ホームズの推理小説(昔はそう言った)は私にとってこの種の小説の読み初めだったように思う。小学校の五、六年生の頃であったような気がする。それより前がモーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンものであった。

 保篠龍緒のルパン全集、黒い表紙であったと記憶するが、一冊五センぐらいで夜店の筵に並べられていた。

 アーサー・コナン・ドイルも私にとっても懐かしい名前で、「バスカヴィル家の犬、緋色の研究、四人の署名、シャーロック・ホームズの冒険、回想のシャーロック・ホームズの復活などの彼のものはあらかた読んでいた。

 「最後の挨拶」は初めて読んだ。が、どうも昔ほどの感銘が遺らないのはどうしたものか。こちらのせいか、彼がいささかくたびれていたものか。

 意表をついて、アレツと思わせることは変わりがないが。

 推理小説をも少し読んでみたい気が起きてきたことは収穫かもしれない。