度、自宅のリフォームをしている頃だったが、子供部屋の「開かずのクローゼット」の中から、なんとドンペリのマグナムボトルが出土(笑)したと言うのだ。
子供部屋とはいえ、元々はY子様の荷物とかも入っていたクローゼット・・・
しかし、本人はそんなモノ、これまでに見たことも聞いたことも無いと言う・・・。
さすがにドンペリのマグナムボトルを貰ったことすら忘れてしまうほど、ボケてはいないだろう。
ご主人に聞いても、全く知らないらしい・・・
で、ご主人が何かのついでにネットでそのドンペリのヴィンテージを調べてみたところ・・・
1982年のドンペリは大変な当たり年で、売れば15万円以上になるだろうとのこと・・・。
で、その後にご主人がY子様に言った言葉は、
「どうせなら、あいぞうさんのところにでも持って行って皆で飲めば?」
我が家で良く宴会を開催していることはご主人様もご存知のこと・・・。
実は以前、一度だけだったがご主人様も酒宴に参加して下さったことがあった。
Y子様からの電話の内容は、その出土の模様と、ご主人様の言葉を伝えてくれて、新年会に持って行くから皆で飲もうね!ということだったのだ。
さすがに資産家は違うね・・・「皆で飲めば?」だもんね・・・
優しい御主人様よねぇ・・・
心意気が違うよね・・・
変な執着心が無くて粋だよね・・・
新年会参加メンバーは皆こぞって、Y子様のご主人の英断を褒めそやしていた。
新年会の前日、Y子様からの確認の電話の時にも、
「マグナムボトルがあまりに重いから、息子のリュック借りて背負って行くわ~!」
と言っていた。
そして新年会当日・・・
夕方5時前に一番乗りしたY子様の背中には、あるべきはずのリュックは無かった。
その代わりに手元には、専用紙袋に納められた普通サイズのドンペリの黒い箱。
なんでやねん???
Y子様に聞いてみたところ、聞くも涙・・・語るも涙・・・号泣モノの物語が始まったのだ・・・。
(以下、涙もろい方は、バスタオルをご用意の上、お読み頂きたい・・・)
その日・・・出掛ける準備をしていたY子様は、早速マグナムボトルをリュックに詰めながら、そばにいたご主人様に「じゃぁ、持っていくわね」と、とりあえず声を掛けた。
ご主人様は、特に何も言わず頷いたらしい。
そこにやんちゃな次男坊が
「お父さんは飲まなくていいの?」
と、余計な口出しをしたらしい(「余計な口出し」と形容したのは私ではなくY子様の言葉だ)
「いや、まぁ、そりゃ飲んでみたいけど・・・」
まぁ、それは本音だろう。誰だって、天下のドンペリ・・・しかも当たり年ということであれば、どんな味なのか知りたいのは人として当然のこと・・・。
しかし、ご主人様の心情の吐露は、それだけでは無かった!
