智頭急行が改良二十周年を迎えるという新聞の記事を見た。
私は大蔵省の主計局にいて国鉄の財政再建問題については深くかかわっていた。国鉄財政再建の一つの方法としてどうでも採算が合わずまた将来も軌道としてこれを運営することについて特に経済的に負担の大きいものについてはこれを整理することとした。国鉄を廃止した場合における代替交通手段についても十分考えなければならないが廃止を検討する線はAB線として全国的にこれを検討することになった。で、その一つとして智頭線も取り上げられたのであるが、智頭線は遥か昔、昭和四十一年から建設を開始した路線であり、路盤はすでにほぼ完成しており、あとは列車を運行するまでの土木工事も九十八%まで出来上がっているという状態だったので、これはぜひ完成させるという方向で検討すべきだと私も主張したのである。当時の鳥取県知事はその方向に対して必ずしも賛成ではなかったが私は国鉄当局の意向も汲んで是非これは軌道として存続すべきであるとしたのである。
はたしてこの智頭線が完成し列車が運行するようになってから鳥取と大阪の間の時間的な距離は著しく短縮されることになり、鳥取大阪の列車移動時間は四時間から二時間半に短縮されることになり、京都倉吉間にも特急が運行されるようになって現在も七往復しているのである。二十年間で延べ約二一四〇万人が利用。一九九五年一月の阪神淡路大震災の影響を受けたが、その後は順調に利用を伸ばし、近年は年間一〇〇万人強の利用客で推移しているという風に聞いているのであって、私は当時の判断が間違っていなかったと感じ、うれしく思っている。