ここからが驚愕の事実なのだが・・・
これがクローゼットから出土した際に、Y子様はちゃんとご主人様にも確認してみたが、彼は「知らぬ存ぜぬ」を通していた・・・それどころか「あいぞうさんの家で皆で飲みなよ」とまで言っていたのだが、実はそれは思いもよらず隠していたモノが発覚したことによって冷静さを装っていた彼のウソであって、本当はご主人様が20年近くも家族にバレないように隠匿していた宝物だったのだ・・・。
何のために隠していたのかは不明だが・・・
とにかく、リフォームのためにクローゼットを整理することは判っていたのだから、おそらく自分自身も隠しておいたことすら忘れていたに違いない・・・。
しかし、Y子様にとっては青天の霹靂のカミングアウト・・・
20年近く隠していたということへの怒りとか不信感とか言うものよりも、秋に出土した際にシレっと知らないフリをし、あまつさえ「皆で飲めば?」などと善人ぶっていたにも拘わらず、こんな当日になってウジウジと未練がましく告白した彼が許せなかったのかも知れない・・・。(なんか、書いていてナンだけど、凄い表現になってしまった・・・)
そのやりとりを聞いていた次男は、やはり小さいながらも男だった・・・
「お父さん、可哀そう~!」
男は男の肩を持つんだな・・・。
しかし、まだ小さいから仕方無いとはいえ、こういう場面では母親(もしくは女)の味方をした方が先々得なことが多いのだという処世術をそろそろ身に付けた方がいいのかも知れない・・・。
案の定、Y子様は次男坊のこの言葉で切れ掛かっていた脳みその何かが、プッツリ断線してしまったらしい・・・。
普段、おっとりお育ちの良い女性だからこそ、一度キレると手のつけようが無いのかも知れない。
彼女は、リュックに詰めていた(もしくは詰めようとしていた)ドンペリを床に叩きつけ・・・たら割れてしまうので、あくまでもそんな気分で・・・「こんなもん、いらねぇやぁ~!!!」・・・こんな悪い言葉遣いはしないだろうけど、これもやはりそんな気分で・・・捨てゼリフを吐いて家を出てきたのであった。
ドンペリマグナムボトルを背負っていないせいで、身体は軽いが、気分はドップリ重いY子様・・・。
怒りを納めるために、池袋東武百貨店の地下酒類売り場で
「ドンペリください!!!」
と言って、普通サイズの高級シャンパンを購入するに至った。
余談だが・・・
そのドンペリ購入の際に、店員さんに「あの、ドンペリでしたら、もう少しご予算をお足しになれば更にオススメの良いシャンパンがありますが・・・」と言われたらしい。たしかに、ドンペリはバブルの産物・・・今ならもっと他に良いシャンパンがあるのだろう・・・しかし、Y子様はそこでひるまず、「いえ、ドンペリじゃないといけない理由があるんです・・・」と一喝してきたらしい。ドンペリじゃないといけない理由・・・店員はどのような妄想をしているのだろうか・・・
ところで、ディスカウンターなどではなく今回はデパートだから、当然ながら正規料金である。Y子様は池袋東武百貨店では外商扱い・・・しかし、一般的には食料品は外商除外品のはずなのだが、なんと今回は外商の優待10%オフが利用できたらしい・・・さすが、高級シャンパン・・・。そして、転んでもタダでは起きない令嬢Y子様・・・。
しかし、この時代にデパートでドンペリを買う客って、そうそういるものなんだろうか・・・。
ここまでの話を聞いて、皆一様に
ご主人様はなんで隠してたんだろうねぇ・・・とは言いながらも、特に大きく驚く事も無く「男って、まったくねぇ~」程度の話として終わっていた。
それよりも、そんなことでわざわざドンペリをデパートで買って来なくたって良かったのに・・・とんだ散財じゃないの~!と皆申し訳なさそうに口ぐちにY子様に言っていたのだが、
「いぃえ!これは私の意地だから!」
の一点張りだった・・・余程の怒髪天だったと見える・・・。
それから2時間程度・・・
宴もたけなわで盛り上がっている頃・・・
玄関のチャイムが鳴った。
私とY子様はちょうど揚げ物をしている最中で手が離せず、主人が玄関に出て、しばらくしてからリビングに戻って来た。
手には、噂のドンペリのマグナムボトルを持っていた。
先程のチャイムは、Y子様のご主人様と次男坊の2人で、わざわざ車を運転してマグナムボトルを届けてくれたようだ。我が家の門の前に車を止め、我が主人はご主人様と少々立ち話をした上で受け取ったらしい。
(Y子様のご自宅から我が家は、車で15分程度だ)
「これ、皆さんでお飲みになって下さい・・・」
と言ってお帰りになったらしい・・・
いいご主人様じゃないか・・・
しかしY子様は、
「あの家で、私を怒らせたらどうなるかちゃんと判ってるっていうことでしょ?」
と言っていたが・・・。まぁ、これは照れ隠し半分だな・・・。
Y子様は、自分が買って来たボトルと共に、マグナムボトルも開けて皆で飲もう!と提案したのだが、それに関しては私が拒んだ。
せっかくご主人様と次男坊がわざわざ持ってきて下さったとはいえ、既に事情を聴いてしまっているのだから、おいそれと赤の他人の私達が飲んで良いワケじゃない・・・イヤ、飲めない!
荷物になって申し訳無いし、せっかくのお心遣いを無にしてしまうのも心苦しいが、やはりここはY子様に持ち帰って貰って、その後どうするかはご夫婦で決着を付けてもらう他、無いだろう。
ということで、残念ながら今回は固辞することとした。
勿論、その場に居合わせたメンバー達も全員同意見だった。
しかし、多分この後生涯お目に掛かることが無いかも知れないドンペリのマグナムボトル・・・
すぐさま、撮影会が始まったことは言うまでも無い。
その1枚が、冒頭の写真である。
でも、2本並べてみてちょっと不安に思ったことなのだが・・・
普通サイズは2002年モノ・・・デパートのワインセラーでちゃんと温度&光度管理がなされて保管されていた品。
マグナムボトルは1982年モノ・・・年数は古くたって、保存状態が万全であれば何ら問題は無い(場合によっては炭酸の泡の出方が少なくなるかも知れないとのことだが、でも品質には問題無し)
しかし、こちらは開かずのクローゼットに20年近く寝かされていたモノ・・・光度管理は万全だとしても温度管理にはだいぶ不安がある・・・このところ夏は猛暑だしね・・・。
良く画像を見て頂くと判るのだが、普通サイズは透明感があるのに対して、マグナムの方はまるで赤ワインのような色に変色している・・・ドンペリってピンクはあっても赤は無かったよな・・・?
そこで、メンバー全員からY子様へのお願い・・・
「飲んだら、味がどうだったのか絶対に教えて!!」
ワインやシャンパンに詳しい毒舌通訳家T嬢の意見としては・・・既に酢に近くなっているのではないか・・・とのこと・・・体験レポが待たれる・・・。
さて、早速普通サイズのドンペリを開けてみた・・・
多くの人数がいたので、一人当たりの量は少なかったようだが、皆、この高級シャンパンを堪能したようだ。
私は元来シャンパンやスパークリングワインというモノが苦手で、結婚式の披露宴での乾杯グラスでさえも、飲み干すことは無かった・・・その上、昨年春からお酒を一滴も飲んでいない。
シャンパン苦手ということもあってか、バブリ期の恩恵を存分に受けていたとはいえ、ドンペリを口にしたことはまだ無かった私・・・この機会にちょっとだけ味見をしてみよう・・・
ということで、小さじ1杯・・・つまり5cc程度試してみた・・・
久々のアルコールのせいなのだろうが・・・
強くて苦い酒・・・という印象しか受けなかった・・・
もう、お酒を受け付けない身体になってしまったのかも知れない・・・。
(しめしめ・・・いいことだ・・・)
主人をはじめ、殆どの酒飲みはこのドンペリ2002年モノを頂いて・・やはりドンペリは全シャンパン及びスパーグリングワインの王様だ!という意見で一致していた・・・。Y子様の「意地」の恩恵に浴したワケだな・・・。
さて、夜11時30分を過ぎ・・・楽しかった宴会もお開き・・・
皆、三々五々に帰路についた。
身軽な往路とは違い、ずっしり重いマグナムボトルを提げ、Y子様は帰宅していった。
いずれ近いうちに、そのマグナムボトルを自宅でご主人様と一緒に飲むのだろう・・・(しかし、2人じゃ飲み切れないよな・・・)
体験レポが楽しみだ・・・
と、感じいっていたその翌日・・・
Y子様から宴会の御礼かたがたメールが入った。
「私の”聞くも涙・・・”な話、後日談がまだまだ出来そうよ
何故か次男坊がドンペリを飲まなかったことにキレて、終いには『死ね』だってさ・・・
君には、ち~っとも関係無い話だろうに・・・と言っても、せっかく持って行ってあげたのに!的な言い分・・・ホントにウチの男達って、ワケわかんな~い・・・」
そんなことでキレられても・・・
令嬢Y子様・・・新年早々の受難は、まだまだ決着を見ない・・・